第87話 第2試合、その対戦カードは?
第一試合が終わって第二試合に誰が出場するか決めないといけない。
だけど、オレたちはそれどころじゃなかった。
オリヴィアと莉菜なら確実に勝つ。
そう思って送り出した結果がこれだ。
控え室の空気はかなり重いし、暗い。
「姫島、オリヴィア、負けはしたが、良いバトルだった。今、負けて悔しいなら次は必ず勝つと自分に誓え。それとこれから戦う仲間を精一杯応援しろ」
「最善を尽くした結果でしょ?もっと堂々として」
「「……」」
莉菜とオリヴィアはそのまま琴音先輩と一緒に控え室から出て行った。
二人のことは琴音先輩に任せるしかないか。
正直、なんて声をかけたらいいのかわからない。
気づいたらさっきまでの暗い雰囲気はどこかへ吹き飛んでいた。
今、この場にいるオレたちは想いは同じ。
次の試合は絶対に勝つ。
「第二試合、どっちが出場する?」
「私が……」
「オレがいく!ごめん海夕、オレにいかせて」
「蓮……」
リベリオンは第一試合に勝った勢いで第二試合も絶対に勝ちにくる。
第二試合までリベリオンに負けるとギルドバトルの勝利に王手をかけられる。
「たぶん、次の第二試合にメリダさんが出る。オレにいかせて」
「一度バトルしたことあるんだったな?勝てるのか?」
薫先輩の疑問は尤もだ。
あの時は手も足も出なかった。
だけど、今は違う。
「はい。メリダさんも強くなってると思うけど、オレはもっと強くなったから」
「……わかった。そこまで言うなら任せる。勝ってね、蓮」
「ありがとう」
第二試合の出場者をオレで登録する。
その後、控え室を出て、入場ゲートへ向かった。
合図があるまでここで待機。
◆◇◆◇
リベリオンの控え室は、鬼姫とは対極で明るい様子だった。
「思ってたよりギリギリだったけど、勝ちは勝ち。よく頑張ったウィリアム、シャーロット」
「はは、最後、ホントに負けたかと思ったよ。強いよ」
「うん、タッグバトルじゃなければ、負けてたかも」
この第一試合はかなり前からウィリアムとシャーロットのコンビで勝ちにいく。
リベリオンではそう決めていた。
そのため、タッグバトルの練習をし、連携確認も行なっていた。
それがギリギリまで追い詰められた。
このバトルを通して、リベリオン全員が鬼姫に対する評価を改めた。
「それで次は誰が出る?」
メリダがギルマスであるロザリアに質問する。
ロザリアは少しだけ考え込む素振りを見せた。
鬼姫の次の選出が誰かを予想するため。
「蓮はまだ出てこないと思うし、郁斗か海夕のどちらか……」
「蓮が出てこないなら、私はパス」
ロザリアの選出予想は郁斗と海夕のどちらか。
それを聞いたメリダは早々に第二試合に出場する意欲を無くす。
「メリダは蓮にしか興味なし。だから、郁斗ならルーカス。海夕ならユリアを出したい」
ロザリアのこの言葉にメリダをはじめとしたメンバーは驚きを隠せない。
ロザリアは第一試合が始まる前、メリダかルーカスじゃないと勝てない相手が鬼姫に一人だけいる。
そう告げていた。
「ロザリアの言う俺かメリダじゃないと勝てない相手って蓮じゃないのか?俺はそう思っていたが……」
ルーカスの発言にメリダをはじめロザリア以外のメンバーが首を縦に振る。
「確かに蓮も強いよ。でも、実力が未知数すぎる。ブルーは正直、敵じゃないけど、リーフィアとラグニア。特にリーフィアの解放スキル次第じゃ……」
「一応、蓮のエースはブルー……」
ロザリアの言葉に気持ちばかりの反論をするメリダ。
だが、メリダも同じことを思っていた。
一般種のモンスターには成長限界がある。
しかも、それがCランクでぶち当たる壁。
フランスでの模擬戦で蓮がブルーを出さなかった。
その時点でメリダは察していた。
ブルーはエースと呼ばれているけど、一番強いモンスターではないと。
「だから第二試合に蓮は出てこない。この局面なら海夕の可能性が高いか。うん、第二試合はユリアでいこう」
こうして両ギルドともに第二試合の選出が終わった。
その情報は瞬く間に実況のステラの元まで届く。
「おおっと!ここで第二試合の対戦カードが決定」
スタジアムの電光掲示板に対戦カードが表示される。
鬼姫は蓮、リベリオンはユリアと。
「鬼姫からはギルドマスター、鬼灯蓮!第二試合にしていきなりギルドマスターの登場だあー!そしてリベリオンからはユリア・ファン・デン・ベルク!第一試合に引き続き、激闘を予感させる対戦カードです」
おおおおーーーー!
第2試合でギルマスかよ!?
セオリーガン無視かよ!?
今回の特殊すぎるギルドバトルでセオリーもクソも無いだろ!
激アツ展開来たー!
遂に世界最強に世界最強と言われたスライムの出番か!
予想を大きく裏切った蓮の登場に観客は大いに湧く。
「第二試合の対戦カードをご覧になって新垣さんはどうですか?」
「そうね。個人的にはまた予想が外れたわね。郁斗くんか海夕さんだと思ったのに。残念……」
輝夜は実況席で心の底から残念そうな素振りを見せる。
右手を頬に当てて、ため息までつく。
「ギルドマスターの早い登場。やはり、鬼姫は第一試合を落としていますから確実に勝ちに来ているということでしょうか?」
「わかんないわよ?もしかしたらクジ引きとかで順番決めてるかもしれないでしょ?」
輝夜のこのコメントにスタジアムにいる観客は爆笑する。
「ええと、さすがにそれは無いかと…」
「ええ、そうかしら?有名処であるじゃない、ディアボロス」
「世界最強を基準に考えないで下さい!」
「ぶーぶー」
普段、解説に12神が呼ばれることはない。
観客の輝夜へのイメージがどんどん覆されていく。
想像以上に子供っぽい一面は観客に親近感を与えた。
「まあいいわ。真面目な話、さっきステラが言ってたように勝ちに来たってとこかしらね。私としては、蓮くんとメリダさんの再戦を見たかったけど」
「おお!つまり、鬼灯さんは自分なら勝てると判断したと!?」
「私はこの選出から少なくともそう捉えたわ。実際は全然違うかもだけどね」
輝夜のコメントに蓮の評価はどんどん上昇する。
ユリアがDトーナメントで優勝経験のあるプレイヤーと知っている観客の期待値は特に高くなった。




