第80話 ギルドバトル
「リーフィアって解放スキル使えないの?」
「うん、まだ使えない」
「そっか……」
バトルを終えたメリダさんは何かを考え込んでいる。
正直、解放スキルを使えたとしても勝てたかどうか。
リーフィアの『闇閃撃』で与えたダメージ量が少なすぎる。
デバフ・状態異常無効のガイア相手だと『魂葬・断』が使えない。
リーフィアは根本的に相性が悪すぎた。
ただ、ブルーやラグニアなら勝てたってわけでもない。
ブルーなら、いいバトルになったと思うけど……
ブレスは『ディバインシールド』で防げる。
ただ、その後の追撃を防ぐことはできない。
着地さえできれば、動ける。
でも、それをさせない立ち回りをされると勝てない。
「うん、悪くないね。リーフィアって闇属性だよね?最初の攻撃がそんな感じした」
「うん」
「なら、先手必勝の方がいい。相性不利なら常に自分のペースで戦う。相手のペースでは戦わないのが鉄則」
確かに、その通りかも。
初手で完全にペースを持っていかれた。
でも、最初から距離を詰めて戦ってもキツい気がする。
「ガイアって実は近接戦が苦手。だから、遠距離攻撃とか、近づかせない攻撃手段を持ってる」
「え、でも、最後……」
「あれはトドメの一撃だったから。情報は簡単に与えちゃダメ」
周りを見渡すと、大勢の人集りができていた。
きっと、みんなメリダさんとオレのバトルを見ていた。
ほとんどの人が拍子抜けって感じで立ち去っている。
でも、中にはメモをしてそうな素振りの人もいる。
ちょっと周りの声に耳を傾ける。
「さすがリベリオンのサブマス」
「鬼姫のギルマスの情報隠蔽も上手い」
「ああ、解放スキルを使わず、早々にバトルを終わらせた」
なんかすごく過大評価されているような声が聞こえてきた。
その人たちはオレと一瞬だけ目があって、逃げ去るようにどこかへ消えていった。
「はいはい、おつかれ。ここ目立つから移動」
エルシーさんがオレとメリダさんの腕を引っ張って移動する。
人集りを強引に抜けて、路地裏に入っていく。
狭くて複雑な経路で道を進み、大通りに出る。
そこに、いつの間にか消えていた輝夜さんがいた。
しかも、サングラスをかけ帽子を被っている。
輝夜さんと合流した後、その近くにあった個室のカフェに入った。
「ここ私が持つから好きなもの頼んで」
エルシーさんにそう言われたけど、フランスのカフェメニューが理解できない。
ARKで日本語に訳されているけど、理解できるかは別問題。
とりあえず、同じ日本人の輝夜さんと同じやつを頼んだ。
出てきたのは、チーズケーキとコーヒーだった。
「二人とも不完全燃焼でしょ。予想以上に情報目的の野次馬が集まったから」
いや、全然。そんなことないですよ。
そう思ってるの輝夜さんだけです。
てか、輝夜さんがいたから人集りができたんじゃ。
「そこで私からの提案。鬼姫とリベリオンでギルドバトルをしてみない?」
輝夜さんからギルドバトルを提案された。
「どこかの誰かさんのせいで鬼姫バラバラって聞いたけど、できるの?」
「うっ……」
エルシーさんの鋭いツッコミに輝夜さんは言葉に詰まる。
「私はギルドバトルに反対です。今やっても私たちが勝つ。勝てるバトルはしません」
今、サラッとメリダさんがとんでもないこと言ったような。
鬼姫じゃリベリオンに勝てないって。
正直、メリダさんに勝てる気はしないけど、他のメンバーはわからないのに。
「うちにはロザリアがいる。これで1勝。私で2勝。通例の5対5ならこれで勝利にリーチ」
……確かに。
Bランクのロザリアさんがいた!
無理!
絶対に勝てない。
だって、まだオレたち全員Dランクになったばかりだよ。
「なら、年明けは?その頃にはみんなCランクになってる」
えっと、エルシーさん。
なんで年明けにはCランクになってると断言されてるんですかね。
普通なら早くても、Cランクに到達するのってゲーム初めて1年。
それを年明けって。
メリダさんは強いし、余裕かもしれないけど、オレには無理……
「……それなら、私が勝つって断言できないか。でも、ロザリアは?鬼姫には相手できる人いないよ」
「そこはギルマスとして蓮がどうにかする」
え、最後の最後でオレに全投げするの!?
ギルドに新しい人を入れて、人数を増やせだったら、知り合いに頼むよ。
でも、そういうレベルの話じゃないじゃん。
ロザリアさんとバトルできる実力者を入れろでしょ?
そんな簡単に見つかるわけないじゃん!
「それなら、蓮くんは先輩二人を頼ったら?入ってくれるかもよ」
輝夜さんの言う先輩はきっと琴音先輩と薫先輩のことかな。
「そうしてみます」
「それじゃあ、会場は白黒スタジアムでどう?あそこですれば、学園がギルドバトルの宣伝してくれるわよ」
「私はそれで構いません」
こうして、鬼姫とリベリオンのギルドバトルを年明けにやることになった。
ホテルに戻ったオレは早速、琴音先輩に電話した。
「もしもし〜久しぶりだね!元気してる?マーケットはどうだった?収穫はあったかな?」
すごい質問攻め。
とりあえず一つずつ答えていった。
琴音先輩からの質問攻めも終わって本題に入る。
「えっとですね、琴音先輩に相談したいことがあって……」
「ん?」
輝夜さん、エルシーさんの名前は一応、伏せて話した。
偶然、フランスのマーケットでリベリオンのメリダさんと会った。
そこでなんやかんやあって、リベリオンと鬼姫で年明けにギルドバトルをすることになった。
今の鬼姫には、ロザリアさんとバトルできる人がいない。
だから、琴音先輩に入ってもらえないかな。
こんな感じで話した。
「なるほどね。たぶんというか、ほぼ絶対にロザリアの相手が務まるプレイヤーは私か薫くんくらいだね」
それ、自分で断言しちゃうんだ。
すごい自信。
ほんとのことだと思うけど。
「それにしてもロザリアの相手か〜。なら、薫くんがいいと思うよ。もし、ダメだったら私が代わりに出場するし、メンバー問題はこれで解決かな?」
「薫先輩ですか?ロザリアさんって琴音先輩と同世代だし、前に一度バトルしたことあるから琴音先輩が適任かなと思ったんですけど……」
「うーん、正直私は手の内を知られてるからね。ロザリアに勝てるかって言われると微妙かな」
あ、そっか。
琴音先輩に比べて、薫先輩はロザリアさんと直接バトルしたことない。
だから、情報もそこまで持ってないはず。
そういう意味だと、薫先輩の方が勝てる可能性は高いのか。




