第106話 必殺の型
ウィリアムくんたちが強いから大した苦戦はここまでしていない。
オレ一人で挑戦していたらここまで順調に進めない。
ただ、それでも一回のバトルにかなり時間がかかる。
タロスはチャージカウンターを使わずに戦ってる。
ブルーはそこまで火力が出ない。
ワタツミの攻撃が当たれば、大ダメージだけど、ここのモンスターは動きが身軽で速い。
そもそも、攻撃を当てるのが難しい。
「はあ、動きが速くて捉えるのに一苦労だな。ここのモンスターが紙装甲じゃなかったら発狂するよ」
「うん」
ウィリアムくんとメリダさんが笑っている。
ユリアさんも、二人の会話を微笑ましく見てる。
正直、この状況でも笑えるってすごい。
ウィリアムくんのいう通り、唯一の救いは、防御面が脆い。
攻撃を当てさえすれば、なんとかなる。
まあ、それが大変なんだけど。
もし、オレ一人だったらどうしたかな。
ブルーが『電光迅雷』を使えば、速さで対抗できる。
でも、一時凌ぎでしかない。
常時発動できるとかなら、戦術に組み込めるけど。
あとは、タロスみたいに防御を固めてカウンターを狙う。
ここまでの 防御が脆い相手ならそれでもいい。
だけど、防御面でもっと硬いモンスターが出てきたら、厳しいな。
やっぱりブルーになにかが足りてない。
リーフィアには、闇属性の攻撃に『天剣解放』がある。
ラグニアにも、『コピー』をはじめ、多彩な武器がある。
「蓮、なにか悩み事?相談乗るよ」
「え?ああ、ありがとう。今のブルーになにかが足りない気がして。ただ、それがわからなくて」
一人で考え込んでいたら、ユリアさんが声をかけてくれた。
アタから見ると、悩み事があるってわかりやすく顔に出てたのかな。
「うーん、ブルーは多芸だと思うけどな。いろんな戦い方ができる」
「僕は必殺の型が存在しないって思うな。タロスはシンプルで、『チャージカウンター』からの『リリースカウンター』をドン!」
「これで勝てなければ、仕方ない。蓮のブルーには、そう思える武器が存在しない。これがあるのとないのとでは全然違う。本戦までにそこを突き詰めるといい」
「なるほど。必殺の型か」
ユリアさん、ウィリアムくん、メリダさんと率直な意見をくれた。
今、ウィリアムくんが言った必殺の型はギルドバトルで実際にやってた。
でも、あの時はそれでエルナとカーラを倒しきれなかった。
その後の粘りから防がれた時用の戦術も用意していた。
ウィリアムくんは徹底して、計算し尽くして戦うタイプだと思う。
でも、ブルーの必殺の型ってなんだろう。
リーフィアとラグニアなら、なんとなく漠然としてるけど、イメージできる。
ブルーは、使えるスキルが多いこともあって弄んでいるって感じがあるかも。
現状、ブルーの最強スキルである『天御雷』。
これを軸に組み立てるのがいいかな。
それなら、『雷霆』の追加効果も組み入れるといい感じになりそう。
「本戦までまだ時間はあるし、ゆっくり考えればいいよ」
「うん、そうするよ」
それからはウィリアムくんたちと一緒に戦いながらいろいろと模索した。
魔法主体のルビーキャット、エメラルドキャット、サファイアキャットとのバトルでは、『電光迅雷』が大活躍。
魔法で弾幕を張るように撃つから、なかなか接近できなかった。
唯一、『電光迅雷』を使ったブルーだけが接近できた。
だけど、それを起点に崩せるほど甘くなかった。
そこで残り一枠だけ余っていた召喚枠を使って、ユリアさんがセーレを召喚した。
一人だけ2体のモンスターに指示を出す必要があるけど、この状況ではセーレの力が必要だった。
『妖気解放』と『神足通』を使ったセーレは常に相手の懐に入り続けた。
隙さえあれば、攻撃もする。
それによって、ブルーの『電光迅雷』やユニの『ジェット・ブレイクスルー』による高速突きが刺さった。
結局、今日は第一エリア『白猫のお遊戯場』のエリアボスの所まで辿り着けなかった。
エリアボスのところまで辿り着くのにそれから二日かかった。
三日目にエリアボスへ挑戦した。
第一エリアのエリアボスはビューティキャットという可愛らしい子猫だ。
今まで遭遇したモンスターよりもとにく速いのが特徴。
結局、ブルーの『フレイムフォース』をはじめとした全体攻撃。
もしくは、ワタツミの『タイダルウェーブ』などの範囲攻撃でしかダメージを与えられなかった。
時間こそかかったが、コツコツとダメージを与えて倒した。
それもこれも高機動力を遺憾なく発揮。
光と闇を除くあらゆる属性の魔法を使ってきたから手数で負けた。
タロスじゃなければ、確実に防ぎきれなかった。
それに加えてブルーとユニの回復魔法。
いろいろと噛み合って、なんとか倒せた。
それからも授業が終わってから毎日『白猫』に挑戦した。
このエリアのモンスターは魔法が使えない。
その代わり、高耐久でとにかく持久戦になることが多かった。
ただ、積極的に近接戦を仕掛けてくる分、タロスの独壇場だった。
回復はブルーとユニで基本的に間に合った。
ワタツミが空中から魔法を絨毯爆撃のように投下する。
それだけで反撃する術がないエリアボスを倒せた。
ちなみにブルーはちゃっかりワタツミの上に乗せてもらって、そこから攻撃していた。
正直、第一エリアのモンスターより戦いやすかった。
本戦の前日には第二エリア『白猫の暴れん坊場』のエリアボスと戦った。
エリアボスはアンルーリーキャット。
日本語だと手に負えない猫って意味らしい。
きっとエリア名の通り、暴れん坊すぎて手に負えないんだろうな。
実際にかなり荒れたバトルになった。
魔法が使えなかったのが唯一の救いと言っても過言じゃない。
まさかタロスの防御力を強制的に半減されられるとは思わなかったよ。
そのせいで回復量をダメージが上回り、急遽作戦の変更を余儀なくされた。
変更後の作戦は思ってたよりもシンプルにまとまった。
オレが空いている召喚枠を使って、リーフィアを召喚する。
1日目にユリアさんがセーレを召喚したのと同じことをする。
それで、タロスに加えてリーフィアが地上で戦う。
2体がかりならなんとかなるでしょ?の精神。
作戦を考える時間もそこまで無かったし、こればかりは仕方ない。
ただ、それでも押されていてそれを見兼ねたのかブルーがプル!っとワタツミから飛び降りて地上での近接戦に加わった。
あれを見た時は絶対に邪魔になる。
そう思ったけど、意外とブルーの撹乱が効いていた。
結果的にリーフィアとタロスが持ち直すことができた。
ただ、 果たしてブルーはあれを狙ってやったのかどうか。
それだけが気になる。
ついうっかり、落ちた可能性もブルーならありそう。
バトルを終えた後、ウィリアムくんたちのブルーに対する評価がかなり上がってた気がする。
これはきっとオレの気の所為だと思う。




