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異世界には「アレ」がない!?  作者: 和口
第1章 ベスティア王国編
31/37

【第31話】異世界には訓練が無い!?

 炉から溢れる熱気に顔をしかめる。

 俺は額に流れる汗を拭い、作業を再開する。

 ハンマーを振り上げ、鉄を打つ度に火花が散り、作業場に甲高い音が響き渡る。


 (最初の頃に比べるとハンマーも大分振りやすくなってきたな……)


 鍛冶を始めて間もない頃は、ハンマーを一振りするだけでもかなりの体力を消費したものだ。


 (技術が身について来たのか……? それともエミリーの訓練のおかげか……)


 形が整った鉄を常温の水に入れ、また炉に入れる。

 それを何度か繰り返した後に、氷魔法を使い急速に冷やしていく。

 俺はかなり魔力量が少ない方で、最初の頃は氷魔法を少し使うだけで魔力切れを起こしていたが、最近はそういう事はなくなっていた。


「ふぅ……まあこんなもんか」


 細部を整え、仕上げに加工魔法で研磨する。

 そうして出来た物を作業場の一角に立て掛けたところで、作業場のドアがノックされた。


「ソウマ〜……ってあら? 作業中だったかしら?」


 作業場に入って来たのはエミリーだった。


「いや、丁度今終わった所だけど……何か用だったか?」


「ええ、今日の訓練の事だけどね、いつもの空き地じゃなくてちょっと遠出しようと思ってね」


「遠出……? ヨートーにはもう言ったのか?」


「ええ、最初は嫌がってたけど渋々OKしてくれたわ♪ 外に馬車を停めてあるから早めに来てね〜♪」


 エミリーがニヤリと笑う。

 多分ヨートーは説得(物理)されたんだろう。


「はぁ……じゃあ準備するからちょっと待っててくれ……」


「あっ、そうだ。念のためポーションを持って行って。死にはしないと思うけど一応……」


 死ぬ……?

 不穏な一言が聞こえた気がしたが……

 そういえばエミリーもいつもの格好ではなく、ゴツイ鎧を着込んだ鬼神仕様になっている上に、背中にはデカイ斧やハンマーを背負っている。


 (何か……嫌な予感しかしないな……)


 

――――――――――――――――――――――



「ソウマ! 着いたぞ! 起きるのじゃ!」


「ん〜……あと5時間……」


 ヨートーが体を揺さぶり、起こしてくる。

 どうやら馬車の中で寝てしまっていたようだ。

 エミリーが運転すると言うことで不安だったが、気持ちよく眠れるくらいには快適だったらしい。


「ダメよヨートーちゃん。こういうのは大体お姫様のキスで目覚め……」

「で? 訓練はここでやるのか?」


 不思議と急に眠気が覚めたため、すぐに体を起こしエミリーと距離を取る。

 危うく今まで死守して来たファーストキスを奪われるところだった。


「まあ訓練はここでやるんだけど……もう少し寝ててもいいわよ? ちょっと下準備に時間がかかるから」


「準備? 何なら手伝うぞ? ヨートーが」


「なっ……何故ワシなのじゃ! そういうソウマが行けばいいのじゃ!」


 狭い馬車の中でヨートーが襲ってくる。

……字面だけ見ると凄く意味深に感じてしまうのは俺が健全な高校生だからか?


「んー気持ちはありがたいけど……2人は馬車で待ってて。すぐ終わるから♪」


 エミリーはそう言って馬車から降りていった。


「下準備か……どれだけ時間が掛かるか分からないしもう一回寝ようかな?」


「えぇ……ソウマに寝られるとワシが退屈になるのじゃが……」


――ァァ……


「ん? なんか言ったか?」


「え? 何のことじゃ?」


――ァァァァ……


「外からか……? 何か聞こえないか?」


「……特に何も聞こえ」


「ガアァァァァァァァァァァ!?」

「ギエエェェェェェェ!?」


 外から聞こえてきたのは、恐らく人間以外の何かの鳴き声だった。

 そして鳴き声の合間にかすかに何かがちぎれる音や潰れる音が聞こえる。


「……なあ、そういえばエミリーって何故かゴツイ斧を持ってたよな……」


「ああ……そういえば異様に大きいハンマーも持っておったのう……」


 先程で感じた嫌な予感が、見事に的中してしまったようだ。

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