【第30話】異世界には秘密がない!?
「くっ……はぁ……」
魔力を使い切ってしまったのか、強い倦怠感に襲われる。
「まだ……あと少し……」
バッグに入れていたマジックポーションを飲み干し、空き瓶を地面に放り投げる。
作業に取り掛かろうとしたが、激しい不快感と共に胃の内容物が喉の奥からせり上がってきたが、寸での所で、夕食を地面にぶちまける事態は防げた。
吐き気と激しい頭痛に耐えながら、再び作業に取り掛かる。
地面には白い粉で描いた魔法陣と大量の空き瓶。
「こんなに飲んでたら……"普通"なら死んでるでしょうね……」
"私"は、誰に話しかけるわけでもなく、月を見上げながら1人で呟いた。
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「いてて……」
朝からエミリーに捕まり、訓練をしていた俺は、大衆浴場で汗を流し、ギルドに戻ってきた。
(疲れた……明日は筋肉痛だな……)
そんな事を思いながら、作業場で新しい剣でも作ろうかと準備すると、不意にドアの方からノック音が聞こえた。
どうぞ、と言うと音の主は作業場に入ってきた。
丁寧にノックをしたことから、お客さんかと思ったが、そこにいたのはメルだった。
「ソウマさん。ちょっと聞きたいことがあるんですが……今忙しいですか?」
「いや、暇だ。たった今暇になった」
つい先程出した鍛冶の道具を迅速に片付け、メルの方に向き直る。
鍛冶と癒しを天秤にかけた結果の行動だった。
「で? 何か俺に用だったか?」
「はい……実はルナさんの事なんですが……最近夜にいないですよね? それでソウマさんなら何か知っているんじゃないかと思って……」
確かに、最近ルナさんは深夜に不在のことが多い。
前までは酒場にいたり、ギルドの仕事を手伝っていたりしていたが最近は全く見かけない。
「うーん……俺は特に何も知らないな……レナなら何か知ってるんじゃないか?」
「そうですか……じゃあちょっとレナさんにも聞いてきますね……」
メルはそう言うと足早にレナのいるカウンターに戻っていった。
(ルナさんか……飲み歩きでもしてんのかな……)
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「ソウマ……何だか変じゃなかったかの?」
酒場で食事を摂っていると、ヨートーが急にそんな事を聞いてきた。
「変って……もしかしてメルの事か?」
俺の問いにヨートーは軽く頷き、話を続ける。
「詳しくは分からんが……いつもと違って元気がなかったと言うか……後ろめたさの様な……」
「確かに元気は無かったけど……そこまで気にすることか?」
「うーむ……でもいつも元気な者がああだと心配になるじゃろ?」
「確かに……でもああいうのは思春期にはよくあることじゃないか? どうせお母さんがウザイとかお父さんがクサイとか……大した事じゃないだろ」
自分は親に対してそういう感情を抱く機会が無かったが、特に年頃の女子にはよくある事だろう。
「ううむ……ワシはソウマがセクハラでもしたのかと思ったが……思春期のせいかの?」
「おおい待て! サラッと俺を性犯罪者にするな!」
「いつも『メル可愛い』とか『メル天使』とかつぶやいておるではないか! ネタは上がっておるのだぞ!」
(声に出てたのか……恥ずかしい……)
「ぐぐ……大体ここのギルドに癒しが足りないのが問題なんだよ! ドSにオカマに妖刀に! キワモノ揃い…………ってどうした?」
途中まで俺の話を普通に聞いていたヨートーが徐々に青ざめていく。
ふとヨートーの右手を見ると、震える指で何かを指さしていた。
「あらぁ♪ 誰がキワモノかしらぁ?」
俺の視界はそこでブラックアウトした。




