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異世界には「アレ」がない!?  作者: 和口
第1章 ベスティア王国編
30/37

【第30話】異世界には秘密がない!?

「くっ……はぁ……」


 魔力を使い切ってしまったのか、強い倦怠感に襲われる。


「まだ……あと少し……」


 バッグに入れていたマジックポーションを飲み干し、空き瓶を地面に放り投げる。


 作業に取り掛かろうとしたが、激しい不快感と共に胃の内容物が喉の奥からせり上がってきたが、寸での所で、夕食を地面にぶちまける事態は防げた。


 吐き気と激しい頭痛に耐えながら、再び作業に取り掛かる。


 地面には白い粉で描いた魔法陣と大量の空き瓶。

 

「こんなに飲んでたら……"普通"なら死んでるでしょうね……」


 "私"は、誰に話しかけるわけでもなく、月を見上げながら1人で呟いた。



――――――――――――――――――――――



「いてて……」


 朝からエミリーに捕まり、訓練をしていた俺は、大衆浴場で汗を流し、ギルドに戻ってきた。


 (疲れた……明日は筋肉痛だな……)


 そんな事を思いながら、作業場で新しい剣でも作ろうかと準備すると、不意にドアの方からノック音が聞こえた。

 どうぞ、と言うと音の主は作業場に入ってきた。

 丁寧にノックをしたことから、お客さんかと思ったが、そこにいたのはメルだった。


「ソウマさん。ちょっと聞きたいことがあるんですが……今忙しいですか?」


「いや、暇だ。たった今暇になった」


 つい先程出した鍛冶の道具を迅速に片付け、メルの方に向き直る。

 鍛冶と癒しを天秤にかけた結果の行動だった。


「で? 何か俺に用だったか?」


「はい……実はルナさんの事なんですが……最近夜にいないですよね? それでソウマさんなら何か知っているんじゃないかと思って……」


 確かに、最近ルナさんは深夜に不在のことが多い。

 前までは酒場にいたり、ギルドの仕事を手伝っていたりしていたが最近は全く見かけない。


「うーん……俺は特に何も知らないな……レナなら何か知ってるんじゃないか?」


「そうですか……じゃあちょっとレナさんにも聞いてきますね……」


 メルはそう言うと足早にレナのいるカウンターに戻っていった。


 (ルナさんか……飲み歩きでもしてんのかな……)



――――――――――――――――――――――



「ソウマ……何だか変じゃなかったかの?」


 酒場で食事を摂っていると、ヨートーが急にそんな事を聞いてきた。


「変って……もしかしてメルの事か?」


 俺の問いにヨートーは軽く頷き、話を続ける。


「詳しくは分からんが……いつもと違って元気がなかったと言うか……後ろめたさの様な……」


「確かに元気は無かったけど……そこまで気にすることか?」


「うーむ……でもいつも元気な者がああだと心配になるじゃろ?」


「確かに……でもああいうのは思春期にはよくあることじゃないか? どうせお母さんがウザイとかお父さんがクサイとか……大した事じゃないだろ」


 自分は親に対してそういう感情を抱く機会が無かったが、特に年頃の女子にはよくある事だろう。


「ううむ……ワシはソウマがセクハラでもしたのかと思ったが……思春期のせいかの?」


「おおい待て! サラッと俺を性犯罪者にするな!」


「いつも『メル可愛い』とか『メル天使』とかつぶやいておるではないか! ネタは上がっておるのだぞ!」


 (声に出てたのか……恥ずかしい……)


「ぐぐ……大体ここのギルドに癒しが足りないのが問題なんだよ! ドSにオカマに妖刀に! キワモノ揃い…………ってどうした?」


 途中まで俺の話を普通に聞いていたヨートーが徐々に青ざめていく。

 ふとヨートーの右手を見ると、震える指で何かを指さしていた。


「あらぁ♪ 誰がキワモノかしらぁ?」




 俺の視界はそこでブラックアウトした。

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