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第八話 攻略本はあてにならない

「あー、もう疲れた……」


「なんじゃぁ?だらしがないのぉ?」


魔王子がボクシング部を制圧した後、柔道部、空手部、レスリング部を、次々と制圧していき、約一時間二十分で、しもべを38人増やした。


その間、俺はずっと魔王子の一騎当千の様を見ていたのだから、精神的にとても参ってしまった。


そして今、俺と魔王子は帰り道の途上にいる。


「時に、ゆーま」


「ん? なんだ?」


「ホワイトジャスティスの名に……覚えはないか?」


「な!?」


突然現れたその名前に、頭の中が白くなった。しかし、口止め料をもらった以上、誰もいない道の上だろうと、軽々しく話すわけにはいかない。


「あ、あぁ。それなら、最近出来た新興宗教の名前だと思う……それがどうかしたか?」


「あぁ、明日乗り込むことにした。理由は聞くな」


「な!? や、止めとけ!!」


「んぅ?どうしてじゃぁ?」


……いざ理由を聞かれると、何も言えない。だが、あそこはマジにヤバい場所だ。いくら魔王子といえども、何をされるか分からない。


「と、とにかく行かないでくれ……。俺はこれしか言えない」


「なんじゃ?何か訳ありのようじゃのぅ?何かゆーまに、都合の悪いことでもあるのか?」


違う、そうじゃない。今の俺の気持ちは……。


「お前が心配なんだ。お前に傷ついて欲しくない。隣人として、友達として……お前が傷つくのは嫌だ」


俺はまっすぐ魔王子を見て、本心を伝えた。まごう事なき俺の本心だ。


魔王子は驚いたように目を見開き、そして呟いた。


「そうか……分かった。明日行くのはやめじゃ」


「あ、あぁ。良かった」


これで一安心だ。俺も帰って明日の計画の詰めに入ろう。


「あぁ、我は今からホワイトジャスティス教団の元へ向かう。恋敵を倒しに行かなければならないからのぉ。クフッ!!」


「えっ!?」


「すまんな」


そして、魔王子は俺の首筋に手刀を叩き込んだ。だんだんと意識が遠ざかっていく……。


その時の魔王子の顔は、昨日の柔らかい笑みだった気がする。


______________________________________


「ゆ……うま!!……ゆーま……!!ゆーまぁ!!」


「ハッ!?」


「良かった!!ゆーま!!無事か!?」


横で必死に呼びかけていた勇子の声で、俺は目を覚ました。勇子の顔はいつもより白くなっていた。心配してくれたのだろうか……。


俺は、魔王子の部屋の入り口のドアにもたれかかっていた。魔王子が置いていったのだろう……。


そうだ……。あいつ、教団に乗り込むんだ……。止めに行かなければ……!!


「お、おい勇子!!俺がここに着いてどれくらい経つ!!」


俺の激しい剣幕に、勇子は少し驚いたようだが、ゆっくりと説明してくれた。


「あ、あぁ。私は誰かの足音がしたから、きっとゆーまだと思ってドアを開けたんだ。そしたらゆーまが、魔王の部屋のドアにもたれかかっていたから、必死になって起こしたんだ。……なぁ、何があったんだ」


「そ、そうか。じゃあまだそんなに時間は経ってないな。ありがとう」


俺は急いで立ち上がろうとしたが、足に力が入らず、よろめいてしまった。


「おい、ゆーま!!どこに行くんだ!!」


不安そうな勇子の顔が見える。


「心配するな勇子、大した用事じゃない。帰りになんかうまいものでも買ってきてやる。だから家で待ってろ」


「嘘だ。どうせ魔王の厄介事に巻き込まれたんだろう」


やはり俺は嘘が苦手らしい。


「……魔王子が今、危ない目に遭おうとしている。勇子にとっては敵かもしれないけど、俺にとっては友達の一人なんだ。行かなきゃいけない」


俺は勇子に正直な思いを伝えた。


勇子は、二秒ほど考える仕草をし、覚悟をしたように頷くと、凛として言い放った。


「分かった。私も行こう」


「え……」


「魔王の為じゃない。ゆーまを守る為に私は行くんだ。ゆーまが魔王を見捨てられないように、私もゆーまを見捨てることはできない」


そう言い放つ勇子に俺は、神々しささえ感じた。


あぁ……、勇者ってのはなんて頼もしいんだろう……。勇子と一緒だと、希望が湧いてくる……。前に進む為の希望が……。


「ありがとう勇子。目的地はホワイトジャスティス教団 本部だ。場所はもう調べてある」


______________________________________


俺はすぐさま自転車に乗り、後ろに勇子を乗せ、全速力で走った。


走ってる途中に、電話で平太に三百万持って、教団の本部に来いと伝えた。


計画はどうしたのかと聞かれはしたが、大丈夫とだけ言って電話を切った。


何が大丈夫かはよく分からんが……後ろには勇子がついてる。きっと大丈夫だろう。



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