続く未来の世界 - 4
礼拝堂では、変わらぬ朝が続いている。
エリシアは今日も祈っていた。
ただ、「もう大丈夫ですよ」と。
それだけを思っていた。
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礼拝堂の中庭で、イリスは空を見上げていた。
それから、少しの時が流れ、王宮は変わり始めていた。
王であったレオナルトは、その地位を剥奪された。
護衛隊は再編され、国はゆっくりと“正しい形”を取り戻していた。
イリスは、王女としての肩書きを一度、下ろした。
「必要な時に、必要な役割を果たせばいい」
それが、彼女自身の選択だった。
ノクスは、仮面を付けなくなった。
すべてを背負う影ではなく、“兄”として、そこに立つために。
「……お母様」
花畑の世界で見た、あの笑顔。
拒絶も赦しも、すべてを含んだあの別れ。
「ちゃんと、生きてるよ」
隣に、ノクスが立つ。
「当たり前だろ。母上が、命がけで繋いだんだ」
少し離れたところで、リオとレオナルト、ロイが二人を見守っている。
剣を携え、だが振るう必要のない日常。
「イリスさま!ノクスさま!」
セラが変わらぬ笑顔で2人を呼ぶと、イリスの胸の中へ飛び込む。
「おい、セラ。離れろ」
フィオが、セラをイリスから引き離す。
「今日は、みんなで、どこへお出かけしますか!」
「そうだな、どこへ行こうかな」
イリスが言った。
「もちろん、自分もイリス様に付いていきます」
遠くで見ていたリオも近寄る。
「リオさんは、相変わらず、イリス様っ子ですね〜ねっ!師匠!」
「ロイ、お前は師匠っ子だけどな」
「酷いです、師匠〜」
「よし、行こうか」
イリスは、微笑みながら前を向く。
ノクスは、空を見上げ、静かに頷く。
「……ああ」
風が吹いた。
花の香りは、しない。
けれど、確かに“続いていく世界”の匂いがした。
鍵でもなく、道具でもない。
イリスとノクスは、ただの双子として、未来へ歩き出す。
その背中を、光が静かに見送っていた。




