祈りの場所で - 4
「……そのため、礼拝堂の警備を強化いたしました」
「そうか」
王城の応接室。
昨日の礼拝堂での出来事を報告するため、イリスとリオはレオナルトの前に立っていた。
豪奢な椅子に深く腰掛けた王は、短く返事をすると足を組む。
それだけで、部屋の空気が重く沈んだ。
「それで、ヴェイルの件はそれと関係があるのか?」
「現在、関係性については調査中です」
その答えを聞いた瞬間、レオナルトの目がさらに冷えたのをイリスは感じ取った。
「いつまで調査をしているつもりだ、イリス」
ようやく父に呼ばれた名ーー
だがイリスは、父に名前を呼ばれるのが昔から好きではなかった。
名前には感情がないそれは、ただの“呼称”として発せられる。
イリスは微動だにせず、視線を下げた。
「……申し訳ございません」
「陛下、お言葉ですが――」
見かねたリオの声が割って入る。
「リオ、やめろ」
「……しかし、隊長……」
「おい」
王のその〝おい〟で空気が凍りついたのがはっきりと分かった。
レオナルトは続ける。
「いつ、話していいと許可した?」
「……っ……ですが、レオナルト陛下……」
「……リオ……随分と無駄口を叩けるようになったんだな」
リオは言葉を失い、唇を噛みしめる。
「お父様、申し訳ございません。リオの不手際は私の責任です。後ほど厳しく言っておきます」
そのイリスの言葉に、レオナルトは一瞬彼女を見つめ、興味を失ったように視線を逸らした。
「もう……下がれ」
「「はっ」」
二人は一礼し、静かに応接室を後にする。
応接室の扉を閉めた、その時だった。
「隊長!! 緊急のご報告です!」
廊下を駆けてきた保安組織の隊員は、息を切らしていた。
汗に濡れた顔が、ただならぬ事態を物語っていた。
「セラ様と……フィオ様が……行方不明になりました」
その報告にイリスの胸の奥から、嫌な予感が確信へと変わる音がした。




