記憶 - 6
遅かった。
回廊に響く複数の足音。
ためらいのない、王の兵の足取り。
(……見つかった)
ノクスとイリスを胸に抱いたまま、エリオネは息を殺す。
赤子の体温が、やけに熱く感じられた。
「エリオネ」
低く確信に満ちた声。
振り返らずとも分かる。
声の主はレオナルトだ。
「その子たちを連れて、どこへ行くつもりだ」
答えず、エリオネは一歩下がる。
その瞬間、兵が動いた。
「……っ!」
反射的に、力が溢れる。
空間が歪み、白い裂け目が生まれかける。
「無駄だ」
レオナルトの冷たい声と同時に、魔力を封じる結界が張られた。
エリオネの膝が床につく。
「もう分かっている。お前の力も、この子たちの意味も」
レオナルトの視線が、双子に向けられる。
エリオネの血の気が引く。
「やめて……!」
必死に抱きしめるが、兵の腕が伸びる。
眠っているはずのノクスが、まるで何かを感じ取ったかのように、ピクリと反応する。
(お願い……)
イリスの体が、腕から引き剥がされた。
「いやぁぁっ!!」
叫び声が、虚しく回廊に響く。
「イリス!!」
小さな泣き声。
遠ざかる、娘。
「安心しろ。王宮で育てる。大切に“使う”」
残されたノクスを、強く抱きしめる。
母の異変を感じたのか、ノクスは目を覚まし、泣き声を上げた。
その瞬間、白い光が2人を包む。
「……結界の中だぞ……出れる訳が……」
そのレオナルトの言葉と共に、2人は溶けるように消えた。
残されたのは、泣き止まないイリスだけだった。




