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王の子は世界と世界のあいだで鍵となる  作者: 浅 眠瑠
エピソード2:祈りの場所で
3/10

祈りの場所で - 1

翌朝、鐘の音が王都に静かに響いていた。


国の中心区から少し離れた森の中にある礼拝堂は、いつもと変わらない。

白い石の床、柔らかな光、祈りの声。

この場所だけは、王城の冷たさとも、街のざわめきとも無縁だった。


「イリスさま!おはようございます!」


そこは礼拝堂の中にある花が植えられている中庭。

弾むような声に、礼拝堂を訪れていたイリスは足を止める。

駆け寄ってきたのは、14歳の幼いシスター・セラだった。

金色の髪は結われることなく、背にまっすぐ流れている。

白シスター服がよく似合う。


「おはよう、セラ。走るな、転ぶぞ」

「だ、、、おっと、、、えへへ、大丈夫です!」


そう言いながらも、セラは少しふらつき、慌てて姿勢を正す。

セラといる時のイリスは少し柔らかく優しい姉のように見える。

もちろん2人は姉妹ではない。

戦いも、命令も、政治もない場所。

ここに来るとイリスはただの16歳の少女だ。

セラもイリスの事は冷酷娘とは思っておらず、姉のように慕っている。


「今日はお祈り、長いのか?」

「えっと、、、少しだけ、、、?」


セラはそう言って微笑んだ。

その笑顔の奥に、わずかな不安が滲んでいることを、イリスは見逃さない。


「……何かあったな」

「え?」

「隠すのが下手だ」


セラは一瞬黙り込み、それから小さく首を振った。


「実は最近、知らない人が礼拝堂の外にいる気がして」


イリスの雰囲気が冷たくなった。

目が、僅かに細くなる。


「誰だ」

「わかりません。でも、見られている感じがして」

「そうか……おい、リオ」


いつの間にか後ろに立っていた副隊長が、軽く会釈する。


「警備、強化しますか?」

「ああ。礼拝堂周辺は特にだ」


リオは小さく返事をした後、一礼しその場を立ち去った。

イリスは今にも泣きそうなセラの頭に、そっと手を置く。


「心配するな。セラは私が守る」

「ありがとうございます」


セラは小さく頷いた。


その様子を、礼拝堂の奥から静かに見つめる人物がいた。

白衣に身を包んだ、礼拝堂のトップであるエリシア。

イリスにとっては、いない母の代わりでもあった。

彼女は何も言わず、ただ目を伏せるのだった。

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