シルファエピデン序章2
翌朝
「ニーナ、これを持っていきなさい。」ニーナはお婆ちゃんから、パンが入ったバスケットと、精霊に水をあげる為の大事なジョウロを渡された。
「気を付けてらっしゃい、そして楽しんでらっしゃい。」ニーナは、楽しんできて良いんだ、と少しホッとした。急に勢い良く林道走り出し、振り向いて、「行ってきまーす!」と元気に叫んだ。お婆ちゃん「ふふふ、そんなに飛ばしたら直ぐに疲れてしまうよ。」
歩こー、歩こー、私は元気ー♪歩くの大好きー、どんどん行こおー♪
それから歩くこと3時間、ニーナは文句も言わずに歩いた。中々気持ちがしっかりとした子だ。もう大分森に近付いたのか、何となくマイナスイオンを感じる、回りの木々も鬱蒼とした物に変わって来た。
「はあ、疲れたなー。休み休みにしないとね。」流石に少し疲れた様だ。ニーナは持って左手に持っているジョウロを地べたに置き、切り株に座った。
「お腹も空いたし、お婆ちゃんに貰ったパン食べちゃお。」ニーナはバスケットに架かった布を捲り、パンを取り出した。楕円形のパンを縦に持ち、先っぽからハムハム食べていると、、
「ウワッ」気付いたら目の前に大きな黒い犬がいた。森で暮らしていたからか、その犬は雄大なオーラを纏っている。
ニーナは驚いた後、直ぐに緊張した。何せとても大きな犬なので、迫力が有る。
ニーナはパンを千切って投げ、犬を遠くに釣り出すと言う作戦を咄嗟に思い付いた。早速パンを千切り、投げ飛ばすと、あろうことか、パンは弱い風に煽られ、フワフワと此方側に戻って来た。これではわんちゃん此方に来て仲良く成りましょうと言ってるみたいだ。しかしあんなにデカイ野犬相手には危険だ。
当然犬はパンに釣られ、ニーナに寄ってきた。犬が目の前に来、ニーナは迫力に押されて尻餅を付いてしまった。
すると、犬は驚くでも気にするでも無く、用心深そうにパンの匂いを嗅いだ後、パンを食べ、食べた次いでにニーナの顔を舐めた。「止めてよー。」独特の獣臭がして、ニーナには少し不快だったが、犬が危害を加えてくる存在では無い事が解った。
ニーナは見知らぬ犬が見つめる中、パンを食べ終え、再び歩き出した。
ふとニーナが振り向くと、案の定犬は付いて来ていた。「わんちゃん、一緒に森まで行くの?」犬は、ワンと言うでもなく、ニーナの顔を静かに見つめた。
ニーナは更に黙々と歩き続けた。ふと気付くと、木々の間からオレンジジュースみたいな空が見えた。木々が生い茂るせいで、今まで気付かなかった様だ。ニーナは少し驚いた。
切り株に座るとどっと疲れが押し寄せて来た。小さい子特有の、今まで元気だったのに急に疲れるパターンだ。
少し早いが、とても疲れたのでニーナは持って来た寝袋で寝ることにした。「わんちゃん枕になってよ。」野生の犬が、自ら近付いて枕役を買って出る訳でもないので、ニーナは寝袋を平然と横たわる犬に寄せ、横に成り頭を乗せた。犬はそれを当然の様に受け入れた。
幾らか時間が経ち、犬が先に寝た。「キュー、キュー……」と寝息を立てていると、ニーナは思い付いた。「あなた、これからの名前はキューちゃんね。」犬は翌朝からキューちゃんと呼ばれることを、知る由もない。




