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6話

 昼過ぎまで寝ていた俺は、起き抜けにミネラルの魔法で水を飲み、残りの水で顔をさっと洗う。その水を部屋に飾られている花瓶にいれた。一度発生した水は消え去ったりはしない為だ。仕方ない。

 顔と手を洗ったことで、特殊能力である「清めの手水」の効果が発生して全身が浄化され、一定時間の間状態異常にかからなくなる。今は特に意味が無いが。

 一応、花瓶の水は浄化の呪文で清めておいた。どうせすぐ変えられるだろうけれど。

 宿では昼食は出ないので厨房を借りてシャドウウルフの肉を焼く。

譲ってもらった塩胡椒を利かせたばら肉と少量分けて貰った野菜の炒めは最高に美味かった。思わず宿の主人に勧められたエール酒を飲みそうにもなった。

(ダメだって、俺。昨日二日分宿代払ったから、後一日分の宿代しか持ってないのに。酒飲んでる場合じゃないよ。)

 飲酒の年齢に関しては日本的にはアウトだが、もちろんこちらの世界では15から飲める。

 いや、飲んでる場合じゃないから飲まんけども。

 それにしても俺、ラノベ好きだったのかな?

 自身に問いかけても答えなど無かった。



 ギルドに来た俺は西側の壁に行く。

 因みに西の壁がD、E、F、Gランクの、東の壁がA、B、Cランクの依頼書が貼ってある。東西両方にある柱はランク問わずフリーの依頼書が貼ってあり、東側の依頼がより危険度が高い。

 Dランク以下の人間は、まず東側には近寄らない。今、東側にいるのは3人の冒険者だけだ。この村に常にいる冒険者は殆どが駆け出しだ。ランクD以上の冒険者は、この村から一両日中にたどり着ける迷宮都市に大勢いる。

 迷宮への探索は最低でもDランク以上の実力が無くては只の自殺だ。だからこの村でコツコツ実力をつけて、Dランクになると同時に大体は迷宮都市に行く。

その点は俺も同じ。無暗に危険に突っ込むつもりはない。最初のうちはコツコツと。だ。

まだ正式な依頼を受けていない身としては、尻込みしてしまう。

 何か手ごろな依頼はないものかと西の壁に向かう。シャドウウルフを倒せるのはランクDからとされているし、更に退治方法が厄介な個体だし只のDランクの魔獣くらいは楽に倒せそうだ。


<パイクビートルの素材集め> 推奨ランクD

パイクビートルの胸殻をメインに複数集めてほしい。


これでいいかな。

 パイクビートルはランクDに位置する魔物だ。シャドウウルフもDランクだ。

ただし、パイクビートルはDランク、シャドウウルフはDCランクだ。

 どういうことかというと。パイクビートルは強さの度合いを示すDのランクだけ。シャドウウルフはさらに厄介さを3段階に分けたABCのうちCのランクが表記される。

 単純に強さだけじゃ測れない厄介さがある魔物は、このようにランク分けが二つ並んで表記される。二つ目のランクは強さと違い、厄介さを表している。

 シャドウウルフは基本的に本体である影を攻撃しなくては倒せない。影に対して、魔法や浄化の祈りなどを使うしかないのだ。

 そういった、単純な強さでは倒せない厄介さを表しているのが、二つ目のアルファベット。という訳だ。

 つまり、シャドウウルフを倒せるなら、基本的な強さ自体は同ランク帯であるパイクビートルを倒せる。という考えになる。

 依頼は基本的にどのランクのものを受けようと受けた人の責任となる。失敗しても罰則は無いが、信用は落ちる。一度に受けられる依頼の数は3つまで。これもやはり、こなせなければ信用が落ちる。多くても二つにした方が賢明だろう。

 なので、


<魔癒の花の採取> 推奨ランクD


 もう一つ請け負うことにした。

 流石にあとはやめておこう。ゴブリンやスライムは常時依頼が出されてるらしいし、何より討伐してから受注することも出来るらしい。確認はギルドカードをチェックすればすぐに分かる。

 態々背伸びする時じゃあない。初心者は初心者らしく、だ。それにどちらも同じ森のごく浅い所で採取も討伐も可能らしい。

 この村に来た時に突っ切ったあの森だ――ダウソの森というらしい。

名前の由来はあの森に棲む魔獣の一種らしい。比較的浅い辺りを小走りに通っただけなので、魔物も野生動物も見かけなかったけれども。

 金属質な肌に体を包んだキリンの様なものらしい。受付嬢によると、四足歩行で手足や首が長いとかなんとか。

どんなのか気になるが、危険度はBBなのでやめておこう。大体群れでいるからサブランク(二つ目のランク)もBらしいし。斬撃に耐性もあるらしい。

 

 市場で干し肉と乾燥パンを買って、早速森に入ることにした。今の時間は大体朝の10時半くらいだ。ステータスのメニュー画面で方位と時間は分かるようになっている。かなり有り難い。

 そもそも、ギルドカートなしでステータスを見ることのできる奴なんて数えるほどしか居ないらしい。本当、女神様様だ。また拝んどこう。

 元々心細いから、縋る様に拝んでしまう。

 さて、考え事しながら歩いていたらあっという間に森に着いたな。

ここからは看破で魔癒草を探しながら歩こう。

 森に入ってしばらくすると、魔癒草と魔快草という草が並んで群生していた。

<魔癒草>

大地の魔力が豊富な所に群生する。生で食べられる。体力の回復効果あり。

<魔快草>

大地の魔力が豊富な所に群生する。生で食べられる。魔力の回復効果あり。


 なんか違うのもあるけれど、一緒に採っていこう。依頼が出てればよし。出てなくてもこの効果なら持ってて損は無いだろう。

 そういえば魔力とか体力ってステータスに表示されないよな。自分の魔力がどの程度か、とかどのくらいの攻撃まで耐えられる、とか。そういうのを知りたいんだけれどなぁ。

「よしこんなもんでいいだろ」

 魔癒草32輪、魔快草82輪。魔快草の方が多かった。

後はパイクビートルを探そう。元々そっちがメインだし。



 「見つけたぞ今日の晩飯」

 厳密には違うけど、飯の種ではある。まあ虫を食う趣味は生憎と持ち合わせていないけれども。

というか、兜虫って食うとこあんの? いや知りたくも無いけれどさ。

 パイクビートルは人間大の大きさの、槍の様な一本角を生やしたカブト虫だ。

 アイテムボックスから女神斧と鋼鉄の斧を取り出す。この鋼鉄の斧、ブルオークが持っていたもので、神授の魔法をうけても傷一つなかったものだ

 そもそも、迷宮以外では魔物の使っている装備は大体がそのままドロップ品になる。

だが俺のライトブラスターは威力が高すぎて、奴らを装備諸共に消し飛ばしてしまった。

 そんな中、しっかりと原型を留めていたのがこの斧。という訳だ。

 きっと強力に違いない、そう思って看破で見たら、ただ只管ひたすらに硬くて丈夫だという効果だった。

 それでも充分に強力だとは思うけれど・・・・・・ユスティアックス(壊れ性能)に比べるとなぁ。

 ともあれ、近接戦闘がどこまでやれるか、それが今日の課題だ。

右手に女神斧、左に鋼鉄の斧。と、斧を両手に握りしめて突撃を仕掛ける。

 元々剣なんか使ったことないし、刃筋を通すとかできる気もしない。叩き斬る斧でも十分に扱えるか心配だ。重さで叩き斬る西洋剣ならいけるだろうか?

 見つけたパイクビートルは明後日の方向を向いている。一気に肉薄し、右の斧でそのりっぱな角の根元をぶっ叩く。

ズパンっ

 あり得ない音がして立派な一本角が根元から叩き斬られる。

驚きつつも、返す斧で下から掬い上げる様に頭を両断した。ダメ押しで更に両手の斧をそろえて背中の巧殻の根元辺りに振り下ろす。

 ズバギィという音がして背中の羽のあたりの2枚の甲殻が根元から弾け飛んだ。

 そして、その次の瞬間にはパイクビートルは光の粒子に変わっていた。

・・・・・・ティア様の神器が凄すぎて何も言えねぇ。

 この斧は、普段は奥の手として隠しておこう。暫くは浄化のメイスを使うとしよう。それに、両手に武器を持つ必要はないしな。身体能力の上昇と女神斧の力で、両手に持ってないと、軽すぎてしっくりこなかっただけだし。

 おっと、ドロップ品は、と。

 

<パイクビートルの翅甲殻>

背面部の甲殻。翅つき。

<パイクビートルの胸甲殻>

胸部の甲殻。硬い。

<パイクビートルの一本角>

立派な一本角。

  

ふむ、依頼では胸甲殻を集められるだけ集めろって話だったか。

 戦闘にも問題なさそうだし乱獲しよう。



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