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第五管理隊

 管理隊の宿舎について、俺たちはマサアキとザヴァンの後ろを歩いている。


「ここって軍隊なんですか?」


 ザヴァンに聞くと、彼は嫌な顔一つせずに答えてくれた。


「ああ。天使たちがここらによく攻めて来てな。昨日も襲撃された」


 天使と聞いて俺が思い浮かんだのは、白い翼に金の輪が頭に浮かぶ美少女の姿である。しかし悪魔でもイメージと違ったのだ。天使もそんな感じではないのだろう。


「マスターマスター。どうです?死んで一日目の地獄は」


 ナビゲーターが面白そうに聞いてくる。こいつは暇なのだろう。


「わかんないことだらけで今は慣れるのに必死だよ」


 小声で答える。こいつ、俺の思ってることとかわかって言ってるんだろう。


「着いたぞ。ここがお前の部屋だ」


 ザヴァンが扉を開けると、そこにはシングルベッド一つと棚、机と椅子と質素ながらもちゃんと生活感のある部屋が広がっていた。


「ねえ俺来ていい!?邪魔しないからさ!ザヴァンもいいだろ!」


 マサアキはもう待ちきれないと言わんばかりの様子で許可を待っていた。


「駄目だ」


 即答で却下されてしまい、マサアキはガーンという擬音が聞こえてきそうな顔をしていた。

 そのあと彼らは二人の自室に帰っていった。あんなに騒がしかった周りが今ではしんと静かになる。ベッドに寝転んで何となく天井を見た。


「……知らない天井だ」


 何かの漫画で読んだセリフを呟いていると、ベッドの隣にナビゲーターが立って俺を見下ろしていた。


「暇そうですね」

「うわっ!?」


 急に隣に立たれるのは心臓に悪い。


「なんだよお前……」


「暇なら私とおしゃべりしません?」


 こっちの話は聞かない主義らしい。


「おしゃべり?」


「はい」


 ナビゲーターは相も変わらずニコニコと何を考えているかもわからない笑みを浮かべて俺を見てくる。さすがにいつまでも見下ろされるのは分が悪いと思ったので、起き上がって話をつづけた。


「俺は暇じゃないんだぞ。明日だって多分早く起きなきゃだろうし」


 嘘である。そんなこと毛ほども思ってない。ただこいつと話すのが鬱陶しいと思うだけだった。


「これからの話でも、ですか?」


 その言葉に一瞬動きが止まった。


「……これから?」


 確かにこいつはこの宿舎に飛ぶ前も「重要な人物」とかどうこう変なことを言っていた。


「はい。これから、ここには天使の軍勢が来ます。マスターも巻き込まれるのは当然ことだと思っていてください。きっと悪魔の一人だと思われて殺されそうになると思います」


「は?」


 殺される。死んだのにまた殺されると言ったのかこいつは。


「混乱するのも無理はないと思いますよ?ですが、私はここまでしか『言えません』し、これからどうするかはマスターが決めることです。私はあくまで助言をするだけです」


 言葉が出なかった。確かにこいつは俺のことを「導く」と言った。「守る」とは言っていない。


「あなたは幸いなことに固有スキルを所有しています。それを使うのもいいですし、自分の力で打破するのも手かもしれません」


 そうナビゲーターが言った瞬間、宿舎の周りからけたたましく警報がなる。


「天使だ!」

「武器を持て!」

「隊長からの作戦を聞くのが最優先だぞ!」


 先ほどとは違う騒がしさに包まれる。変なところだと思っていたし、漫画やラノベのようだとどことなく他人事のように感じていてもいた。今は違う。近づいてきている。死が、確実に。


「さぁ、どうしますか? マスター」


 ナビゲーターは表情を変えずに言ってくる。

 俺の足は、有無を言わさず動き出していた。


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