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朝から町は、肌を震わせるような喧騒に包まれていた。僕は目を覚ました。
今日はこの村で祭があるらしいが、僕は特に興味を持っていなかった。眠いのだが、うるさくて眠れない。仕方なくズルッとベッドから出た。
階下に降りると、母親が忙しなく祭の準備を進めていた。父親はもう家を出たらしい。大きくあくびをして、洗面台に向かう。
この祭は「七界祭」と呼ばれていて、ここカルザ王国南部地域における最大の祭とされている。5年周期の開催で、3日間幅広い地域から多くの人々が集う。
今年は僕の生まれ育った地であるキード村が開催地に選ばれた。ここ1ヶ月はキード全体のソワソワ感を感じていたが、今日で大爆発するのだろう。
雑学的ではあるが、キードのような辺鄙な農村でも大きな祭を行うことができるのには南部地域の都市計画が関係している。南部地域の各村には七界祭のために巨大な広場が一つづつ設けられている。普段は市場などが開かれているが、この3日間だけは全て綺麗さっぱり撤収し、完全な祭モードになるのだ。
僕は顔に冷水をかけ、眠気を飛ばすと、食卓に向かう。母親と軽く挨拶を交わし、トーストを牛乳で流し込んだ。
そして今日は、王都からはるばる“剣聖”がこの七界祭に訪れる。カルザ王国最高戦力と名高い、あの剣聖がだ。胸が躍る。イケメンなんだろうな、きっと。
ナップザックに小物と財布を入れ、着替えとヘアセットを済ませてから、母親と広場へ向かった。
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広場に着くと、自分たちの町内の出店がある場所に移った。我々第三地区の出店は、フライドポテト。稼げるのかそんなもんで。
七界祭をもう少し詳しく説明しよう。まず南部地域は七つの村に分かれている。各村には200年ほど続く伝統的な祭儀があり、その形態は踊りや神輿など多岐にわたる。これを一つの地域に結集し、観光客向けに催行するのがこの祭というわけだ。
来年キードの第一地区が代表となるため、我々第三地区はいつも出店の準備に奔走する。父は祭儀に直接参加するため、ここにはいない。
七界祭、開始まで残り1時間半。
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開始時刻を迎え、人々が集まってきた。毎度のことながら人間の濁流と形容できるような、そんな賑わいだ。朝感じた喧騒の10倍はあるだろう。軽く見積もっても。
ふと上を見上げると、物見櫓が建っていた。あれがおそらく剣聖や他のゲストのためのものなのだろう。
僕の予想に反して、フライドポテト店は繁盛していた。僕は会計と品出しの補助を担当していたが、それなりに忙しかった。ポテトもみるみるうちに減っていく。まだ在庫は残っているので、心配はいらないだろうな。
ただ、店の目標売り上げにはあと少しで到達するらしい。僕は素直に嬉しいと思った。
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日が暮れ、それぞれの屋台にランプが灯り始める。本祭の始まりを仄めかす合図だ。
みんな商売モードを一旦切り替え、屋台の配置を変えていく。各々の祭儀のための道を開けるのだ。全長はおよそ7キロメートル。これが7本並ぶ。この道を各村の儀事が練り歩いていくのだ。
ふと物見櫓をみると、そこに剣聖がいた。姿を見るのは初めてだが、すぐに剣聖と分かった。それほどの格(オーラと言い換えてもいいかもしれない)をひしひしと感じたのだ。
透き通るような金髪、碧眼。端正な顔立ち。スラっと伸びたスタイル。自信のある表情。その全てが「私が剣聖だ」と語るようだった。
惚けていた僕は、大きな太鼓の音で正気を取り戻す。いよいよ、祭の始まりだ。
太鼓の音に合わせて、人々の視線が空へ向く。僕もつられて見上げたが、そこには何もなかった。
1日2話、12時と20時に分けて投稿していきます。
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