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我が親友へ捧げる。ホロライブの愛  作者: リベンジャー
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第八話 フレアの秘密と呪いの弓(前編

カツカツと響く地下の階段。

光はおばあちゃんが付けたランタンしかなく生暖かな空気が充満していた。

だからと言って不潔感もなく、臭いも感じず、むしろ光に当たった壁は、その大理石にも負けず劣らずのシックな作りになっていた。


「迷ってしまうかもしれぬからちゃんと着いていくるのじゃ。」


「あ、待って。」


たかが壁に現を抜かしていると置いていかれそうになり、急いで距離を縮めた。


『迷ってしまう。』


ビルズの口からポッと出たその言葉通りこの地下はただ階段が乱切しているだけではなかった。

何度も左に、何度も右に曲がったり、最初のように壁を押して開いたり。


付いていっているからこそ、その広大さを何となく理解できている彼女であったが、道を間違えれば二度と出られぬ程の地下迷宮だとは今後とも知るよしもないだろう。


「ここじゃよ。」


下りては上ってを繰り返し、疲れと気持ち的に飽きてきた私を待っていたのは何の変哲もない普通の木製の扉だった。

昔から変わっていないようなその扉は見た目通りの甲高い音をたてながら開いていく。


「わぁ...」


私は扉の向こうの光に思わず口が間抜けな声と共に開いてしまった。

中に入った私の目にまず入ってきたのは、おびただしい本の数々とそれを保管している高さ十数メートルはあるだろうと思われる本棚。

逆に言えばそれしかなかったが。


「ここにある本は今までのこの森で生きてきたエルフ達の歴史じゃ。」


エルフの寿命は人間の軽く十倍は上回る長寿の生き物であるからして、この歴史を物語る本の数は同時にこの世界が数万年の歴史があったことを証明していた。


だけど、おばあちゃんはそこの本には手をかけずその本棚の裏に手を伸ばし、小さく折られた紙と小さいが分厚い本を取り出してきた。

おばあちゃんは私をその空間にある小さなテーブルの方へ連れていき椅子に座るように促した。


テーブルの上で折られたシワクチャの紙を広げると、腐食した部分がカスとなってテーブルに落ちる。


「これって...。」


家系図だった。

何年も何年もその名を届けてきた過去の人物の名がそこに連なって描かれていた。

確かにシワクチャだった紙は名前を辿っていく度にしっかりした物に変わっていき、何十世代の行き着いた先は。


「フレア...?」


確かにそこにはあの金の髪と赤色の瞳を持った少女の名前が書かれていた。


「おばあちゃん、これって...」


「フレアの先祖。『白縫』を名に持つ者達の系譜じゃよ。」


「白縫...。それがフレアの本当の名前?」


その通りと口に出さず頷いたおばあちゃんは、もう一つの分厚い本を開いて私に教えてくれた。


「フレアの先祖はその昔。ある一人の若い人間の男と恋に墜ちたと記されておる。


しかし、人間の男にはある使命を言い渡されておった。


それは『黒龍』の討伐じゃった。」


「ちょっと待っておばあちゃん!黒龍はそんな昔から生きてたってこと!?」


正直、黒龍についてはあまり知らないがおばあちゃん達から得たかすかな情報から数千年単位で生きてる生物だと言うことは分かっていたが、これだと少なくとも1万年以上は存在していることになる。


当たり前だが私は思わず説明途中に叫んでしまった。

だがおばあちゃんは気にすることもなく小さく頷く。


「詳しくは説明出来んが黒龍が大昔からいた事はここに記されておる。そして、同胞達が狂人に変えられてしまう不幸が始まったのも、先祖である彼女が『運命』と出会ったのも同じ時だった。」


紙芝居のようにページをめくりながら歴史の解読を説明してくれるおばあちゃんに私は耳をくっつける勢いで集中した。


「その時のエルフの女王は仲間か敵かも分からぬ同胞達を殺すなど出来ず、殺そうとしてもその尋常ではない力に圧され今以上の犠牲者を出してしまうのが当たり前だった。


日々死んで行く同胞達と不安と恐怖に駆られ暴動を起こす同胞達で国はメチャクチャになり、機能しなかった。


当たり前じゃが、女王はとうとう精神の病を患い倒れてしまったそうじゃ。


じゃが、国民の全員が諦めかけたその時、その男は現れた。

男は黒龍を倒す最終準備を整える為にエルフ森に帯状する交渉を取り立てた。黒龍が討伐されればこの地獄から抜け出せると思った女王は国民の反対を振り切り男を自分の家に招いた。


国民からしてみれば招かざる客であった男を入国させた女王の信頼はガタ落ち、とうとう同胞達は謀反を起こす者達で溢れかえった。


じゃが、女王の軽率とも思える判断は奇跡的にもこの国を希望の光で導く光となった。

男が武器として持っていた弓。

『人器▪白縫』によって。

白縫の力は果てしなく強大で、攻めてきた同胞達を射貫き、犠牲者を出さずに事を収めた。


その姿に女王も心を射貫かれ、その者を夫に迎えた。反対だった国民もそれに大いに賛成し、後世に繋がれていった。」


「え、ちょっと待って。じゃあフレアって...。」


「『白縫フレア』。今こそ王族や貴族などの歴史は無くなったが、あの子は列記とした王の血を受け継いでいる王女様じゃ。」


私はその事実に目を見開きフレアの名前が刻まれた家系図を下からさかのぼる。


「いずれフレアはその家系図のように強き男と契りを交わし、子を授かりそして...。」


おばあちゃんは喉の奥から絞り出すかのようなか弱い物になっていき。


「夫と共に黒龍に挑まなくてはならんのじゃ!」


歯を食いしばって軋む音が耳に響き、おばあちゃんの頬を伝う雫が私の顔を映す。

ただの瘴気でさえ精神を狂わす程の強大な力であるのにそれを放った災厄に挑むなんて私にはとても想像ができなかった。

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