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待ち合わせ……?のこと

更新が遅く、お読みいただいている方には申し訳ございません。

ようやくデートにこぎつけて……ないかも。

 花乃子は王宮内の庭園にある四阿でベンチに腰掛け、何をするともなくそよ風に身を任せていた。


 元の世界に居た時、年末が近づけば蝋梅、年が明ければ梅や沈丁花、初夏のクチナシ、秋にはもちろん金木犀の香りを楽しみ、今年のウグイスはへたっぴーだだの、庭にメジロやシジュウカラをはじめ、秋にはモズやジョウビタキがまたやって来ただの、年がら年中、共に暮らす母に告げたり、一人で「わーい♪」と喜んだりしていたものだ。


 ところが、こちらの世界の貴族は、そういったことにあまり興味を持たないらしい。侍女さんズに「春告げ鳥とか、そういう季節を感じさせる生き物は居ないの?」と聞いても、首をかしげるばかり。さすがに、花については咲く季節を認識しているようだが花見という風習は無く、生き物、特に昆虫関連はサッパリわからないというより苦手な人間が多いらしい。

 王宮の庭園で働くベテラン庭師のモッチさんにも「鳥はともかく、虫は花粉の媒介をするヤツ以外は基本的に害虫」とバッサリ言われ、花乃子は残念に思いながらも「ごもっとも」と納得するしかなかった。ちなみに、春告げ鳥は一応、いるらしい。渡り鳥だが。

 

 それはともかく。


 四阿でぼーっとしていたのは、実のところ騎士団長ズンダーとの待ち合わせだったりする。早めに来て元の世界と似た鳥や虫の声が聞こえないかと耳をすませたり、風の香りをかいだりするのが恒例だった。そのための、敢えての四阿での待ち合わせである。

 あいにく、鳥も虫も元の世界と同じ鳴き声が聞こえてくることは無いが、こちらの世界の生き物の声にも馴染んできたところだ。


 ズンダーとの最初のデートは、自然が美しい公園だった。こちらの世界にも豊かな自然があり、元の世界と異なるとはいえ自然の中に身を置き、少しでも花乃子の心が安らげばという配慮もあったのだろう。その心遣いはありがたいもので、素直に彼への感謝の念が湧いた。

 そして、花乃子が徐々に馴染み、元々旺盛だった好奇心が人々の暮らしに向けば、今度は街中を案内してくれるようになった。


 平穏な時代が続き、経済的にも安定して庶民の生活は一定のレベルを維持しているが、そんな中でも医療や子どもの教育について尋ねる花乃子に、ズンダーは丁寧に説明してくれる。異動で国内を回っていたので、庶民の暮らしについては詳しかった。が、花乃子にしてみれば、元の世界に比べれば物足りないレベルだったりする。王宮に戻ってから、つい侍女さんズに「何かできないか」と語ってしまうのが宰相に伝わり、宰相が騎士団長に「おまえら、デートじゃなくて視察してるのか」とツッコんでいることは、花乃子は知らない。


 街中を歩いている時のズンダーはといえば、「団長が女連れ!?」と驚愕する見回り中の騎士たちに凍りつくような視線を浴びせたかと思えば(その割に、騎士たちは嬉しそうにケラケラ笑いながら去っていく)、「ようやく嫁さんをもらったのか!」と驚きと喜びを見せる、あちこちの商店や食堂などのおじちゃんやおばちゃんたちに、「まだ口説いてる最中で、結婚はしていない」と真面目な顔で律儀に答えている。そうなると、おじちゃんおばちゃんの視線は花乃子に集まり、「さっさと口説かれて嫁になっちゃえ」的なご注進が浴びるように降ってくる。


 顔の広さもだが、この人望の厚さはどうだ……と感心するが、それほどの人物が、なぜ自分のような人間を?と、花乃子は不思議で仕方がない。おじちゃんおばちゃんに、もごもごと「私には勿体無い人で……」とか何とか答えると、「団長さんが見初めたんだから、自信を持ちな!」と、肩をバシバシ叩かれるし。一応ではあるが、当代の聖女と知られると遠巻きにされるだけだと思うので内緒にしているし、遠慮のないおじちゃんおばちゃんの態度は親愛のこもったものなので嫌ではない……ないが、地味に痛い。

 そうすると、ズンダーは庇うようにさりげなく花乃子を引き寄せ、肩を抱く。その照れ臭いことといったら……。赤くなる花乃子を見て、おじちゃんおばちゃんが嬉しそうにウンウンうなずくまでがワンセットである。


   ◇◇◇


「何かあったかな?」


 いつもなら遅刻をすることがないズンダーが、今日は遅れている。2人で出かけるのはズンダーが非番の日だが、騎士団長という役目柄、休みを返上して出張る可能性はある。それならそれで伝言があるだろうから、それまでは四阿でのんびりしていようと思っていたら、ズンダーがやってくるのが見えた。


「すまない、遅くなった」

「それは問題ないけれど。何があったのか……聞いても大丈夫?」

「え?」

「仕事絡みなら言えない場合もあるだろうし」

 その言葉にズンダーは一瞬、目を見張ったが、その後はゆるゆると笑顔になる。


「いや、私用で伝言が届いただけで……で、今日は、その場所に行ってもかまわないだろうか」

「あら、じゃあ今日は……」

「いや、一緒に行ってもらえるとありがたい」


 首をかしげる花乃子に、ズンダーは今日の行き先は子どもの養護施設だと説明する。孤児だけでなく、何らかの事情で親と暮らせない子どもたちが暮らしている国の施設である。

 といっても、最初に立ち上げたのは100年近く前の当時の騎士団長だった。

恋は、若い人は勢いで進めるのでしょうが、年を取るとなかなか。

枯れた生活をしていると更に……。

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