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チートなんてない!(連載)  作者: ayane_project
第二章

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097 パスタとアイスクリーム

クロエです!

やっとパスタが食べられました!

でもね、ショートパスタはまだ難しいんだよ~ 魔法でマカロニとかチョウチョとかどうすればいいんだろうね?

ジャコモさん 「瓶は普通のワインと同じものでいけるだろう」


「コルクは農家が自家用に作っていたものなんだ。だから、今後は徐々に増産を頼んでいるが、いかんせん手作りだからな。せいぜい一日に10個程度だろうな……コルクの瓶詰め工程とワイヤーによる封印、ラベリングはうち(風のみち)でやる方がいいだろう。

作業所は確保したよ」

アリシア先生 「こちらは炭酸ガスを封入する魔術師が三名ね。マナの補給は常時可能だから、その量なら問題ないと思うわ」


ジャコモさん 「スパークリングワインは王都の食通の間で必ず話題となる。ただ、当面の流通量を考えると、リストランテは一店に絞る方が話題になるんじゃないか」

アンジェリーヌさん 「食通や若い女性に人気のリストランテとして、うちの取引先でもある『ラ・ロッジア』が向いていると思うわ」


私 「そこのメニューはどんな感じなんでしょうか……」


アンジェリーヌさん 「モデルテとあまり変わらないわ。

内装や調度品がおしゃれだというだけね。

むしろ、ルーカス達の婚約披露式があったでしょ?あっちのメニューの方がずっと素晴らしかったわ」

「そうなると、宣伝のためには、お料理にも手を入れたいですね」


私の謎翻訳が王都語をイタリアチックに翻訳するせいもあって、イタリアンなメニューを開発したいけど……

「王国は海に面していないんですよね?」

アリシア先生 「神話の世界ね。ポセイドーン様の逸話とかには登場するわ」

「そうすると海の幸は使えないか……

おさかな料理はどうでしょう?」

ジャコモさん 「王都周辺に大きな河がないからな。魚料理はあまり期待できないぞ」

肉と野菜か~

「鳥料理もないんですよね?」

「猟師による供給になるから、少量なら確保可能だけど、メニューに載せられるかは微妙だな」

アンジェリーヌさん 「婚約披露式の時の鳥のコンフィ、おいしかったわ~」


「でも、衝撃だったのはデザートね!

あれはこれまでの常識を越える出来だったと思うわ」

「うーん、そうなると、鳥肉と牛乳および乳製品の供給を確認する必要がありそうですね」


「あと卵が手に入ればな~」


『ラ・ロッジア』の料理長さんとお話が必要だね!


________________________________________


昼下がりのリストランテ閉店時間。


「まず、言葉ではなく料理で語ってください」

さすが、若い女性にも人気というだけあって、料理長は優雅な物腰だった。

でも、小娘がメニューを変えろと言ってきても、そこは譲れないものがある感じだ。


というわけで、おかあさんと一緒に自作したお料理を試食してもらったよ。


今回、前菜には手をつけず、パスタを出してみた。

大麦やライ麦などに比べ、小麦は贅沢品というイメージがある王国では、小麦だけで作ったパンが主要な調理方法であって、麺にするという発想はない。

と、思っていたが、うどんのような家庭料理はあるんだって。


小麦の話をジャコモさんとしていたところ、パンに向かない「堅い」小麦の話を伺ったので、家庭料理の小麦麺ではない調理ができるかもと紹介した。

ただ、トマトなし、たまごなし、魚貝なしなので、多くのパスタは作れない。胡椒も原価が厳しいし。

作れそうなものはアーリオオーリオか、そこにバジルソースを加えるかくらい。

とりあえず、基本のペペロンチーノを出してみた。


メインは鳥のコンフィとハンバーグを出してみた。


料理長 「だめですね」


私 「…………理由を伺っても?」


料理長は食材が特殊であり安定したメニューとならない点と、調理方法が特殊で馴染みがない点、特に低温調理や下ごしらえなど準備に時間がかかりすぎる点を指摘した。


「お酒は様々な嗜好があるから、取り扱っても問題ありませんよ」




ちょっと微妙な雰囲気のままお店を辞した後。

ジャコモさん 「うーん、メニューのほうもいけると思ったんだが……」

クララ 「パスタ、今までにないおいしいお料理だと思ったのに」

私 「料理長さんの言うことにも一理あるよ。

狩猟で鳥を直接供給するとか、低温調理で長時間煮込むとか……」

おかあさん 「確かに家庭料理向きかもしれないわね」

クララ 「ハンバーグだって、とってもおいしいのに!」

アリシア先生が軽い口調で慰めてくれた。

「クロエちゃん、人の好みはいろいろだよ。

もっとも、ミレーヌだったら一発だったのにね~」


ミレーヌ先生はハンバーグが大好物だからね。


ジャコモさんが話をまとめる。

「確かに、リストランテの新メニューに加えるには検討が甘かったな。

もっとも、料理長のプライドが邪魔したようにも感じたけどな……」


その後、別の店にもジャコモさんに当たってもらったが、スパークリングワインの取引のみという結果となった。

それ以上は、スパークリングワインの卸しに問題が生じるため、メニュー改善はいったん取りやめとなった。


リストランテの新メニュー作戦はいったん失敗に終わったけど、料理の革新そのものを諦めるつもりはないよ!


________________________________________


私たちが目指すことは、文化停滞状況に一石を投じようという試みである。


ユグドラシルとの仮説照合を通じ、私たちは魔法技術の向上と魔法理論の発展が必要だと知った。

また、そのためには科学技術一般の研究も必要だという話になった。


ただし、魔法大学では魔法理論の基礎研究や科学技術研究が困難であるため、民間研究に着手してはどうかという話になり、その資金捻出としてスパークリングワインの話になっているわけだけど……


「みんなで開発したメニューは、食文化の向上という面での寄与もあるんですが、アンヌがやったテンパラチャーの精密運用とか、クララの考えたリフリッジレイター魔法など、魔法技術の向上でも役立つはずなんですよね」


「パスタの屋台を自分で出そうかな」




アリシア先生 「魔素研究が第一じゃないの?ちょっと寄り道が大きくない?」

「むりかなあ。10日ごとのお休みの日だけとか」

おかあさん 「美容関係がまだ稼働していないし、スパークリングワインで私たちにできることはガス魔法だけでしょ?

だったら、平日は私がやるわよ」


おかあさんの屋台…………

なんだかとっても人気になりそう……


クララ 「食文化と魔法技術の向上が目的なので、見慣れぬ魔法で調理を披露したらどうでしょうか」


「あらかじめ麺をゆでておいて、テンパラチャーで瞬時に温めるとか……ソースもホットウォーターで出すとか?」

料理は珍しいけど、魔法のパフォーマンスとしては弱いかも。

クララ 「クロエちゃん、インパクトが大事なら、リフリッジレイターならどう?」


「うん、パスタじゃなくて、アイスクリームならもっと屋台向きだけど……」


考えてみる。

牛乳、生クリーム、砂糖は手に入るな~ バニラエッセンスは、前にジャンヌのうち(雑貨商)でいろんなハーブを取り扱ってるって言ってたような?だから、バニラエッセンスもありそう。


「となると、たまごがな~」


ジャコモさん 「卵を料理に使うのか?それって蛇の卵か?」 そう言って顔をしかめる。

「いえ、理想は「にわとり」っていう飛べない鳥のたまごです」


そこで、「ラ・ターブル・ドール」を通じて「飛べない鳥を飼育してたまごを料理に使う」方法を探していることを説明した。


さすが「風のみち」王都支店長だね、ジャコモさんは飛べない鳥の飼育情報を知っていたんだ。

しかし、たまごを食べる習慣はないらしい。理由を聞いて普及していないわけがわかったよ。


「たまごを食うと死人が出るからだそうだ」

!

サルモネラ菌か!

「だから卵は食わずに、孵化させて次の代の鳥肉に育てるんだろう?」


私は、ニワトリの体の構造や、サルモネラ菌の付着の理由、殺菌すれば安全に食材にできることを説明した。


アリシア先生 「クロエちゃんが言うならそうなんでしょうけど、その殺菌?は、ピュリファイで大丈夫なのかしら?」

「ピュリファイで大丈夫なら、もうたまごが食材として知られていると思います。

たぶん不十分にしか殺菌できないんじゃないかな」

クララ 「あの……のど飴の時みたいに、クロエちゃんがマナ譲渡して私とソフィさんがピュリファイをかければいいのではないでしょうか」

「それだ!さすがクララ!」


これで食材の目処は立った。

私は作り方を説明した。

「低温度下でぐるぐるかき回すんだよ。

アリシア先生の風魔法でもいいし、下水処理施設で水をかき回す魔法見たじゃない」

「ああ、スター【STIR】ね」

アリシア先生がまとめてくれる。

「食材は「風のみち」に頼むとして……殺菌はクロエちゃんとクララちゃん。製造はリフリッジレイターがクララちゃん、攪拌は私とソフィさんでやればいいのね」


食材がそろったら試作してみようね!


________________________________________


年末も押し迫った日。

既に大学では年内の講義が終わっているなか、新素材の試食会の日となった。

場所は「風のみち」王都支店である。


調理はおかあさん、クララ、アリシア先生、私の四人だ。

あとの参加者はジャコモさんとアンジェリーヌさん。


まずは、パスタを2種用意した。


一品目はアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノだ。


にんにくと唐辛子とオリーブオイル、それにパセリの基本のパスタ。

これなら、材料は全部あった。

たまごも手に入ったので、パスタもデュラム粉とたまごで作ることが可能だ。

攪拌はクララのスター【STIR】で、パスタ生地ができたらしばらく寝かせてちょうど良い弾力となるのを待つ。

そして、ここでアリシア先生の出番だ。

『風よ、主神アルテミスに信仰を捧げる、パスタ生地を均等に細く分かち給え、マルチ・ウィンドカッター・スパゲッティ』

これで、生パスタの出来上がりだ。

アリシア先生には、補助発語でスパゲッティと追加した場合には、直径が2mm程度となるように練習してもらった。


これも魔法技術の発展の取り組みだよ。


そしてもう一品はカルボナーラだ。

こちらもたまごが入手できてこそだね。

前世の記憶では豚の熟成ほほ肉が伝統的らしいけれど、それは入手困難だったので、脂身が多めのベーコンを使った。

あとは羊の乳から作ったチーズ、高価な黒胡椒も使ったよ。


こちらは、『マルチ・ウィンドカッター・フェットチーネ』という、約5mmの切断となる補助発語を練習してもらった。

たまごとチーズのソースは、固まらないように温度が決め手となる。

おかあさんには、ミレーヌ先生のホットウォーター・スープを習得してもらったので、あらかじめスープの適温でソースを温めてもらっておく。

そこに、あらかじめじっくり炒めたベーコンと茹で上げたフェットチーネを合わせる。

最後に黒胡椒をかけて出来上がりだ。

黒胡椒は、粒で買ったものを、何粒か小さなお鍋に密閉して、また、アリシア先生にウィンドカッターで粗挽きにしてもらった。


さあ、お味はどうかな?


ジャコモさん 「これは!」

アンジェリーヌさん 「まあ!『ラ・ロッジア』の時と全然違うわ!」

私 「アリシア先生、練習の甲斐がありましたね。とてもおいしくできています」

「ほんと。風魔法の新境地というか、今までにない精密操作になったわね。

でも、おいしいわ。このペペロンチーノ?辛みがお酒に合うわね」

クララ 「ほんとにおいしい。

どちらも信じられないくらいおいしいですけど、特にカルボナーラは驚きです。たまごってとっても濃厚でおいしいんですね」

「まあ、カルボナーラはチーズの濃厚さもあるけどね」

おかあさん 「小麦粉のお料理は贅沢だけど。パン以外でもこんなにおいしいのね」

もっとも、その贅沢な小麦粉を、パスタを練習する工程でいっぱい使ったけどね!


みんな夢中で食べたよ!

実は、ソースと合わせた完成品は、感動が薄れるから味見していなかったんだ。

私から見ても、なかなかの出来になったんじゃないかなと思うよ。


パスタって本当においしいね!




今日の目玉はもう一つある。

メインディッシュ後のデザートだ。


バニラアイスクリームが完成した。

まず、おかあさんが牛乳、お砂糖(グラニュー糖は残念だけどない)、卵黄、バニラビーンズをまぜて、ソースを作る。

『水よ、主神ポセイドーンに信仰を捧げる、ソースを少しずつ温め給え、ホットウォーター・アングレーズソース』


これは、お菓子の基本となるアングレーズソースをつくるため、徐々に温度を高めながら80℃くらいを目指す魔法だ。

まだ温度計がないから、ソースの粘度から発語を整えてもらった。

おかあさん 「クロエちゃんの特訓で、私まで魔法の精度が高くなった気がするわ」

「そうそう、これが科学技術と魔法技術の融合だよ、おかあさん」


おかあさんがアングレーズソースをコールドウォーターで冷ます一方、クララが生クリームの角が立つまでスターで攪拌させて、二つを混ぜ合わせる。

最後はクララのリフリッジレイターで発現した冷蔵庫の中で、おかあさんがアイスをときどきスターして出来上がりだ。


さあ、召し上がれ!

……

……

…………

みんな黙っている。

アンジェリーヌさん 「婚約披露式のケーキ以上の衝撃だわ……」

アリシア先生 「すごいよクロエちゃん」

おかあさん 「バニラビーンズのほのかな香りがとてもいいわね」

クララ 「………」

目を閉じてじっとしている。なんか涙ぐんでない?


「おいしい………おかあさんにも食べてもらいたかったな」

おかあさん 「クララちゃん………」


レモンスカッシュも作ってもらった。

レモンさえあればこれは簡単だ。コールドウォーターで作った冷水に砂糖とレモン汁を適量まぜる。最後は炭酸ガス魔法で完成だ!

大人はスパークリングワインを楽しんでいるが、これまでクララと私は紅茶しかなかったからね。


クララ 「これおいしい!」

なんだかクララの琴線に触れたみたい。

アイス魔法で氷を出し、ウィンドカッターでクラッシュドアイスにしてもらったあと、レモンスカッシュに投入、そしてアイスクリームを乗せてみた。

「クララ、こんな飲み物もできるよ」

ソーダフロートの完成だ。

クララ 「………」 ただただ味わっている。

ぱくぱく

んぐんぐ

ごくごく

私はそんなクララを見ながら、専用の長いスプーンも欲しいな~とか、サクランボのシロップ漬けがないとだめだね!などとのんびり見ていた。


!

クララがいつのまにか青い顔をしている。

「クララ、どうしたの?」

「クララちゃん大丈夫?」


「ちょっとおトイレに行ってきます」

だっと走り出した。


あ!そういえば、氷菓なんてみんな初めてだった。

クララったらレモンスカッシュを一人で作れるものだから、ソーダフロートを3杯も飲んでたよ!



冷たいもののとり過ぎは、キュアでは治らないんだね。

知らなかったよ!


「クロエちゃんたら、ひどいよ」

お上品なクララには珍しい失敗だったね!


挿絵(By みてみん)



「クララお腹大丈夫?」

「うん、ありがとう、ちょっと刺激が強かったのかな?」

「これからはソーダフロートのおかわりはやめようね?」

「……」

あれ?どうしたんだろう?

「……それより、お腹を鍛えるべきじゃないかしら?ソーダフロートに罪はないと思うの。あれはとってもいいものよ!」

クララ…………

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