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チートなんてない!(連載)  作者: ayane_project
74/82

074 あっちにも、こっちにも!

クロエです!

新着ドレスを買うのは、ずばり! クラスメートの誰かだと思う。

だって、披露宴で実物を見てるからね!


まず、どこから手をつけよう?


やはり、確実に成果が出るドレスのデザインがいいんじゃないかな?

負担は少ないし、リターンは確実だ。

おかあさんも参加しやすい。


そこで、さちにプリンセスライン、Aラインに、マーメイドラインを加えて、3種類のイメージ画を描いてもらった。


魔法院の放課後に、アリシア先生とさちと三人でおかあさんのうちへ帰る。


「おかあさん、ただいまー」

おかあさんはもう市庁に行く必要がなくなったので、私のお仕事関係か、お買い物以外はうちにいるのだ。


デザイン画を見ながら、おかあさん、

「そうね~

やっぱり、アンヌちゃん達のうわさが広がっているでしょう?プリンセスラインから提案した方がいいんじゃないかしら?」

「でも、派手すぎるって思われたり、布地が多いから高いって感じるかも?」

結局、プリンセスラインのイメージ画を3種類、さちに描いてもらった。

「晩ごはんはここで食べて行きなさい」

アリシア先生は恐縮したけど、今後はたびたびこんな形で晩ごはんとなると思う。

先生が材料代を渡そうとしたら、

「いつもクロエちゃんを守ってもらっているから、気にしないでね」

そこは割り切ってもらった。


翌日、今度はおかあさんが魔法院を訪ねてきて、4人で「ヴァロンティンヌ服飾店」に向かう。

ヴァロンティンヌさん、オリヴィアさんを加えて、6人で候補からひとつに絞る。

ヴァロンティンヌさん、

「先日の3種のドレスに加えて、これを新作として販売しますわ」

「あの~ 婚約披露式に参加した人でないと、ドレスのイメージがわかないと思うんです」

私は、ブライダルサロンのようにドレスを店頭に飾ったらどうかと提案した。

「街頭から見えるようにですか?

それはちょっと……そのような大きなガラスは難しいですね」

オリヴィアさん

「盗難の心配もあるわよ」

(でも、しぼんだドレスじゃ、いまいちなんだよな~)

「では、店内での展示はいかがでしょう?

展示したドレスを保存する魔法をかけてみたいのです」

ヴァロンティンヌさん、

「どのような魔法でしょうか?」

「衣装の退色や、黄ばみを防ぐ魔法です」

「「まあ!!!」」

ヴァロンティンヌさん、オリヴィアさん、おかあさんまで。

「それ、本当?」「すごいわ」「とってもいいわね」

そこはみんな気になるよね!


________________________________________


お休みの日には南部の森へ狩りに出かけた。

アリシア先生、ミレーヌ先生………それにおかあさんまで。

「あたりまえです。

食品卸も含めて、私はクロエちゃんのお仕事全般に関わるんですからね!」

おかあさんは狩猟服を用意しており、やる気満々だ。


まあ、今日の獲物は鳥メインだし、おかあさんを心配させることもないか。


おかあさん

「こんなところまで来ていたの………」

ミレーヌ先生

「ここの森の鳥や獣は、とっても美味しいんですよ!」

「それはそうだけど」

ミレーヌ先生、とってきた鳥を調理したのがおかあさんだって忘れてるでしょ!


「アリシア先生、今日はスリープの練習じゃないから、この間のあれ、やってみてもいいですか?」

「ああ、あれね、いいわよ」


『森にいる鳥さん達~ 美味しいマナをあげるから寄っておいで~』

ミレーヌ先生 「もうこれ、魔法じゃないかもね。だって、各種の魔法宣言も、マジックスペルさえないんだから」

アリシア先生 「ははは、何でもありだよね」

私 「でも属性魔法は使えませんけどね」


みんなには少し離れてもらい、少し開けたところに立っていると、

ぴぴぴ

ちちち

いろんな鳥が集まってきた。

『ここにいる鳥たちに、おいしくて眠くなっちゃうマナをどうぞ、エリア・トランスファー』


眠った鳥のうち、美味しそうな鳥を3羽捕まえた。

用意した鉄かごに入れ、鉄かごに布をかぶせて終了である。

今回は鳥を絞めることもレストランに任せることにした。


安全を確保できる場所に移動し、みんなでお昼のお弁当を食べる。

おかあさんと私で作ったバゲットサンドだよ。

おかあさん

「こんな狩りなら、クロエちゃんも安全そうね」

少し安心したように笑った。


よし、猪狩りは黙っておこう!


ミレーヌ先生も話題転換だ!

「おいし~ 外で食べるランチ、さいこ~」

すっかり食いしん坊キャラになっちゃったミレーヌ先生に魔法の機会を。

「先生、実は自家製のスープの素を持ってきたんです。

スープにちょうどいい温度でホット・ウォーターお願いします」

ミレーヌ先生はウィンクしてホット・ウォーターを発語する。

スープの最適温は67℃。さてどうか?

こくっ

「おいしい!先生さすがです!」

「へへん!」

「ホット・ウォーターの後に補助発語をつけて、スープ最適温の魔法って出来ないかな~」

「うーーん」

「今度考えてみて下さいよ。魔法大学まで行ったのに」

アリシア先生

「美味しいスープを飲みたくて、属性魔法を開発しようと思ったのは、クロエちゃんが初めてじゃないかな?」


最後におかあさん、

「クロエちゃん、今度猪狩りのことも教えてね」

釘を刺されたよ。


________________________________________


翌週の一限は、防御魔法に関する初回レポートである。

休日狩りの獲物を「ラ・ターブル・ドール」に卸し、代金をおかあさんに渡して、寮に帰ってから書き終えた。


こんな感じ

・前世の知識に基づいて、世界が、原子と原子が結合した分子から成立していると考えていること

・前世での大気は、ほぼ、窒素分子(N2)と酸素分子(O2)で構成されていたこと

・この世界の空気が同じと仮定するなら、O2やN2を集めて固定することは不可能と思われること

・理由は、個体窒素や固体酸素のためには-210℃以下の超低温が必要だからであること


どうしても否定的な結論になっちゃうんだな………


バル

「ふむ。

お前ができないと考える理由は一応理解した。

しかし、普段のお前の言説を顧みると、お前の知識では成立しない発現現象も多くあるのであろう。

であるならば、防御魔法に関しても、同様のアプローチを考えられるのではないか?」


次はできない理由ではなく、できそうな手段を考えてこいと言われちゃったよ。

とほほ………


________________________________________


二限は、水魔法の高成績組と一緒に治癒院へ

メンバーは、水コースの魔法成績上位6人(クララ、エリス、テオ、エマ、エミリー、ジュリア)と私。残りの生徒も実はベルナール以外必要な発語はできるそうだが、2班に分ける必要からこのメンバーとなった。

ぶっちゃけると、クララ以外の子はベルナールと別れてほっとしてるよ!特にジュリアは以前怒鳴られてるからね。

「ラッキー!

一週間もあいつの顔見なくて済むぞー!」

「一限は魔法院で顔を合わせる」 と、エリス。

「……そうだった……」 一瞬でしぼむジュリア。

まあでも、女子6名(+テオ)で、魔法院から出て治癒院に行くのはちょっとした散歩気分だ。

「私も行きたかったのに!」 と、ミレーヌ先生。

「先生は、居残り組と魔法院で真面目に授業をすること」

ミレーヌ先生よりエリスの方が先生っぽいね!


そんな気分で治癒院についた。

治癒院の中は、古びた市民病院といった雰囲気だった。

――薄暗い廊下、両サイドに並ぶ長椅子、咳き込む年配の人や、熱がありそうな赤ちゃんを抱くおかあさん。

薬草の匂いと、熱気がこもっていた。

突き当たりには診察室があった。

ラファエル保健長が私たちをその中に入れた。

診察席には、疲れた女性治癒師が一人。アノックさんという年配の方だ。

廊下には長い列ができていたが、アノックさんはカルテのようなものに書き込みをしているが、診察はしていなかった。

「今は春だろう? これでも一番患者が少ない時期なんだよ……」

マナがつきて次の診察ができないらしい。

「今は何の発語もできないからねえ……この年でマナ切れは本当にきついものさ……」

ラファエルさん

「そこで君たちの出番だ。アノック女史には診察だけしてもらい、アノック女史の指示に従って、君たちで発語してもらいたいのだ」

そうか、私たちに何ができるか良くわかっていなかったけれど、この世界では、マナがなくなると治療が止まっちゃうんだ!

納得だよ!


アノックさんが、魔法をかけた後の状態を見てから治療完了としたいというので、診察席の側に椅子を6個並べて、処置席を作る。

アノックさん

「ん?君は処置に参加しないのかね?」 と、私に聞いてきたので、

「はい、私は水魔法士ではなく、治癒魔法も使えません。ただ、トランスファーが使えますので、みんなのマナが減ってきたらマナの補充を行います」

マナ切れで疲労困憊のアノックさんに実演してみた。

『アノックさんが元気になりますように、トランスファー』

「お! おぉ! ほわゎゎゎゎゎゎ………………」

アノックさんの顔色に血色が戻る。

「なんだね! これは! すごいじゃないか!」


「よし、アンタは私の隣に座っていな!

診察を始めるよ! 次の人、入っておいで!」 張りのある声で診察を開始した。


赤ちゃん連れのおかあさん

「夕べから、咳が出て、熱も火が出るように熱いんです」

アノックさんは喉を見て、赤ちゃんの胸に耳をあてて、手で脇とおでこの熱を調べた。

私は、赤ちゃんのぐったりした様子を見て、ハラハラである。

ああ!ペンライトと聴診器と体温計があればいいのに!

「一番の子!ピュリファイとキュアはできるかい?」

「はい」 と、クララ。

赤ちゃんは、クララにピュリファイとキュアをかけてもらった。


次はヒューヒューと喘鳴ぜいめいがひどいおばあさん。

アノックさん

「呼吸困難もあるね………こうした症状だと、キュアも効きにくいんだ。

二番の子!喉から胸にかけて念入りにキュアをかけて!」

「はい」 と、エリス。

発語後にもう一度診察。少し良くなったかな?

「う~ん」 アノックさん。

喘息の治療はないか~

「あの!マナを譲渡してもいいでしょうか?マナが増えれば体に力(免疫力とか!)が増えるかもしれません」

「試しにやってみな」

『マナよ、おばあさんの喉と気管支と肺にじんわりしみこんで、おばあさんを助けてあげて』

白い光がおばあさんの患部に柔らかくしみこむ。

おばあさんはひと心地がついて、ほっとしている。

「何じゃそりゃ?ヘンテコな魔法だね!」

アノックさんは、治りゃ別に何でもいいと割り切ってしまった。


………

それからも、治療は続いた。

夕暮れ、すべての患者の診察が終わるまで、お昼を食べる間もなく私たちは治療した。

アノックさん

「やれやれ、ありがとうよ。

病人全員に治療できたのは、何年ぶりだろうね………」

治癒師が少ないと、マナ切れに陥ってしまい、患者を帰すしか方法がなくなるんだそうだ。

「きょうは、クロエ、おまえさんのおかげだね。

もちろん、水魔法士のみんなのおかげでもあるが………」


帰り際、アノックさんはクララに、

「あんた、イリスの娘じゃないのかい?」

「はい!おかあさんのことご存じですか?」 クララが息せき切って尋ねる。

「もちろんだよ………そうかい………イリスの」

そう言って、アノックさんはクララを抱きしめた。

「そうかい………」


________________________________________


その次の日は、土コースの成績上位者と、風コース全員、それにアンヌで建設課作業所へ行った。

土コースの成績上位は、クロード、エミール、ジャンヌ、ノエミ、リザ、ロラである。


ジュリエットさん

「みなさん、ようこそ!

先日の現場見学からそれほど日数が経っていないのに、こんなにたくさんの生徒さんに来て頂いて感激です!」

こちらも大分困っているということだね。


クロードは、ジュリエットさんと一緒に、粘土の成型魔法(ソイル・クワドランギュラープリズム・モールド)の発語、

エミール、ジャンヌ、ノエミ、リザ、ロラは、原土を混ぜ合わせ魔法ミックス・クレイ発語、

アンヌはテンパラチャーで焼成窯の温度管理、

マリィは釜内の空気をプッシュで循環、

ルーカス、アーサーは、完成した煉瓦の焼成窯から搬出、成型粘土の搬入を覚えたばかりのフロートで実行した。


ジュリエットさん

「すごいわ!」

大分捗ったようだ。

建設課の焼成窯などの管理区域は市外にある。

治癒院より終わるのは早かったけれど、寮に着いたのはやっぱり夕暮れ時になってしまった。

お昼をとれたのはましだったけれど、治癒院よりも肉体運動が多いから、今日も大分疲れたよ。でも、やることはまだ山積みだ。


帰ったら、浮遊魔法の週末レポートを書かないといけないや。


挿絵(By みてみん)

クロエ「アノックさんにおかあさんのお話聞けて良かったね?」

クララ「うん、ずっと治癒院のお話を聞きたかったの。でも、病人じゃないのに治癒院には行きにくいでしょ?」

クロエ「またお話しできたらいいね」

クララ「時間があればね。おかあさんの最期の時どうだったか知りたいけど」

クララのことを応援したくなった方はご支援を!

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