054 さちの力とウェディングドレス
「クロエです!
相手はいないけど、ウェディングドレス着てみたいなぁ~
そのときは、やっぱり定番のAラインですよね!」
『アンチマジック宣言』アコギバージョンを作りました。聴いてね!
https://www.youtube.com/watch?v=Bt4YeVcIDTc
夕食の後、両先生とアンヌ・マリィ・エリスは家に帰っていった。
「こんな時じゃなきゃさ、父ちゃん動いてくれないんだよ。
ほら、テオんちは農家だろ?
市内での挨拶よりまとまった時間がいるからね」
料理はまた作ることを約束させられたよ。
エリス 「これから打ち合わせの密度を上げないとダメ」
「確かにね」
「寮での女子会が必要不可欠」
本当かな?
首をかしげる。
マリィ 「前回私たち参加できなかったじゃない。
それにスリープの練習で狩りに行くんでしょ」
「目的は達成したんじゃないかな?」
「だめよ!反復練習しないと!
危険に対処するには猪狩りが必要ね!
クロードのおうちから荷馬車を借りましょう」
マリィが猪料理を食べてみたいだけじゃないのかな………
ミレーヌ先生 「そうね。猪くらい眠らせられないと暴漢に対処できないわ」
「いつもミレーヌ先生に甘えるわけにいかないから、次回はアリシア先生だけにお願いした方が 「絶対ダメ!!」」
「食材から選びたいもの!」
食材とか言っちゃってるし………
確かに、暴漢に襲われたら身がすくんでしまうこともあり得るから………
もうちょっと狩りの練習は必要かも?
狩りの練習(スリープの練習じゃなかったっけ?)を約束したら、みんな満足して帰っていったよ。
アリシア先生 「ほらミレーヌ、いつまでもだだこねてないで、帰るわよ!」
「えー」
「いい大人が二晩もお邪魔したらダメでしょう!」
私とクララとさちは今晩もおかあさんのうちにお泊まりだ。
昨年までは孤児院にいたからよかったけれど、クララは家に一人になっちゃう。
おかあさんがお泊まりを強く勧めてくれたのだ。
お泊まりの人が増えてきたので、おかあさんはベッドを一つ買い足した。
「ごめんね、おかあさん」
「子どもが大きくなったらベッドを増やすのは当たり前でしょ?
子どもが心配することじゃないわ」
ベッドを二つくっつけて、4人で川の字になって寝た。
「ソフィさん、私までありがとうございます」
「クララちゃんも、赤ちゃんの頃から知ってるからね。
もっと遊びに来なさいね」
寝る前の雑談で、クララに聞いてみる。
「そう言えば、ヴィクトールさんは「おじさん」なのに、おかあさんは「ソフィさん」なんだね?」
「それはそうよ。見た目が違うじゃない」
ソフィさんてちょっと他人行儀かなって思ったんだけど。
「ソフィさんは、どちらかと言えば「おねえさん」て感じなのよ」
おかあさん 「あらあら」
「おかあさん、さっきの話、衣装の相談に乗ってもらってもいい?」
「楽しそうね。一緒に考えましょう」
ウェディングドレスっぽい服作れるかなー
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新年二日目の夜
今晩は女子寮のクララの部屋にお泊まりする。
みんなが寮に帰ってくるのは明日なので、今晩はクララと二人きりだよ。
「アンヌもマリィもエリスも、このままうまくいくといいね」
「そうね。
どの相手とも相性がいいように思うわ」
「キラキラカップルと、バリバリカップルと、もじもじカップルだね!」
「なにそれ?
でも、アンヌちゃんたら、とっても可愛いわね~」
「13歳で結婚相手決めちゃって、本当にうまくいくものなのかな?」
「そうね。でも、遅いより早いほうがうまくいくことが多いかな?」
前世との違いは大きいな。
「クララはネロ君と結婚するつもりなの?」
「以前はそう思っていたんだけど、今は別のことを考えてるの。
ほら、ヴィクトールおじさんに魔法大学の話をしたでしょ?」
「私は、クロエちゃんと出会ったことで、色々考えることが増えたと思っているの」
「そうなの?」
「ええ、
属性魔法の能力が大きく伸びたこともそうだけど、
魔素学やクロエちゃんのオリジナルスペルを知って、もっとすべきことがあるんじゃないかってね」
「へぇ、
前から思ってたけど、クララってすごいね」
「もう、何言ってるの?
すごいのはクロエちゃんだよ」
「私は……何にもないよ。
記憶もなし、元々は魔臓もマナもなし。
魔法もなし。
家族は………今はもうできたけどね」
ほんとに。
おかあさんやクララ、アンヌに出会えて良かった。
それにリナちゃんありがとう。
ふとクララを見ると、彼女は私のことをじっと見ていた。
「クロエちゃんは、自分のこと何もないと思っているのね………
………
………
私は、
クロエちゃんには――
なにか大きな運命が待っている気がしてならないの」
「そして、一人では、それがすごく困難な道にならないか、とっても心配しているの」
クララは、前から私のことを心配だって言ってるな。
「そして、クロエちゃんを助けられる人がいるとすれば………
……支えられるのは、私じゃないかって………」
「今日はクロエちゃんと二人きりになれて良かったわ」
クララがそんなことを考えていたなんて。
私がこの世界に一人放り出されたかのように感じていたとき。
両親のいないクララもまた、私と出会って何か感じていたのだ。
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お休み三日目。
明日からは魔法院も神殿、孤児院も日常生活に戻る。
また、私、クララ、それにさちは、おかあさんのおうちに来ていた。
今日からは、アリシア先生も私の警護兼指導についてきた。
「さちがね、
すこしずつ、色々なことができるようになったんだよ」
実は、私の警護問題とオリジナルスペル問題に一定の成果が出たので、
さちのことにも気を配れるようになったのだ。
さち、ごめんね!
自分のことでいっぱいいっぱいだったのかも。
さちのことについて、改めて考えをまとめてみた。
「さちはね。孤児院に来たとき、ちょっとおかしかったの」
(前世で言うと、ちょっと発達障害っぽい感じ)
「名前を呼んでも反応が薄いところとか、目線が合いづらい・表情が乏しいところ、
それに『オウム返し』の言葉が多かったの………」
クララ 「確かに、最初はそんな感じだったわね」
でも実は違った。
「でも、ある日、オウム返しになる理由が分かったの。
さちはね、近くにいる人の意識を読み取る力があるようなの」
私はテレパシーのことを説明した。
「テレパス(テレパシー能力のある人)は、相手の思考を読む能力があるといわれているけれど、
さちの場合はちょっと違っていて、相手の知識を検索できる力のようなの」
「私は『検索スキル』って呼んでるの」
「でもね、さちは、私の知識だけしか検索できなかったの。
それで、ほかの人との会話では、検索する言葉をオウム返しで喋っていただけで、おかしいわけじゃなかったの」
さち 「今でも、クロエ以外の検索はほとんどできない」
「それも理由があって、
私には、前世知識があるでしょ?
それが、さちには大きな検索対象に写るみたいなの」
さち 「クロエは、大きな図書館みたいに感じる。
でも、ほかの人は一冊の本みたいに感じる」
クララ 「それでさっちゃんはクロエちゃんの側を離れると不安になっちゃうのね………」
「しかも、私の前世知識って、私自身が把握しているより大規模みたいなの」
??
みんな理解できないみたいだ。
うーん、ウィキやネット検索のことはうまく説明できないぞ。
おかあさん 「うまく説明できないのね。
いいわよ。
またうまい説明を思いついたら、そのとき頼むわね」
「でね、ここからが大事なんだけど。
検索しても、検索した内容はさちにはちんぷんかんぷんだったの」
ここで、前に感じたイタコや自動書記の話をした。
アリシア先生 「大学でもあまり研究されていない分野だけど、歴史上、確かに『神が降臨した』という人はいたわね。
それと同じ感じかしら」
「私とさちは、検索で出てくる言葉を、二人でメモしたり自分なりの解釈で繰り返したりしたの」
さち 「クロエの図書館の本を借りてきて、私の部屋に写本を入れていくような作業」
「私の部屋の写本が増えたら、みんなの話の意味が分かるようになった」
二人の時は、DB間のファイルコピーのイメージで喋ってたけど、
こっちの方がみんなにわかりやすいね。
こんな例えができるようになったこと自体が、さちの進歩だと思うよ。
「「「はぁ~~」」」
一気に話したけど、ちょっと飲み込むのが大変な話だったかな?
アリシア先生 「二人でやってた早口言葉や、連想ゲームって、そんな意味があったのね………」
おかあさん 「さっちゃん頑張ったのね」
頭を撫でている。
「それでね、今までは、
検索スキルの結果は、さちが口で喋るだけだったんだけどね」
「絵で検索結果を示すことができるようになったんだよ」
「つまり、前世のドレスをさちに描いてもらおうって、
そういう話なの!」
はー ……やっと結論にたどり着いたよ。
さちにペンと紙を渡す。
「さち、検索してくれる?『ウェディングドレス、Aライン、一般的』」
こく
「一着描いてみる」
さちは、迷いのない筆致で、すらすらと一枚の絵を描いた。
それは、デザイン画やデッサンというより、イラストレイター(アプリケーション)で描いたベクター画という感じで、無機質で、素っ気ない絵となった。
それでもみんなにとっては、びっくりするような絵となった。
クララ 「きれい………」
おかあさん 「真っ白な布で作るのね………」
「うん、それでね、手にはブーケを持って、頭にはベールをかぶるの」
アリシア先生 「式のクライマックスでベールアップする訳ね………」
「そう」
「こんなデザインの服って作れそうかな?」
作者「クロエが賛美歌歌いたいって!」
マリィ「風教室で知ってるからね。やめた方がいいんじゃないかな」
「慣れだよ!四柱のクレドって、いい曲じゃん!」
「そう思ってるのは、異世界人の作者とクロエだけだと思うけどね」




