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カッペが遂に大都市東京を走る?  作者: カビゴンと一緒


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立場

俺は何者なんだ?

 面は拝んだ此奴らか!


 怒りは涌いて居たが逆に冷静に為れと、俺に言い聞かせる俺が居た。

 <仕事だろう冷静さを失うな。今迄にも同じ場面は無かったか?その時お前は如何してた?>


 報道に携わる身で在る、

 その時の被害者その家族は如何だった?、

 今のお前と同じでは無いのか?、

 そう自分に問いかける。



 握り締めた拳からスッと力が抜けた。


 そうだな、確かにそうだ!、外から見る立場と、その身を置いた立場はこんなに違う物なのだ、外から見るのでは陰湿な事件でしかないが、その身の立場が違うと一生の生活其の物が変わってしまう恐ろしい事が起きる物なのだ、改めて今の仕事と向き合わねば為らない、今此処に居るお前は報道に身を置いた人間か?、其れとも被害者家族なのか?


 今答えは多分出ない、

 今は報道の人間として向き合う、

 今は仕事として冷静に行動しよう。


 被害者の家族としては帰ってからだぞ御前は!、

 心の声に従う事に決めた。



「頼んだぞ!」

 パトローネ2本と記事を預かりその場を走り出す。



 込み上げる怒りを抑え付け冷静に走る事に専念す、

 此処で事故でも起こせば俺の周りに居る者を悲しませるだけ。



 そして立ち直らせるあの娘が路頭に迷ってしまう、

 手を引いて上げ続ける為にも帰り着かねばならないのだ、


 帰り着いての伝書鳩だから。



 急ぐ仕事、急がぬ仕事、淡々と乗務を冷静に熟して行く、

 気を抜くと湧き上げて来る物を抑え続け本日の乗務は無事完遂した。



 此処からは一個人だ!

 兎に角早く帰って上げたかった、新聞なら明日地方記事に小さくか、4分の1面に組まれる位だが、ワイドショーはセンセーショナルに取り上げていた。



「きっと見て居る筈、早まるんじゃないぞ!』

 今直ぐ帰ってやるから無事で居てくれ!


 祈る気持ちでスロットルを開ける、Γは俺の気持ちを代弁するかのように唸りを上げ京葉で二つ目の大台近くの速度が出て居ただろう。


 自宅の明かりは消えている、不安を抑え込みドアを開ける。


 知らぬ事の様に普段通りの声を掛けた。

「ただいま」と。



 啜り泣く声が聞こえる。


「如何したんだ、明かりも付けずに?、何泣いてるんだ俺の帰りが遅くて寂しかったのか?」

 務めて明るく振る舞い、傍に寄り抱き締めもう一度声を掛ける。



「ただいま」

 <良かった、最悪な状況は免れた様だ>


「お兄ちゃんなの?、お兄ちゃん帰って来てくれたの?」

 顔を上げた。


「夜だぞ、何真っ暗な中に居るんだ?、電気付けるぞ」

 と立ち上がる。

「ダメ点けないで、このままで良いの。そばに居てお願い」

 確信した間違いなく見ている、そして顔写真も出ていたので其の時を思い出したのだろう、

 怖かっただろう、今は知らぬふりをして居た方が良い。


「そうか?夜だし今日は此の侭一緒に寝るのか?、そうだお前飯は食ったのか?、何か俺が作ろうか?、買って来ても良いぞコンビニ弁当で良けりゃ?」

「食べてない、でもお腹もすいてないから、このままそばに居て・・」

 無理はやめた方が良いだろう。


「解った、じゃあ早いが今日は寝よう」

 とだけ伝え休む準備をする。

「お兄ちゃん、後でお話しがあるの…」

 ついにこの時が来たか…。


「お兄ちゃん…」


 後が続かない、知らない振りを俺はもう出来なかった。


「如何した?今日思い出して怖かったか?」

 掴まる手に力が籠る。


「何で、何で分かったの?」

 気を逸らして上げよう。

 思い出し蘇る恐怖から少しでも、今の俺には其れ位しか出来ないが。


「前にも言ったろ、人心が読めるって」

 俺の噓に震えは止まった。

「TVで捕まったって言ってた、あの人達…」

 其の後に続く言葉を待って居た。


「もう逢うことは無いんだよね、お外歩いても。少し安心した!」

 良い方へ考えられたのか、小さな一歩、此処から始まる心のリハビリが。


「嗚呼、安心しろ間違い無い、俺が此の目で見届けて来た安心しろ」

「なんでお兄ちゃんが見て来たの?」

 コイツ俺の仕事忘れてるのか?



「何の因果かな…、俺が記事とフィルムを運んだ、最初から最後まで見届けた、確かに俺が最後迄見届けて来た、是で安心したか?」

 そうだ俺が直接伝えるべき事だ。



 画面を通して向こうの世界の事では無く本当に在った事だと。



 是は俺に与えられた使命だったのか?、

 此の娘に伝えて上げる為に選ばれたのだ…。


「ありがとう、お兄ちゃんが見て来たなら間違い無いもんね!、誰が言うより信じられる!、良かったお兄ちゃんから聴けて…」

 漸く笑ってくれた。


「ごめんなさい、お兄ちゃん」

 如何したんだ?急に何を謝るんだ・・。

「やっぱり、お腹空いたご飯食べたい!」

 良かった、食欲出たなら一安心。



 先は長いと思うが、

 一歩ずつ此処から歩んで行ける。

 今日現場に行った事は無駄じゃ無い。


「じゃあ一緒に行くか?、時間が遅いから歩きになるぞ?、良いのか?」

「うん!一緒に行くよ!」


 外出用に服を着替え、スーパーに向け歩き出す。


 其の時小さな変化が有った、

 今迄俺の陰に隠れる様していた筈。

 そんな娘が俺の横を並んで歩いて居る。



 時間が係る事に為るだろうが、

 良い変化だ・・・。


前を向いて行けるように。

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