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カッペが遂に大都市東京を走る?  作者: カビゴンと一緒


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明日はやって来る・・・

受け入れるだけ…

 それは余りに痛々しい光景。


 本当し嬉しそうに笑ってるそれを見ているのも辛かった。


 怖い思い、


 恐ろしい思いしたのでは無いのか?


 なのに何故その笑顔で?


 恐ろしく怖い筈の男と言う生き物相手、


 何故俺に抱かれてるんだ?


「あたしこれで綺麗に成れたよ、全部お兄ちゃんの匂いに染まったよ!」


 眼から大粒の雫が溢れて居たが晴れやかな笑顔に為っていた。


 悲しい光景、


 此れで全てを無かった事にして上げる事ができたらどんなに良かったろうか…。


 小さな躰を抱き止めて居た。



「お兄ちゃん?」

 驚いた眼をしたが、直ぐに瞼を閉じ躰から力が抜けた、

「ありがとう、お兄ちゃん」

 と一言だけ伝えてくれた。



 翌朝眼を覚ますと腕に掛かる重みが無い、慌てて見渡すが稀有な心配だった。

「そろそろ起きないと、遅刻するよ?ご飯食べるよね?」

 鼻腔をくすぐる良い匂いが漂う。


 其処に久しい風景が其処に在る、

 学校に通うため俺より先に柊が起きていた懐かしい姿だったのだが…。


「もっとお兄ちゃんの匂いが着かないのかな?」

 と言い昨日俺が脱いだシャツを羽織り匂いを嗅いでいる。

 <コイツ何処迄が冗談で、何処迄本気なんだ?>



「やめとけば良かったんじゃ無いか?、そのシャツじゃ表に出れないぞ」

 身震いをした。

 仕舞った今の此奴に言う言葉じゃ無かった、迂闊だった!


 でも直ぐにニッコリ微笑を返してくれる。

「お家から出ないし、お兄ちゃんの匂いに抱かれてるからちゃんとお留守番してられるよ❤」

「そうか、お留守番は怖くないか?」

「うん!、お兄ちゃんと一緒だもん♥」

 俺の着ていたシャツ一枚で心の平静を保て危うい方へ向かわぬなら其れで良いのだろう。



「それじゃあ、行って来る」

 そう言い玄関を出ようとした。

「ちょっと待って!」

 呼び止められた<そろそろ出ないと時間的に厳しいが…。

 この子に話してはいないが、昨日の朝の事故の事が在るし…。



「見て!」

 <コイツ、何時でも斜め上を行く、其れを何処から持って来た?捨て損ねていた!>

 紅い首輪をしていた勿論服は着ている。



「これで、もっと繋がって居られるの!」

 <まあ良い、明日への不安が少しでも紛れるのならば、そう思う事にした>


「行ってらっしゃい、大丈夫だよ心配しないで、ちゃんとお留守番してるから」

「嗚呼、仕事が終わったら全速力で帰ってっ来る、行ってくるよ!」

 見送られて本社へ向かう、一寸遅れ気味だスロットル回す、ご機嫌な声がしていた。



 到着一番の仕事、ジュラルミン製の蒲鉾と言うのが正解だろうか?、

 大きな箱を渡され行先は汐留。


 輪転機の有る印刷工場、此処の本社でも刷って居るが別工場が有り其処でも刷って居る。


 預かった箱の中身は其の輪転機に掛ける原版二枚、アルミ合金製で結構な重量がある。

 摺り終わると溶解し次の原版に生まれ変わると聞いている。


 長さもソコソコ有るがシートに括り付けスタートする、ただ跨ぐのが大変高さで40cm弱、然も背中に固いケースが当り結構痛いんだ、残念ながら<Γ>にはキャリアー等無いし、タンデムシートも段差が有るし尻上りに括り付けて居るので、手前の角が背中に当たりブレーキング時にアタックして来る。


 勿論、役得感など在る訳も無いしただ痛いだけ。


 まあ女の子を乗せてる訳じゃ無いので気を使う必要は無いし、ケツの長さだけ気にして置けば問題ない、何時もより30cmほど長く為って居るので気を使わないじゃないが、隙間走りながら後部の長さを頭に落とし込み接触だけは気を遣う。


 まあ何回も背中に激突された、俺の走り方じゃしょうがない・・。



 次は足立、葛飾の両区役所で広報記事用の資料のピックアップ、留守番させていたチビの出番だ、其の後は多分特殊な新聞配達で此方も決りだチビで行く。


 確かにパワーは無いのはしょうがないが、兎に角狭い隙間にガンガン突っ込で行ける。

 パワーが無い分落とさない、一度速度に乗って仕舞えば此奴なら遜色無い。


「良いなこの感じ、忘れかけた初めての頃が甦る…」

 色んな事が在りすぎたが、やっぱり楽しいよ走る事が。


 お前に乗ると良く判る、小さくても、大きくても、俺はバイクに乗る事自体が楽しいんだ!。

 悲しい事が続いて下向きに為りそうな心の中、そんな時チビは何時も上向きにしてくれる。


 業務中は努めていつも通り振る舞う様にして居たが、いよいよ明日だ自宅に帰るのも気が重い、だが俺の帰りを待つあの娘は俺以上に心が押し潰されそうに為って居る…。


 自宅へ戻るスロットルに力が籠る、

 時間は20時40分を回った位で多分今迄で一番早く到着しただろう、


 仕事で走るより早かったと思う。


 だが自宅に明かりは灯って居ない。

 まさかと思いドアを開け不安は直ぐに消えた、

 履いて来た靴は玄関に在るでも明かりが灯って居ない。


 最悪の予感が頭の中を掠かすめたが小さな息使いが聴こえる。



 隅で小さく為って居た多分ずっと泣いて居たのだろう、

 幾重も跡が残って泣き疲れて寝落ちしてしまったのか、

 起こさぬように抱き上げ寝かせて上げる。



 抱き上げると前より更に軽く為って居た、

 妊娠が分って真面に食事も摂って無かったのだろう。


 其の事が俺を更に責め立てる、


 何でこんな事に為ったのか?、


 何故俺たちに降りかかるんだ!


 <泣いても、笑っても明日の事は変えられない受け入れるだけ、俺も、この娘も>



 程無くして目を覚ました。

「おかえりなさい、ゴメンねあたし寝ちゃってたの?」

「疲れてたんだろ、明日は早いし、もう寝た方が良いぞ?」

「お風呂行こう!、お風呂!」


 一寸待てって?一体何言ってんだコイツ?

 そう思ってのだが次の言葉で思いちがいな事に気が付いた、また涙が溢れてる。


「今日もお兄ちゃんのTシャツとトレーナー頂戴…」

「どうしてだ?、今も着てるだろ?」

「だんだん匂いがしなくなって、お兄ちゃんが居なくなっちゃう気がして、段々怖くなってきて、寂しくて居られなくなって、怖くて寂しくて・・」

 泣き出していた。


「大丈夫傍に居るから一緒に寝よう、居なく為らないから、朝綺麗にして行こう」



 そう、いよいよ明日なんだ、泣こうが喚こうが否応なしに明日はやって来る・・・。


泣こうと喚こうと明日はやって来る。

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