#23閑話【怒れる咲と雅の願い】三人称
※22話の会話中、元旦那のナツが魂の番の彼女を至高とし、咲に対して汚れの様な発言をした際の咲の脳内の沸騰ぶりと、その咲を宥めていた雅の心境を詳しく綴ったものになります。
「ほら、君が真っ新なのは魂だけでしょ?」
ナツの言葉に咲は凍りつく。しかし、瞬時にその氷は怒り狂った咲の熱によって昇華する。
(っ!!ほざくなっ!人を汚れみたいに言いやがって!処女がそんなに偉いのか!?結局は膜があるかの違いだろっ!破るのがそんなに至高なのか!破った後は皆同じだろっ?!)
咲は怒りで肩を震わせながら、拳を固く握りしめる。そうして、ナツが自身の〈魂の番〉について恍惚な表情を浮かべならが語っていた後に、咲に対して少し蔑むような表情を見せた事を思い出し、咲の怒りは膨張する。
(大体あんた〈魂の番〉がどうの言ってるけど、私と結婚しながらも何回も浮気してたよね?!しかも、浮気相手何人か見たけど、巨乳でお尻プリプリさせてる奴等ばっかりだったじゃん!どう考えても夜の手練れ達ですよーっ!?お前っ、結局はしたいだけだろっ!)
更には今まで拗らせて来た恋愛遍歴も思い出し、咲の脳内で怒りがヒートアップする。
(大体ねぇ、やれ清楚が良い、ナチュラルメイクが良い、黒髪が良い、肌が白いのが良いとか言ってもね、結局は胸もお尻も見るんでしょ?!この子が夜乱れたら…とか考えるんでしょ!?どっちが汚れてるんだよーーっ!身持ちが固いのが良いとか言いながら、結局は出来るかどうかでしょ?!一生させて貰えなくても「処女が良い」って言えるのかーー!?)
湯気でも上がる勢いで真っ赤になって息を荒げる咲。その様子に気付いた雅が咲を落ち着かせようと「まぁまぁ、(咲の言わんとしてる事は)分かるよ」と言う風に背中を優しく摩る。そして、ポンポンと叩いて励ましながら雅は考える。
(其れにしても、本当にこの子…男を見る目ないわね…)
雅は改めて咲の男運の無さと見る目のなさを感じる。そして、アールはこの状況をどんな面持ちで見ているのか?と不意に視線をアールに向ける。アールは無表情のまま事の成り行きを見守っているようだが、ナツに嫌悪感を抱いている事は見て取れる。
雅は初めてアールに出会った時から、アールが咲に対して何処か出来の悪い我が子を見るような慈しみのある視線を向けている事に気付いていた。そして先日、アールが咲に名を呼ばれた時の表情からアールの中で咲に対する想いが男女の情へと変化しつつあるのではないかと感じている。
雅はそっと瞳を閉じて願う。
(アールくんの咲への想いが、咲の心をこのまま良い方向に成長させてくれますように…)
そうして、ゆっくりと瞳を開き、出来の悪い我が友を慈愛の表情で見つめる。そんな雅の目に映ったのはナツに甘い言葉を囁かれ、再び絆されそうになっている咲の姿だった。
——今度は雅が咲に対して怒り心頭に発し、咲の脇腹を思い切り抓るのであった——




