第一章 一話「お迎え」
―どうしてこんなことになったんだ。
夏のうだるような暑さの中。
僕は普通に暮らしてるはずの中学生。
「月姫様、ご準備を」
「いやいや、僕は違うってば!!話を聞いて!?」
月姫様は、僕じゃない。
そもそも、なんでこんなことになったんだよ。
そう苛立ちながら、僕―楠城唯は思い返す。
まず、夏休みの始まりからだ。
7月19日。
「唯、部活にはいかないの?」
「あー…どうしよっかな?三年だし、受験勉強した方がいいかな?」
「どうだろうね?でも大丈夫だよ、唯は成績良いし」
「そんなことないって!」
僕の通う中学校、月光冠学園中等部でも終業式も終わり、学生は一目散に外を目指して下校していた。
勿論僕もその一人であり、友人である白木華憐と共に正面玄関へと向かう階段を下っていた。
先ほどから僕という一人称を使ってはいるけれど、男ではなくれっきとした女。
黒髪は手入れが面倒になるほど長く、お嬢様と言われてもおかしくない容姿をしている―らしい。華憐曰く。
僕自身はそんなに思っておらず、しかもお嬢様どころか母と二人暮らしの貧乏人だ。
父は生まれたときからおらず、それとなく聞いてみたところどうやら離婚しているらしい。
働き手が少ない影響で学費も怪しく、町の援助を受けて学校に通わせてもらっている。
一方で、華憐はショートカットの似合うかわいい女の子。
元から明るめの茶色の髪が明るい彼女にとても似合っていて、僕もひっそりと憧れている。
僕は割とくせっ毛なところがあるから、髪の自重で何とかまっすぐになっている状態だ。
特に特徴のない一般人でありながら成績もよく、恐らくテストでは毎回上位に入っている。僕はたぶん真ん中の上くらい。
最も、本人は謙遜して言わないけど。そういうところが素敵なんだよなぁ、と思う。
僕らの関係は友人であり、幼馴染。
互いの事なら大体知ってるし、家同士の交流もある。
部活動は同じ演劇部、この前のオリジナル劇では二人で主役の双子を演じた。
ちなみにそこそこの出来だったらしく、人数の少ない弱小部ながらも学校から表彰してもらった。
部長は意外にも僕、副部長が華憐。ぶっちゃけると三年が僕と華憐だけで、二人でじゃんけんして僕が負けたというだけなんだけど。
あの時の華憐のはしゃぎ顔は正直可愛かったので、悪くないとも思ってる。
僕らも受験生だし、そろそろ部活に顔を出すのも終わりにしなければならない。
でも、二人とも考えることは同じで―まだ、もう少しだけなら構わないだろう、と。
もともと部員数も少なかったのだ、二人も抜けたら後輩たちがかわいそうだろうと残っている。
僕と華憐は同じ高校を受けるつもりで、月光冠学園高等部への進学を考えている。
というのも、なぜか月光冠学園はエスカレーター式ではなく、初等部から中等部、中等部から高等部へと進学のたびに受験しなければならない。
こんなふざけた学校、日本中を探してもここくらいだと生徒はみんな思ってる、はず、だ。少なくとも僕と華憐は思ってる。
「もう勉強はじめなきゃかな?」
「多分ね…じゃあまた明日ね、唯」
「うん、ばいばい華憐」
他愛もない話をして華憐と別れ、靴を履いて校門を出る―はずだった。
そうはいかなかったのは、ある一人の少年が原因だった。
「お迎えに上がったぜ、月姫様」
―いや、お前誰ですか。
本日は私の誕生日となります。しかも3時28分生まれ。
せっかくだしと予約投稿で(笑)ちょうど近かったですしね(現在3月9日)
卒業式まであと1日、高校の合格発表が5日…どうなっているかは投稿された時点では判明している、はず。
次話投稿で結果発表しますね!(twitterの方が早いかも→@tsukuyomi_aika)




