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11.永遠普遍4

「あのねえ……」

 力、抜けるんですけど。


「俺は、大真面目に言ってるけど? 」

 平然と、そういうことを、よく、言えるよ。


「真弓先輩にばれちゃって、部活どうするの」

「どうもしない。今まで通りだよ。

 真弓はこのネタで本当は俺をぎゃふんと言わせたいんだろうけど、無理だなあ。俺はあいつの弱みを握ってるから」

 また、悪い顔してる。


「なんて。冗談だよ。

 真弓はけっこう応援してくれてるよ。部のメンバーにばれないように、協力してくれてるの、気付かない? 」

「そうなんだ」

 知らなかった。真弓先輩、何にも言わないんだもん。あ、でも、あたしが必死で内緒にしようとしてるから、知らないふりしてくれてるんだろうな。何にも言わないでいてくれてるんだ。


「花火した時に、真弓が富士山の話をしてくれたって言ってたろ?

 富士宮にでも焼きそば食いに行ったんだろうな。誰と行ったんだろうな」

 せんぱいはというと、さっきから、何か浮かれてるみたい。すごくうれしそう。そういえば、ずっとすかっと晴れたように笑ってばかりいる。

「せんぱい、何かいいことあったの? 」

「そりゃ、だって! いいことは、ここで起こってるよ。

 合宿が無事に終わって、大きな事故もなく、地獄から解放されて」

 しみじみと言い、そこで、言葉を区切り、あたしの真ん前までやってきた。せんぱいのきれいな笑顔が、あたしを甘く刺す。


「そして、今は目の前に、あずがいるんだから」


 当然、部室が蒸し暑いからだけではなく……。顔が、とても熱い。熱くてたまらない。こういうこと、 どうして、照れもせず、言っちゃうかな。


 せんぱいは、あたしを引き寄せた。


 言葉は、必要もなく。


 この空間は、時間が止まってしまったみたい。


 あたしの頭を大きな手の平がやさしく何度もなでた。


 あたしは、1週間ずっと一緒にいたというのに、どこかでせんぱいに飢えていたみたい。


 せんぱい。

 せんぱい……。

 もっともっとせんぱいを感じたくて、あたしは思いっきり、ぎゅっと強く抱きしめた。


 せみも、楽器も、どこかに飛んで行ってしまうくらい。やさしく幸せな時間。

 見たことのなかった姿をたくさん見ることが出来て。あたしは、ますます好きになってしまった。

 せんぱいが右手を外し、あたしのあごにそっと触れた。そして、顔を上向かせた。

 せんぱいの瞳は、すっごく穏やかに、あたしを見つめていた。日に焼けた顔が、いつもより、大人びて見える。


 涼しげな目元が、愛おしそうにほほ笑みかけてくれたので。


 うれしくなってあたしも満面の笑みで返した。


 せんぱいが、大好き。


 とってもとっても大好きで。感謝で。尊敬で。目標で。励みで。もう、胸がいっぱいだよ。


 せんぱいに出会ってから、今まで知らなかった感情がたくさん湧いてくるようになった。


 こんな自分もいたなんて知らなくて、驚いたり、戸惑ったり、不安になったり、自分で自分についていけなくなりそうになったり。自分の感情に、見なかったフリしてみたり。

 でも、今回の合宿を通して、たくさん学んだ中で、あたしが1番はっとしたこと。


 あたしはやっぱり、あたしらしくやっていこう。


 結局、そういうこと。


 ついていけなくても、逃げたり、見なかったフリをするのは、やめよう。自分を見つめ、負けないで勇気を出して、踏み出してみよう。


 今、あたし、すごく気が大きくなってる。つらい合宿を乗りきった達成感が、いっぱいに広がっていた。


 ダイタン。何でも出来る気がする。一生懸命なせんぱいや、みんなの姿に、刺激されたからかな。





 せんぱいの瞳。じっとあたしを見つめてる。

 あたしだけを、いつも見つめてくれている。


 視線が絡み合い、もつれ合う。お互いがお互いを捕える。炎がともったこころが、じんじんと熱くなり、愛おしさがどこまでもどこまでも広がってゆく。


 あたしは、静かにまぶたを閉じた。

 そして、あたしの唇に、せんぱいの唇が、そっとやさしく重なった。


 時が止まってしまったみたい。

 口づけが深まってゆく。

 唇をずらしたせんぱいから、熱い吐息が漏れた。

 あたしは、幸せの真ん中にいて。

 急に泣きそうになって、せんぱいにすがりついた。


 この前、空を見上げた時は、このひとと、同じ方向を見て行けるか分からない、と思ったけど。

 今は。

 見てみたい。

 どんな未来が、待ち受けているのか。

 一緒に、同じ方向を向いて行けたらいい。

 そのために。

 あたしはあたしらしく、進んで行こう、と心から思う。

 このひとがいるから、がんばろう、と強く思う。





 永遠普遍。


 あたし達のミライ。



                           お わ り

 

最後まで読んでくださって本当にありがとうございました!!


この一カ月ちょっと、とても楽しい気持ちで投稿することができました。段々と読んでくださるかたが増えていったのも、すごく励みになりました♪

二人を応援してくださって、感謝の気持ちでいっぱいです。


明日から、あずちゃん達のこの物語を投稿できないは、やはり寂しいですし、ここまで読んでくださった方達との繋がりも途絶えてしまうのは悲しいです(>_<)もっともっとパワーアップして、大好きなお話を書けるようがんばります☆


よろしかったら、感想やご意見などお聞かせください(*^_^*)


新連載で、『ナナカのファンタスティック大作戦!』を投稿し始めました。

すっごく元気な女の子が主人公の物語です。

こちらは『パフェ』と違い、今のところ更新はゆっくりですが、もし読んでいただけたら嬉しいです。


これからも、いろ~んな物語を書いてゆきたいと思います。


また出会える日を楽しみにしています。

最後までおつきあいくださり、本当にありがとうございました。

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