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第九章 密談

 「一平さま…」

 帳の外から声がかかった。隣室に控えていた侍女だ。

「どうした?」

「中将どのがお見えになりました。お目通りを願っておいでですが…」

「ああ…」ナシアスか、と一平は頷いた。「通してくれ」

 侍女に返答を返し、エメロードに向き直る。

「姫、申し訳ないが、少々失礼します」

「お仕事なのでしょう?どうぞお構いなく」

 中将、と聞いて軍の話だと察したエメロードは、パールのいる授乳のための部屋へ移ろうと踵を返した。

「おい。相も変わらず唐変木だな、おまえは」

 背後から一平のとは別の声、しかもずいぶんと意外な口調の声が降りかかって、エメロードは足を止めた。


 その時にはすでにナシアスが入室していた。侍女から中にテトラーダの姫がいることを聞いていたのか、入室して一目で見てとったのか、一平の行動を開口一番非難している。

 いきなり罵倒された当の一平は何が何やらわからない。

 現在中将のナシアスは、もうひとりの中将と一日交代で守人の一平の指示を仰ぎに右宮へ出向くことになっているが、今日はその意味では非番の日だった。しかも、ここは守人の執務室ではない。深奥部にある私室の一部だ。当然用事は中将としての内容であるとは考えにくく、一平は中将と言うよりは親友のニュアンスが強いナシアスの来訪だと捉えていた。


 だとしても、今のナシアスの言は唐突で訳がわからない。目を白黒させて辟易するしかない。

「大事な隣国からの客人を置き去りにして部下の用事を優先してんじゃねーよ」

 そう重ねられた言葉で、ようやっと事の次第を飲み込めた。

 確かにナシアスの言うのは道理だ。

「そう…そうだな…。いや。申し訳ない。エメロード姫…」

 思い直して振り返った一平の目に映ったエメロードは腰を抱えてクスクスと笑っていた。



「姫…」

 何がそんなにおかしいのか、と一平はうろたえる。

「…あ…ごめんなさい。つい…」

 と言いながらも、笑いを堪えながら言葉を発する。

「…あは…いえ、一平さまのうろたえた様子があまりにもいつもと違うものだから…」

 いつぞやテトラーダでからかった時を思い出し、一平の弱点とも言うべき部分を垣間見て、心が和むエメロードであった。

 そのエメロードにナシアスは真面目な顔で向き合った。

「ご歓談中のところを大変失礼申し上げた。私はナシアス。不束ながら、トリトニア軍の中将を務めさせていただいております。なおかつ、この一平どのの親友でありまして、そのため気安い口を利く栄を得ている次第ですので、お聞き苦しい点はご容赦ください。どうしても急ぎお耳に入れなければならぬことがあり、参上いたしました。少しだけこのぼんくらをお貸しいただけましょうか?」

 ―ぼんくらァ?―


 唐変木だの朴念仁だの言いたい放題言ってくれるが、今度は『ぼんくら』ときた。一平は怒るよりも呆れた。全く、育ちがいいくせにナシアスは口が悪すぎる。それもいつものことであり、本心では一平のことを好敵手と認め、主として剣を捧げてもいることなので頭にはこないが、エメロードには受けがよすぎた。

 どうやら笑いのツボにはまってしまったようで、ナシアスの畏まった物言いに含まれる毒舌に再び心をくすぐられて、くすくす笑い始めた。


「…面白い方ね。…もちろん、よろしくてよ。私はもう一度アスラン君のお顔を拝見させていただいてくるわ。実を言うと、授乳の仕方にも興味があるの」

「恐縮です。すぐにお返ししますので」

 エメロードが会釈をして再び子ども部屋へ消えると、急に真面目な顔つきになって一平は訊いた。

「場所を移すか?」

「いや、報告自体は短い。聞かれはせんだろう」

「深刻な話か?」

 中将としてわざわざ守人の私室まで来たのだ。来客中にも拘らず。それなりに緊急の大事な要件と思われた。



 案の定ナシアスは面を引き締めている。

「ガラリアが動いた」

「何?」

「トリーニで一悶着起きている。そもそもは物見処の要員が酒場でガラリア人に剣と金子袋を盗まれ、喧嘩になったのが発端だ。それだけならよくある話なんだが、よくある話なだけに、被害者もそこここにいたんだな。周りにいた連中まで飛び火して、大騒動になっちまった。

 トリトニア軍(こっち)も収拾のために出向いたが、ガラリア軍(あっち)にもいち早く知らせが行ったらしく、現場で軍人同士が鉢合わせしたんだ。もちろん双方自分の国の人間を弁護する。あわや一色即発のところをピアソラ長官の機転で難を逃れた、と言うところだ」


「それは…相身互いだな。うちの方も軽率でなかったとは言い難い。窃盗事件の真偽はともかく」

「ああ。確かに。ピアソラ長官がいなければ大変なことになっていた」

「トリーニでは窃盗が多いと聞くが、そんなにひどいのか?」

「らしいな。最近では特に。何が原因だろう?」

「ガラリアはトリトニアをよく思っていない。特にオスカー陛下が即位してからはガラリアのやっかみが強く、下々の者にも影響していると言うからな」


 裕福な者から盗み取ればよいと貧しい者は思うらしい。

 資源に乏しく寒さも厳しいガラリアは、山ひとつ隔てただけで気候もよく温暖なトリトニアを妬ましく思っていると言う。

 それは建国以来胸に燻る思いであっただろうが、若干十四歳で王となったオスカーが実直で英断と誉れも高く謳われては、風采が上がらず、国民に人気のないガラティスとしてはかなりやりにくくもあったろう。権力にもの言わせて女性を侍らすようになったのも、自分の位置を保ち続けるための手段であったのだろう。


 そう考えると気の毒ではあるが、同情するには値しない。

 仮にも一国を治める王であるのだ。己の品格が、考えや政策が国民に与える影響を自覚し、自身を律して対処しなければならない。そういう難儀な役割を全うするからこそ、最上の地位と待遇が得られると言う正負の法則を弁えずして、人の上に立つ資格はないのだ。

 あまつさえ、ガラティスは己の欲だけのために隣国の姫を攫い、破廉恥な振る舞いに及んだ。国主としてどころか、人間として下の下である。



 そのような施政者の下で国民が幸せであるはずがなく、貧しいなりにも国民の生活をよくする政策を執らず、寒さ対策にも重きを置かず、困ったことには魔術頼みの向上心のまるでない淀んだ国に蔓延るのは薄汚い野望だ。そして、人生を悲観して諦めきったやる気のない民、とりわけ若者が荒んだ心を持て余して非道に走るのだ。

「こういうことが続くと…いずれ戦端が開かれることになるな…」

 ナシアスが言った。

 

 今は何とか均衡を保っているが、火種はどこにでも転がっていると見てよい。パールのことでガラリアと一戦交える覚悟を決めていた一平ではあったが、国民のことを考えれば戦になどならない方がいいに決まっている。先のレレスクとの戦では、些少ながらトリトニア軍にも殉職者が出たのだ。それは避けたい。

 一時は頭に血が上りきった一平だが、日数も経ち、様々なことを冷静に考えられるようになると、戦だけは避けねばならないと痛感するに至った。どんな末端の兵士にも愛する家族や仲間や恋人がいるのに違いないのだ。彼らの幸せを奪うも守るも、一平の采配ひとつにかかっていると言ってもよいのだから、慎重にならざるを得ない。


 鎮痛な面持ちで一平は言った。

「ガラリアには…一応使者を飛ばしておこう。こちらの軽挙妄動を詫び、お互いに疑わしきに及ばぬよう、国民に啓蒙するべしと」

「それは必要だな」

「それと同時に軍規の見直しを行おう。要職についている者にも、初心に返って軍規を再認識し、各々精神鍛錬の修行に励むようにと。急ぎ各物見処に通達しろ。早速今夕にも見直しの作業に入るぞ。四時に将校を集めてくれ」


「了解。陛下には?」

「オレが知らせる。少しここで待っていてくれ、すぐ戻る」

「ここで?」

 意外に思い、ナシアスが確認した。

「ああ。すぐエメロード姫が戻ってくるだろうから、相手をしてやってくれ」

「すぐ?何でわかる?」

「多分…パールは寝ている。授乳中に睡魔に襲われて」

「なる…」

 さすがは天下のおしどり夫婦である。

 一平がオスカーの元へ出かけてすぐ、ナシアスは一平の予言が的中したことを痛感するのだった。


 

 パールと懇意なだけあって、エメロード姫も無邪気で屈託のない女性だった。巫女姫と言うから、もっと楚々として捉えどころのない神秘的なイメージを勝手に作り上げていたが、あにはからんや物怖じしない話しやすいタイプでナシアスには意外だった。客人を放り出して子どもと寝てしまったパールを「ひどいわ」と評しながら、「でもかわいいの。赤ちゃんが二人いるみたいだった」と、さもおかしそうに言うのである。

 ナシアスは女性なら誰でも受け入れる主義なので、話し相手になることには何の抵抗もなかったが、可愛い人でよかったと相好を崩した。


「姫も…そう思われますか?某も常々、パールティア姫は赤ちゃんだなぁと…」

「ま。主君の奥方様をそんなふうにおっしゃって!」

「あいつの前で言ったら、首を絞められますがね。某としては、己の妻にはやはり色気のひとつも欲しいところで、あいつの趣味を計りかねているんですよ」

「お二人はお似合いよ。同じ空気を持っていらっしゃる。清らかなオーラを放っていらっしゃる。どうあっても、お幸せになっていただかなくては…」

 

 エメロードの声が少し曇る。ナシアスは聞き咎めた。

「何か…気になることでもおありですか?」

「……」

 気持ちが沈んだのを敏感に悟られて、エメロードは押し黙った。

 このナシアスと言う男もただ者ではない。

 一平と親友だと言うトリトニアの中将。守人直属の一の部下。

 一平との親密さも間近に見た。

 この男に話しておこうか。

 頼んでおこうか、あのことを。

 エメロードはしばし逡巡した。


 言葉を発せぬエメロードを気遣い、ナシアスは明るく言った。

「あの二人は幸せですよ。特に今は最高潮じゃないかなぁ。待望の我が子に恵まれて、蜜月の日々を送っている…」

 その通りだ。だが、この後は…。

「ナシアスさま!」

 エメロードはキッと顔を上げた。

 その表情の厳しさにナシアスも思わず後退る。

「お願いがあります。あなたを、一平さまのご親友と見込んで。あなたの一平さまへの忠誠を信じて。誰にも話せないでいる私の杞憂を振り払う術を、あなたに託します。聞いていただけますか?」



 真剣に詰め寄るエメロードを真顔で見つめ返しながら、ナシアスは自分の心にエメロードの不安と憂いが滑り込んでくるのを感じていた。

 彼は頷いた。頷かざるを得なかった。女性の必死の頼みを無碍に断るなど、彼の辞書にはない。

「なんなりと…」

 あっさりと許諾を得て、エメロードは今にも泣き出しそうに瞳を潤ませた。

「…ありがとうございます。でも、あなたしかいない。知っていながら手を拱いて見ていることはできない。だから許してください。私のわがままを…」


 あまりに抽象的で訳がわからない前置きを、ナシアスは遮ったり問い返したりはしなかった。こんなことは女性にはよくあることだ。彼にはまだ余裕があった。

「そしてもうひとつ…これからお話しすることは誰にも言わないでいただきたいの。一平さまにもパールにも、お二人のご両親にも…。あなたひとりの胸に収めるつもりで聞いてください。彼らの耳は入れられないのです」

「…わかりました。誓って、このナシアス、他言いたしません。安心してお話しください。だが、ならば急がれた方がいい。もうほどもなく、一平は主宮から戻って参りましょう」

「はい、では…」



「私はテトラーダの巫女姫として修行を始めたばかりですが、実はかなり前からオーラを見ることができました。夢見の力はまだなかったのですが、先般これにも目覚めてしまったようなのです。パールと一平さまのお二人がテトラーダを訪れてくださった折り、私は一瞬ですが垣間見てしまったのです。バールが赤ら顔の男に弄ばれる様と、一平さまの胸で涙する姿を」

「それは…」

 実際に目にしてはいないし、一平からもそこまで詳しい話を聞いていないナシアスでもわかった。それが何を意味するかを。


「確認することはできません。私には到底できない。けれど…あれはおそらく真実です。あろうことか、私の初めての夢見は親友の不幸を予知することだったのです」

 それだけでもエメロードが他言無用を強いたわけがわかった。ナシアスは我知らず、眉に皺を寄せてエメロードの話を聞いていた。

「幸いなことにお二人は無事戻られた。かわいい赤さまも無事でした。けれど、私はあの時、未来が見えても何の力になってあげることもできませんでした。告げることすらできない。そんな酷いことを…どんなにか心配し、心を痛めているであろう一平さまを奈落に突き落とすようなことを…どうして告げられましょうか…」



 理路整然と話していたエメロードが言葉を詰まらせる。涙を滲ませる。だが、ここまではまだ過去の話。明らかに彼女の最も悲嘆するところには辿り着いていない。痛ましい姿だが、彼は先を促した。

「姫…」

 緊張を含んだ厳しい声に、エメロードは失いかけていた理性を取り戻す。

「…ああ、ごめんなさい。私ったら…」涙を拭い、彼女は顔を挙げた。「そう。見えたのはそれだけではないのです。私には、もうひとつのビジョンがはっきり見えたの。パールが岩場に横たわって、小さな声で歌を歌っている…。それを見下ろす一平さまの表情がすごく辛そうで切なくて…。―不吉―と、私は思ったの」


「それだけで?オレにはそこまで不吉とは感じられないが。そもそも一平の奴は姫さんの体調に関しては過保護すぎるくらい心配性だから、そのくらいのことは日常茶飯事なのでは?」

「本当に、そうならよいのだけれど…」

「姫。姫が不吉と言われる根拠は一体何なのです?」

「私にはオーラが見えると言ったでしょう?その夢見の中のパールのオーラが、いつものあの美しさではなかったのか」


『あの美しさ』と言われても、オーラを見ることのできないただ人のナシアスにはどのようなものか実感できないが、海人の常識としてはわかっているつもりだった。ナシアスにとってもパールは身近な人だ。オーラのことは折りに触れ、話にも出ていた。

「いいえ、美しいことは美しかったわ。でも、その範囲が尋常ではない。どす黒い闇に侵食されて…今にも消えてしまいそうに…」

 自分にもその闇が襲いかかってくることを恐れるように、エメロードは己の二の腕を抱え込んだ。



「それは…もしかして死相と言うものなのですか?」

「‼︎…」

 言いたくない、聞きたくない一言を言われ、エメロードは一点を凝視して固まった。辛そうに目を閉じ、顔を引き歪めながらも、黙って頷いた。

 応えを得たナシアスの方にも一言もない。

 どのぐらいの時間だったのか。二人は無言で佇んでいた。

 やがてナシアスが先に口を開く。

「…わかりました。…よく…話してくだされた。さぞかし、お辛かったでしょう」


 泣きたいのを堪えて肩を震わせているエメロードを見下ろし、労わるようにそっと肩に手を置いた。

「お任せください。オレにとっても誰より大事な二人だ。もし、そのような運命が待ち構えているのなら…どうあっても阻止しましょう。オレの力の及ぶ限り…」

「ナシアスさま…」

 頼もしい対応を得て、エメロードは縋るような眼差しを向ける。

「大丈夫ですよ。オレの力など大した事はないが、一平の奴はすごい。あいつが、まずそんなことにはさせないでしょうよ。己の命を削ってでも」

「そんな…」


 命を削る、と聞いて、エメロードはおののく。できれば一平にもそんなことをさせたくはないのだ。

「大丈夫ですって。オレがそばにいますから。オレはあいつの役に立つと決めたんです。故国も身分も地位も…とうに捨ててもいいと思い定めたんですから。信用してください」

「もちろん信じていますわ。あなたのオーラも温かい。情熱の赤よりも冷静の青が強い。…見た目より中身は冷静で思慮深い方でいらっしゃるのね」

「そんなことを言われたのは初めてですが」

 陽気に明るく、ナシアスは言った。

「私にはわかるわ。あなたは一途な人。こうと決めたら決して揺るがないのでしょう?女性に対しても…」

「そうでもないですよ。オレはどんな女性でも好きですからね。今は姫、あなたが素敵だなと思っている…」


 告白じみたことを言われたエメロードだが、舞い上がりも感動も、狼狽えさえしなかった。

「ありがとう。社交辞令と受け取っておくわ」

 自他ともに認める女たらしのナシアスにとってこの反応は滅多に経験できないもので、それが却って彼の心の琴線に触れた。彼は弁明した。

「誤解は困る。これは本心です」

「だからありがとう。どの道私は巫女ですから。お気持ちに応えることはできないわ」

「巫女が何です?同じ人間じゃないですか。恋愛して何が悪い」

「だって…」



 純潔を第一とする巫女に結婚は許されない。子どもを持つことも、それに繋がる行為も…。

 それを言うとナシアスは平然と言った。   

「でも心は止められない」

「ナシアス…さま…」

 エメロードは初めてうろたえた。ナシアスの熱い視線が心に食い込んでくるようでいたたまれなかった。

 そんなことを言われても困る。

 あの事件が起こるまでは、エメロードも好きな人との結婚を夢見ていたのだ。だが、あれを契機に彼女は諦めた。自分の望みを。断腸の思いとまでは行かなくても一大決心だったのだ。それをなぜ、この男は穿り返すのか。やっと、割り切って考えられるようになってきたところだと言うのに。


 エメロードは必死に拒絶するための口実を探した。

 ナシアスに毅然とした態度を取ることができない。彼はエメロードを懐柔しようと迫ってくる。もうすでに身体は引き寄せられ、手を握られていた。

「…私は…私は皇女よ。それでも?」

 皇女であることで退いて行った男たちをたくさん見てきた。これで諦めてくれるかと思った。

「オレはジーニアス陛下の甥だ。でもそんなの関係ない」

「ジーニ…あなた、トリトニアの人じゃないの?」

「言ったろう。国は捨てた」


 なんと潔い。

 そして、なんと行動力のある人か。

 エメロードも確かにナシアスに惹かれていた。

 その男気溢れる優しさも知っていた。

「私も…あなたのようになりたい…」

 しがらみを全て振り捨て、己の思う道をまっしぐらに突き進む。そんな人生が送りたいと、エメロードは思った。

「姫はそのままでいい…」


 ありのままでいい、と言われ、涙が堰を切って溢れてきた。

「辛いことがあったら、何でもオレに言うがいい。オレも妻など貰わぬから。安心して恋しろ」

(なんてうぬぼれや…でもそれも素敵…私、この人を好きになりそう…)

 解放された心がナシアスを受け入れた。

 エメロードは、いつの間にかナシアスに身を預けて口づけを交わしていた。

 主宮から戻ってきた一平はこれを一暼するや叫んだ。

「ナシアスーっ!!この、女たらしが‼︎」

 親友の悪癖を叱責しただけなのだが、とんだ道化であった。



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