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「待て待て待て!!!俺はロリコンじゃない!!!」


俺が通報する素振りを見せたら慌てて止めて来た。


時折遠い目をして俺を見るのは、葉月姉ちゃんを思い出してるんじゃなくて俺をロリに見立ててたんですね。


横に一歩動き、麗奈を俺の後ろに隠す。麗奈も腰を落とすと俺の肩に手を置いて俺の頭の後ろから顔を出して雪兄を見ている。

俺は関係も顔も引き気味にして雪兄に言った。


「犯罪者はみんなそう言うんですよ。お分かりですか?桜雪人さん」


「悠太ぁ……俺は犯罪者じゃないんだぁあ……信じてくれよぉ」


雪兄は膝から崩れ落ちた。ふざけすぎたな、ちょっと哀れに思えてきた。

「分かってるよ。隠すから少しふざけただけだ。どうしたんだ、この子」


「この子って貴女小学生ですよね。私とそんなに身長も変わりませんし。タメ口で桜さんに失礼ですよ」

雪兄の後ろから、女の子が俺を非難する声を上げた。

女の子の切れ味のある毒舌は俺の胸に深く突き刺さっり、雪兄と同じく俺も膝から崩れ落ちた。


……俺は小学生じゃない。れっきとした高校生だ。


「ちょ、ちょっと、崩れ落ちなくてもいいじゃないですか。ごめんなさい。言い過ぎましたか?」

「千秋……こいつは高校生だ」

「……えっ」

空気が、静まり返る。若干1名別の意味で静まり返ってるけど。それは声が出ないからで、本人は小憎たらしく息だけ漏らして笑っている。


「ごめんなさい……私と身長が同じくらいなので小学生かと思っちゃいました」


謝られると尚悲しくなるめんどくさい俺。

この子が中学生じゃなかったらマジギレしてるところだ。


「いいんだ。俺ちいせぇから……」

「女の子がそんな乱暴な言葉遣いしちゃダメですよ?折角可愛いのに勿体ないです」


女の子の放った言葉は、俺の弱りきった心を折るには充分すぎる威力を持っていた。


今日は女装してないのに……くすん。

「麗奈ぁ……俺もう帰るぅ」


これ以上この場に留まり続ければ俺は本当に泣かされることになるだろう。自分より年下の女の子に。

高校生の俺が中学生の女の子に口で負かされるわけにはいかない。これは戦略的撤退であって逃げ帰るわけじゃないんだ。

……つまり俺はまだ負けてない。


「ご、ごめんなさい。私何か言っちゃいました……?」


踵を返し、雪兄の家を立ち去ろうとした俺の手を、女の子が握った。

この後に及んでオーバーキルをする気か?この子は鬼か。

「あのな……俺は高校生で、男なんだよ……」

自信はないけど、と蚊の鳴くような声で付け足したが届いているかどうかは不明だ。

目の前の女の子は目を見開いたままフリーズ。


「雪人さん……これは、ドッキリですよね……?」

「残念だけど本当だ」


雪兄がなんとも気まずそうな顔をして、女の子に告げた。静かな玄関前に、なんとも居た堪れない空気が走った。

女の子はなんて謝ったらいいか分からないと言った顔をして沈黙している。


俺よりも数段しっかりしてそうなこの子に気を使わせるのもなぁ。

雪兄の家に居るって事はこれから先も顔を合わせるかもしれねえし、出来れば仲良くなるに越したことはない。


「気にすんな、俺は春日悠太。雪兄の弟見たいな感じ。そこで腹抱えて笑ってるのが麗奈。よろしくな!」


気を取り直して挨拶をする。きっと俺は上手く笑えているはず。

女の子は顔を俯かせ唇を噛むと、俺に向き直って口を開いた。

「勘違いしてすみませんでしたっ。私は二宮千秋と言います。今年小学六年生になりました」


………………は?

「……冗談、だよな?」


「……いいえ」

おい。俺から目を背けんな。

「あれだよな?お前が特別でかいだけだよな?学校で1番背が高いんだよな……?」


自分と同じくらいの身長の千秋に、縋るように問いかけた。

これが普通だったら俺は……。


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