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76頁


3分ぐらいが経った。麗奈も逃げ切っただろうし、そろそろ次の段階に移るか。

せいぜい驚け、コケ脅しだったかどうか、俺ですらこれで分かるんだからな。


「そろそろ良いだろう。手に持った拳銃を捨てろ」

それが貴様の最後だと言った内藤は、気色の悪い視線を俺に向けた。

目で下から上まで舐めずり回し、それから命令した。


「わかった」

俺は内藤に向けていた拳銃を真上に向ける。

そして油断させるために一瞬、指を離す素振りを見せた。握り直すと、そのまま上に向けて引き金を弾いた。

「なっ!!」

倉庫内に乾いた炸裂音が響き渡る。遅れて倉庫の天窓が粉々に割れた。

元々ヒビが入っていたのか、大小、まばらなガラスが空から降りそそぐ。

ナイフを当てていた男も、内藤もその場にいた全員が炸裂音に驚き、天井を見上げ、動けないでいた。

俺自身これが本物だった事に驚きだが、この僥倖、見逃すはずがない。

体を回転させ、銃床でナイフを弾き飛ばす。男が慌てて我に返るが、捻りを加えた蹴りを肝臓がある辺りに放つ。

「ぐえっ!」

急所を突かれた男は体をくの字に曲げ、頭を下げた。

そこにもう一撃、コメカミを銃床で殴ると、男は悶絶しながら倒れた。


「きさまぁ!!」


麗奈にナイフを当てていた男が正面から飛び出してきたので、拳銃を投げて牽制。拳銃が額に当たり怯んだところを鼻っ面に飛び膝蹴りをくらわせてノックダウン。


「タダでは怪我してやんねえよ!!!かかってこい!!」


沙織さんたちが来るまででいい。時間稼ぎだ。

外でも喧騒が聞こえ始めたから時期に来る。


「生かして捕らえろ!!生きてれば何をしても構わん!!」


内藤が喚き散らしながら下がった。お前は最後だ、じっくりと痛ぶって地獄を味あわせてやる。


「くらえぇ!」

次の男が俺に向け拳を放つ。

「…………ぉぉおっ」

放たれた拳を避け、股間に前蹴りを食らわせた。

効果音を付けるとしたらぐしゃり、男なら絶対受けたくない攻撃、俺も普段ならやらないけど今はなりふり構ってられない。


ここで、一斉に取り囲んで攻撃を放ってきた。

「……ぐっ」

1人でも多く、1人でも多く。


次々と俺に向け放たれた拳、蹴りが俺を痛めつけてくるが、俺も約束を果たすため、避けられる攻撃は避けながら急所を狙い、突きや蹴りで応戦する。


「この、クソガキが!!!」

だが所詮は多勢に無勢。瞬く間に制圧されてしまった。

床を這い、背中を踏みつけられ、それでも立ち上がろうと抵抗すると蹴られ、仰向けになった所をまた踏まれた。


「……っ」

身体中が痛い。でも負けられねえ。

琥珀さん達が来るまで抵抗を続ければ人質に取られる事は無い。

「いでぇ!!!何しやがる!!!」

男は堪らず足を上げた。俺が足の肉を思い切り引っ掻いたからだ。


「おおい!とまれぇ!!!」

声を上げたのは俺じゃない。

突然響いた声にその場にいた全員の動きが止まった。

血濡れの男が、鬼気迫る形相で内藤の後頭部に拳銃を突きつけていた。


「その男の子にも近づくな!!各自下がれ!この男を殺すぞ!!!」


何故が俺を庇うんだ、こいつは内藤の部下じゃなかったのか……?


部下達が俺から離れ、代わりに内藤を引き摺り近づいてきた。


「君……立てるか?」


全身の痛みを堪えて何とか立ち上がった。


こいつの意図がわかんねえ。隙があれば麗奈を殴ったこいつも、内藤も纏めてぶん殴る。


「すまなかった……妻と娘を人質に取られててね」

懐疑的な俺の態度を見た男が言った。

男の目は内藤に対する殺意が滲み出ている。


まさかこいつ、麗奈や神田さんにしたように、この男の家族も……?


「そうだぞ、娘の純血まで散らしてやろうか?おい!誰か連絡を入れろ!」


内藤が馬鹿な事を叫んだ。今、ここに血濡れの男を止められる人間がいないにも関わらず。

つまりは自殺行為、こいつは本当の馬鹿だ。


「死ねこのゲスがぁぁあ!!!」

「ひぃい!」

勿論妻を汚された、この男が激昂しないはずもなく、男は雄叫びをあげると迷わずに拳銃の引き金を引いた。


だが、怯える内藤の頭から血が吹き出す事は愚か、消炎を上げることも拳銃から弾が発射されることも無かった。


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