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蓮さんにキーホルダーを渡そうとした時、手が滑り、キーホルダーが手を抜けテーブルを転がり床に落ちた。

「あ、蓮さんわりぃ」

 椅子を引いて身をかがめ、テーブルの下を覗くが見つからない。

 どっか転がって行ったのか?でもそこまで小さいものじゃないからすぐに見つかりそうなんだけどな。


 椅子から降りてテーブルの下に潜り、床に手を着いて本気で探す。床には落ちてないのか?

 視線を少し上げると、蓮さんのパンツストッキングに包まれた御御足の間のその先、椅子の足にくっついていた。

 夢中になってキーホルダーを探してたから気づかなかったけど俺大分ヤバいことしてるよな。

 女性が4人座っているテーブルの下に潜る男。咎められないのが奇跡だ。い、良い香りがする。


「蓮さん、椅子の足にくっついているよ」

 

 俺が取りに行ったらセクハラになるので暗に自分で取るように促す。

「ふふふ、取ってくれる?」

「ごくり」


 幼馴染の母親相手に何をドキドキしてるんだ、俺は。大丈夫、あと一歩前に出て、呼吸を止め、視線を逸らし、後は真っ直ぐ手を伸ばせばいい。


 見ては無いけど、見ては無いけど、恐る恐る手を伸ばす。


 横目で足に触れないよう、注意しながら足の先にあるキーホルダーに触れ、鉄にくっついているキーホルダーを剥がす。指で引っ張るとスっとは剥がれず、それなりの力を要した。磁石になってるのか……なにかに使えそうだ。


 剥がしたキーホルダーを持った手伸ばした時と同じよう恐る恐る引いていく。手首まで引いた時だった。蓮さんの足が閉じられ、手を引けなくなった。

 びっくりして視線を上に向けると、イタズラっ子がするような表情で俺を見ている蓮さんと目が合った。


 グッグッと手を引くが離してくれる様子がない。声を上げる訳にはいかない。バレたら涼夏からきっついお仕置が待っている。

 ふわっと良い香りがして肩を叩かれた、隣を見てみると隣に麗奈が居た。麗奈が人差し指を立てて俺に見せつけた。一体何をするつもりなんだ。

 麗奈は人差し指を蓮さんの脛の側面に当て、ギュッと押した。


「いったー!!」

 蓮さんの足が開かれ、俺が手を抜くと麗奈がグッドサインを送ってきた。麗奈と2人で座り直すと涼夏が冷ややかな目で蓮さんを見ていた。

「お母さん。何度も言うけどあまり悠くんを困らせたらダメだよ?ほら登録終わらせて寝よ?私もう眠たくなっちゃったよ」

 どうやら救援に麗奈を寄越したのは涼夏だったようだ。実の母を叱った娘は手を口に当てくぁっと猫のように欠伸をした。本当に眠たそうだ。


 時計に目をやると時刻は23時を迎えようとしている。

「もう遅いもんな」

 明日も学校だし。なんなら姉ちゃん達も仕事が待っている。早く終わらせて解散しよう、という事になり各自アプリへの登録を終わらせて、その日は解散する事となった。


 結局、YKとは誰のことだったんだろう。


――――――――――――――――


翌日、俺は学校でアプリを起動して麗奈の動向を探ってみた。

別にストーカーをしたいと思った訳では無い。麗奈と俺の教室では、高さは考慮せず、直線的な距離で50m以上は離れている。

なのにGPSで表示された距離は10m圏内を指している。

今は授業間の中休み中、15分くらいしか休憩時間はない。

こんな短い休憩中に麗奈が来る事は無かった。


「涼夏、ちょっとトイレ行ってくる」


「うん。私も行こうか?」


「いや、もう一人で行ける。ありがとうな」

 涼夏に断りを入れて教室の外に出て、案の定、扉の前に麗奈が立っている。

「よう。何してんの?」

 扉を閉めてから声をかけた。思わぬ俺の登場に麗奈の肩がビクついた。

 麗奈のオレンジがかった瞳が忙しなくあっちを見たりそっちを見たりと揺れているが俺とは目が合わない。


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