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「じゃあ、明日からな。くれぐれもサボるなよ。これを達成出来た時お前らの心も少しは綺麗になるんじゃないか?がんばれよー」
話を終わらせ、教室の外で待機している涼夏と麗奈の元へと歩いていく。
少しでも罪悪感があるならな。後は知らん。
そもそも姉ちゃん曰く俺が更生中の身なので人の事なんて知らん。
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教室を出たところには涼夏と麗奈以外にもいつものメンツが集まって俺に注目していた。
みんな昨日とは打って変わって、ケロッとした様子の俺に驚きを隠せないようだ。
「おお、おはよう、朝からお目汚し失礼したな」
あまりにも普通すぎる俺の挨拶は全員に肩透かしを食らわすには充分だったらしく、ポカンと口を開けた。
「事情は後で話すけど。もう元気だから気にしないでくれ」
「いやいや、気にしないでくれって言ったって昨日の悠太の様子を見てたら自殺行為でしょ」
美鈴が言うことは一理ある。俺なら自分の目を疑うね。
「仕方ないだろ。治っちゃったんだから、それよりまあ、なんつうか。みんな……昨日はありがとうな、助かった」
そう言ってお礼を言う俺を物珍しそうに弄る一同であった。
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「という訳だ。今回の件は一件落着。ってことで」
放課後保健室に全員を集めて事の顛末を話した。
ホッとした表情を浮かべる者、彼らの処遇に納得のいかない者、処遇に納得がいかないから自ら成敗しに行こうとする者もいる。
大多数が後者だ、やっぱりみんな野蛮だよな、俺怖いよ。
「待て待て待て、俺からしたら昨日の夜の出来事を聞いた時点で顔面蒼白ものなんだ、これ以上面倒事を増やさないでくれ」
俺の報告を聞くにつれ、どんどんと酒で元々血色の悪い顔を更にゲッソリとさせていた立花先生が嬉々として報復に向かおうとする戦闘狂達を諌めた。
「悠太くんは、これでいいのかしら?」
その中でも1番まともであって欲しい唯が口を開いた。
「まあ、良いだろ。それに1階から3階までのトイレ掃除とか多分結構キツイぞ?」
流石に女子トイレはさせないと思うけど、これの見張りを頼んだ時の立花先生のすんげぇ嫌そうな顔には、つい笑いそうになった。
「それに、あいつらは少し調子に乗っただけだ。この罰の中で自分を見つめ直すきっかけになってくれたらそれでいいと思うぞ。なあ立花先生?」
立花先生は、ため息を1つ吐いて口を開いた。
「そうだな……駆り出される俺としては勘弁を願いたい所だけど罰としては丁度いいんじゃないか?」
俺としてはもっと差し迫った内藤の事件の方を早く何とかしたいから、奴らの見張りをしている暇は無いんだよ。すまない立花先生。
「じゃあこれで解決って事で!アイス食べ行こー!!!」
空気を読んだ幼馴染の声にみんなが賛成の声を上げ、保健室を出ていった。
「春日……問題を起こさないように頼むぞ」
「俺も退学が掛かってるんだからそんな事するわけないっすよ。多分」
「多分じゃなくて約束してくれー!!!」
「立花先生に言われなくても春日くんだってわかってるわよね?」
「……うっす」
俺を庇う発言をしてくれた小笠原先生の言葉にギクッと反応してしまい思わず小声で返事をしてしまった。
「小笠原先生!こいつわかってないぞ!」
「春日くんはそんな悪い子じゃないものねー」
この先生、立花先生より俺に釘を刺すの上手くないか?良心に訴えられるのは苦手だ。
『悠太!アイスアイス!!(*'▽'*)♪』
アイス狂いの麗奈が俺の制服の裾を引っ張って急かしてくる。
「そ、そうだな、行こうぜ!じゃ先生また明日!!」
「春日くん。明日もいい子に登校してくるのよ」
ニッコリ微笑んで送り出してくれた小笠原先生だった。俺あの人苦手かも……。