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47頁


「私のことが嫌いになったのか!?そんなにその女がいいのか!!」

付き合っても無いくせに後方彼氏面か?後俺は男、女じゃない、何回言ってもわかんねー人だ。

『もう私の顔は悠太専用。琥珀には触らせない(o´艸`)』


麗奈の言うとおり現に俺の手は退けられていない。よし。

「いやー、麗奈のほっぺた柔らかいっすわぁ!!」

俺専用、と聞いて気分が良くなった俺は琥珀さんに見せつけるように麗奈の頬をこねくり回す。それを悔しそうに眺める琥珀さん。


「少年ずるい!私も触らせろ!!」

「うわっ」


「……ゃ」

俺を押しのけて麗奈の顔に伸ばした琥珀さんの手を麗奈が後ろに1歩下がって避けた。

「うがあーー!!!!!」

毅然とした態度で琥珀さんの手から逃れ続ける麗奈に、琥珀さんはついに地団駄を踏んで暴れ始めた。


麗奈が手の平を胸の前で構え、迎撃の姿勢を取る。そんな麗奈の態度に琥珀さんも目を細めボクシングの構えを取った。ジャブを躱されてもストレートで決める気だ。


ジリジリとすり足で距離を縮める琥珀さんとその場に立ち尽くす麗奈。堂々とした立ち姿が麗奈を強く見せているが実際の戦力差で言うとツキノワグマVSチワワ、麗奈の頭脳を加味しても相手は暴力魔王、叶うはずがない。


膝を曲げ、ツキノワグマこと琥珀さんが土を蹴って前に飛び出した。

元々そんなに離れていない距離は1メートル、そんなに力強く踏み込んだら麗奈に激突してしまう。


激突を恐れた麗奈が横に避けると、琥珀さんが片足を前にだし、勢いを無理矢理殺すと方向転換して襲いかかってきたのは俺の方。

おい、兎に襲い掛かるツキノワグマとか食物連鎖そのまんまじゃん。


「麗奈!お前がそのつもりなら私は少年の頬っぺを蹂躙してやるー!!!!」

速すぎて回避行動をしても間に合わない、まあ、殴られるわけでもないから避けなくてもいいかな。

避けるのも諦め、受け入れ体制で棒立ちの俺に迫る影がひとつ。麗奈が間一髪俺の肩袖を掴んで引き寄せた。


「……めっ」


俺を自身の胸の中に収め、これは自分の物だと主張するように首を横に振った。


「なんでだよ!どうしてだよー!!!」

なんのリスクも負わずに琥珀さんをここまで弄べるのは、世界広しと言えど、麗奈だけだろう。

「つうか、本気でそろそろ帰ろう。姉ちゃんが心配する」


中田を誘き出そうと家を出たのが20時を回った頃、多分そろそろ21時を回る頃じゃ無いかと思ってる。

ポケットからスマホを取り出して時刻を確認してみる。

「22時過ぎてるじゃねえか……」

法令で言えば高校生は補導される時間だ。

これは非常にまずいぞ、ただでさえこの作戦に大反対してきた姉ちゃんを「琥珀さんがいるから平気」の一言で説得して出てきたのに、補導されたらマジもんの鬼を見ることになるだろう。


しかも姉ちゃんはどれだけ疲れていても1人では眠れないから俺達が帰ってくるのを心配しながらずっと待っているに違いない。


「麗奈、琥珀さん。急いで帰ろう。姉ちゃんに怒られる」


言い切ると共に手に持ったスマホからピコンと通知を知らせる音が鳴り、震えた。

スマホの画面には姉ちゃんからのラインの通知が表示されている。

『まだ?』ピコン『ねえ』ピコン『早く』

俺知ってるぞ、こう言うのを巷ではヤンデレって言うんだよな……?よく見てみると通知が50件以上溜まっており、着信が20のラインが30件以上……。


「走るぞ……説教は確定だ……」

姉ちゃんの怖さを知っている麗奈はおずおずと頷き、優しい姉ちゃんしか知らない琥珀さんは呑気に頷いた。

こんなにも帰るのが憂鬱なのは、初めてかもしれない。



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