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41頁


少しずつ、少しずつ、麗奈の顔に距離を近づけていく。

ガサッと草の揺れる音がした。でてこい、見てるんだろ?


中々出てこない、このままだと本当にキスをしてしまいそうだ。

そろそろ麗奈の甘い吐息が顔にかかって、本当にドキドキしちゃうんだけども。


いかんいかん、付き合ってもいないのに流れでキスなんてしちゃダメだ。

するにしてもちゃんと寸止めしないと。


でも油断してると本当に吸い込まれるがままにキスしてしまいそうだ。


背後で大きくガサガサと草が揺れる音がした。出てきたなクソ野郎。

だが慌てることは無い、こっちには最強の護衛が付いている。


麗奈を隠すように後ろを振り向きクソ野郎に向かって構える。

全力疾走で俺に向かってくるクソ野郎の手には月夜に光る何かが。

だが慌てることは無い、こっちには最強の護衛が付いている。


クソ野郎が俺を刺そうと凶器を持った手を伸ばすが、俺に届くことはない。


「ぐべぁあ!!!」


クソ野郎の真横から赤い髪をたなびかせ飛んできた琥珀さんがクソ野郎の腹を的確に捉え、クソ野郎は車に轢かれたかのように地面にバウンドしながら吹っ飛んで行った。


てっきり取り押さえるとかそう言う類の行動に出ると思ってたけど……暴力的な事はしないんじゃなかったの?


「琥珀さんやり過ぎっすよ。クソ野郎が伸びてます」


地面に寝そべったまま動かないクソ野郎を指差して注意をするが、琥珀さんは渾身の飛び蹴りが決まって気持ちよくなっているのだろう、キラキラと目を輝かせいい笑顔を浮かべた。

「見たか少年!!」


この時ばかりはどっちが少年か分からねえな。


「見ました見ました。貴女の暴力シーン、こいつが入院したらどう言い訳するんすか?」


あくまで、手を出さない事を前提条件に立花先生と小笠原先生の了承を得たのに、この赤い髪の世話焼きな先輩は、あっはっはと豪快に笑い飛ばした。


「手は出してない。出したのは足だ」


「今どき小学生でもそんな下手な言い訳しないっすよ」


「なんだぁ!?私が小学生以下って言いたいのか!?」


ええ、体以外は小学生みたいなものだと思ってます。


どの世界に手を出さない=足技ならOKって考えの人が居るんだよ!それでまかり通るなら口約束ってもんが怖くなるわ。


クソ野郎はピクリとも動かないし、どうすんだよこれ。


「そんなこと思ってないっすよ。それよりこいつどうします?これじゃ話もできないっすよ」


「私は手が出せないから起こせない……麗奈に起こさせるのも危険だ」


琥珀さんが顎をクイと動かして行けと指示を出してくる。

麗奈から肩をトントンと叩かれ、振り向くとペットボトルに入った水を手渡された。


『琥珀なら絶対やると思って持ってきたの(/ω\)』


これをかけて起こせという事か。

麗奈からペットボトルを受け取ってクソ野郎の元に歩み寄る。

殺そうとしてきた癖に安からな顔をして寝息まで立てているやつの顔が癪に障る……ペットボトルを押し潰して勢い良くクソ野郎の鼻に出来るだけ水が入るようにしてぶちまけた。


「あぶぶぶ!ぐっふぇ!バビをする!!!」

クソ野郎が汚ねえ声を上げて目覚めた。


琥珀さんが無言で起き上がった奴の体をトンと押して地面に優しく寝かすと、体を跨ぐようにして立ち、クソ野郎を見下ろしている。

「か、片山先輩……」


クソ野郎が恥ずかしそうに頬を赤く染めた。

そのクソ野郎の顔の真横を琥珀さんの足が踏みつけた、地面の土が大きく沈み、凹みを作った。


この光景、朝も見た気がするんだけど……。

まるで奴の存在を気にもとめず、無言で地面を抉る。なんどもなんどもなんども、足で。

クソ野郎も、ひぃ!や、あひぃ!と聞くに絶えない悲鳴を上げ、体を硬直させている。

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