22頁
みんなに礼を言い、麗奈の擽りを受けて、若干センシティブな声を漏らし、おおよそ他人に見せちゃいけない表情になっている幼なじみの元へと駆け付ける。
「麗奈、そろそろやめてやれ。漏らすぞ」
エロいとは言わずに、くすぐりを制止した。くすぐりに弱い人をくすぐり続けると膀胱が緩んで漏らすと言うのを聞いた事がある。
華の女子高生がこんな所で漏らそうものなら、二度と外に出られないトラウマものだ。
「いい子だ。涼夏大丈夫か?」
麗奈から解放され、息絶え絶えの幼なじみの肩を抱いて安否確認の為、声を掛けた。
「ふあ、これは……っこれで、癖になりそう……」
肩で息をしている涼夏がふにゃりとしたエロい表情で衝撃発言をしやがった。
まったくけしからん。
何故だ、何故俺の周りは突然変な性癖に目覚めやがる。
「性癖は人の好き好きだけど、それを外で言うのはやめておけ」
でないと俺の悠太くんが暴れ出す。
無理やり施された女装をした上で浴衣からひょっこりなんて事があったら俺の方が立ち直れん。
下着を着けてるからひょっこりするなんて事はないが主張はするだろう、それだけは避けなくてはいけない。
「わか……った」
『大丈夫涼夏?ごめんね、私やりすぎちゃった:(;゛゜'ω゜'):』
「大丈夫ですよっ!むしろ……」
熱がこもった視線で麗奈を見つめる涼夏、見ろ、これで俺も幸せになるカップリングの完成だ。
2ヶ月前なら本気でそんな事を思っていただろう。
だが、何故だろう今は心が痛む。
この痛みの正体を俺は知らない、なんだこれは、姉ちゃんを失った時の感覚に似ている気がする。
てことは、手が掛かるけどいつも傍にいてくれるお姉さんがくっ付いて、自分から離れていく事に悲しみを覚えているのだろうか。
大丈夫、こいつらは俺をハブになんてしない。
だからそんな玩具を採り上げられた子供みたいな感情は持たなくていい。
『悠太、涼夏が怖いよ:(;゛゜'ω゜'):』
涼夏の熱い視線に恐怖を感じた麗奈が俺の背に隠れた。
「悪いな涼夏。こいつは俺の娘だ。お前にはやらん」
背中でギュッと浴衣を掴まれた、麗奈に頼られて悪い気はしない。
「そんなぁ……」
「す、涼夏、くすぐりなら私がや、やろうか??……でゅふふ」
「や、美鈴はガチだからからいいよ」
身の毛もよだつとはこの事で、ガチモンの変態が話に入った途端涼夏を襲っていたM心は急に弾けて消えたみたいだ。
クレイジーレズはお預けを食らった犬のようにガックリと肩を落とした。
「ぐぬぬ、悠くんも麗奈さんも通じあってるみたいでなんか悔しい」
そりゃあこれだけ長い期間、俺の隣にまとわりつくように隣に居たら他の人が理解できない部分も理解出来るようになってくるさ。
用事とかで、隣に居ないと違和感を感じるレベルだ。
かと言って俺は涼夏の事を全く考えていない訳では無い。
この幼馴染は俺がこの街を離れていた間もずっと俺の事を心配してくれていた。
だから俺はこいつも蔑ろにする事は無い、むしろ大切に思っている。
「何言ってんだよ。お前も大切な家族だろ?」
何よりこいつとの付き合いは物心が着いた時からだ、だから悔しさを感じるまでもない。
「むむぅ。そうだけどさー……まーいっか!今はそれでいいやっ」
何となく納得してくれたみたいだ。
「心温まるいいお話のとこ悪いけど、美鈴が予想外にダメージを受けているみたいなのだけど」
唯が指さした方を見てみると、あからさまに絶望した顔をした美鈴が男泣きしていた。
それを沙織さんが肩を抱いて慰めていると言う珍しい姿が見れた。
本当に乱痴気騒ぎばかり起こすこいつらといると本当退屈しねえな。
そう思いながら俺も、美鈴を慰める訳はなく、遅れて合流した姉ちゃんを労うのだった