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「…………えっとぉ……安心したら腰が抜けちゃったみたい」

「……はぁ、手間の掛かるカッコいい年上の女性っすね。マジで」


本日もう何回目か数えるのも面倒くさくなった盛大な溜息を一つ。


「……てへっ」

可愛くない。なんて事はないが今の状況からしてそれは煽りなんだよなあ。

「麗奈、少し神田さんを支えててくれるか?」



麗奈がこくりと頷いて、神田さんの背中に回ると脇に手を差し込んで軽く引っ張り上げた。

非力な麗奈が重そうにしてるから早くしてやらないとな。

俺は神田さんに向けて背中を向けて後ろで手を広げた。


人混みで人を背負って歩くのは悪目立ちしそうだが背に腹は変えられん。

「俺がおぶってくから乗ってください」


俺がそういうと神田さんが慌てた様子であわあわと口籠る。

こんな時に童貞拗らせんなよ……。


「せせせせめて麗奈ちゃんと悠太くんで両方から肩を支えてもらうんじゃダメ!?」


「麗奈は今でも重そうにしてるし、俺は、その、身長が低いからアンバランスでしょ……」


自分のプライドに傷がつくから、言いたくは無いが神田さんは163cmの麗奈より身長が高いから大体167くらい。

対する俺は第二次成長期を残したまま148cm、知り合いの誰よりも身長が低い……。


両サイドから一番身長の高い神田さんを支えるには、俺にもたれかかりつつ、麗奈が腰を落とすか神田さんの肩を引き上げる形になるから麗奈の負担がでかい。

非力で体力の少ない麗奈の事だからすぐに根を上げるだろう。


「ぐぬぬ、でもほら……やっぱりおんぶだなんて……」


それ以上の事を初対面の時にやらかそうとしてるでしょうが、今更それくらいで尻込みされても困る、というか逆にこっちが意識して恥ずかしくなってきた。


「もういい、麗奈、乗せろ。時間が足りなくなる」


再びコクンと麗奈が頷いて俺の背中に神田さんを乗せる。

神田さんも手をパタパタと動かして抵抗するものの、麗奈もこれ以上時間を取られるのが不本意なのだろう、俺に対して欲望に忠実になった時だけ発揮する馬鹿力で抵抗する神田さんを押さえ込み、無理矢理俺の背中へと押しつけた。


「待って!待ってください!自分よりも身長の低い、しかも年下の女の子におんぶされるなんて屈辱よー!」


あんまり俺の事を小さいと表現するのはやめておけ、落とすぞ。

イライラして来たが、時間優先だ。

「麗奈。行こうぜ、この大きな子供をさっさと化粧直しに連れてって祭りを楽しもうぜ!」


『そうだね!美代子少し静かにしてて、本当に目立つから。次うるさくしたら置いてくよ(*゜▽゜*)』


いつも優しい麗奈にしては辛辣な一言で、その一言は確かに神田さんの心に刺さったみたいだ。喚き、ポカポカと俺の背中を叩いていた大きな子供は途端に静かになった。

麗奈もそれだけ、待ちくたびれたと言う事だろう。

頼むからトイレに着くまではそのまま大人しくしておいてくれ。





――――――――――――――――――


神田さんをトイレまで連れて行き、化粧を直しをした後、気を取り直して祭りを楽しむことにした俺たちは、祭りの定番、じゃがバタ、イカ焼き、りんご飴等を楽しみながら人混みの喧騒の中を歩いていた。


「りんご飴の飴好きなんだよな。べっこう飴に近い甘さが堪らん」

「私も、悠太くんがりんご飴をひたすら舐めてる姿は好きかな。どう?私のチョコバナナと一口交換しない?美味しいよ?」


神田さんが欲しがってるのは純粋にりんご飴では無いのが喋りの内容から一目瞭然だ、て言うか野郎がりんご飴を舐めてる姿に興奮するなんて、頭がおかしい。


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