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麗奈も腹が減っていたのか、俺と同じく無言で箸を口に運んでいる。

そうだな、お前は沢山食え。

麗奈の境遇を考えると、同情が良くないのは分かってはいても、いつもそんな事を思ってしまう俺がいる。


実際琥珀さんが麗奈と出会った時は凄くやせ細っていたらしい。

あまり故人を悪く言いたくはないが、こんな可愛い娘を残して亡くなった親父さんには少し憤りを感じている。男を作って出ていったらしいお母さんにも、そっちの方がタチが悪いか。


『ご馳走様(*´ω`*)美味しかったよ!』


「お粗末さまです」

麗奈の食べ終わった皿を静香が受け取ってゴミ袋に詰める。

とても俺でないと分からないくらいの満足気な表情を浮かべ、焼きそばを食べ終わった麗奈が手を合わせた。


麗奈が物欲しそうにちらっと俺の手元を見た。

今日は腹が減ってんのかな。


「食うか?凄いうめぇけど昼食べすぎて腹いっぱいだわ」

これは嘘だ。

『いいの!?(▰╹◡╹▰)』

麗奈が嬉しそうなら良いだろう。


――――――――――――――――――――



「それじゃ、これ神田さんの分ね」


「ありがと、てか3パック入ってるけどあの人そんなに食うかな」

「3人分だよ。後でお腹すいたら食べて」

「おう、気を使わせて悪いな、それじゃ5パックで2000円だな」


「いいよ。悠太と麗奈さんは特別。後で雪人さんからお金は徴収するから任せておいて」


雪兄が払ってくれるならいいか。ありがたく頂戴しておこう。


「ありがとうな、静香。じゃあ俺達そろそろ行くわ」

「また明日ね」

静香から焼きそばのパックが入った袋を受け取りお礼を言って店を後にする。

そう言えば神田さんから連絡来てないけど何してるんだろう、そろそろこっちから連絡してみるか。


スマホをポケットから取り出して神田さんの名前を電話帳から選択し、通話をかける。

1コールで通話が繋がった、やけに早いな。


「悠太くん……私は今どこにいるのぉぉぉぉ!!!」


思わずスマホを耳から離してしまうほどの轟音がスマホのスピーカーから鳴り響き、鼓膜がビリビリと震えた。

その怪獣の鳴き声にも似た神田さんの叫びに、隣にいる麗奈も、無表情のまま、ふっと息を吹き出した。


「神田さん、うるさい。マジで」


「だってええええ!道に迷っちゃったんだもぉおおおん!!」


人の多い祭りといえど、その歳で、更に地元で迷子になるって……口にしたら喚き散らしそうだから言わねえけど……非常にカッコ悪い。

取り敢えず麗奈に視線を向ける。神田さんの捜索に時間を当てると、祭りの時間が減ってしまうから。

神田さんはカッコ悪くても大人だから最悪1人でも帰ってくる。


あれ?誘っといて割りとクズな思考をしてるような。


『途中で買い食いしながら美代子迎えに行こっか(o´艸`)』


そうか、それなら効率的に神田さんを迎えながら祭りも楽しめるな。

「神田さん、ラインで位置情報送ってくれます?迎えに行くんで」


「うぅ……みよ、いい子にしてるからすぐに来てくれる……?」

寂しいの頂点を超えたのか?幼児退行してやがる。

だがこれはこれでいい、不覚にも守ってやりたくなっちまった。


「もう大丈夫だ。お父さんが今すぐ行くから大人しくしとくんだぞ?変な人に声かけられても無視しておけよ?」


「わかった……お姉ちゃん、早く来てね?」


そこで通話を切った。俺は今猛烈にヤル気に満ち溢れている。

その立ち姿は周囲の人間から見たら娘のピンチに駆けつける父親のように写っているに違いない。


お姉ちゃんと言われた気もするがそんなのは気のせいだ。

みよを迎えに行こうと足を1歩踏み出すが、忘れてはいけない。

先程から呆気に取られている麗奈の手を硬く繋ぎ、大きく1歩踏み出した。


「いくぞ、麗奈!みよを見つけて祭りを謳歌するんだ!!」


2人の娘と……!!


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