小さな訪問者
今日もいつもどおりサランと朝練をし、読書をした。サランとの稽古は辛いが楽しい。最近はサランに勝てるようにもなってきてより一層気合が入る。長剣やダガーをはじめとするありとあらゆる武器を持ち出してくるサランはもうこの世のものではないように思えてくる時がある。まあ、最近は私もサランと互角に戦えているからほぼ同格と言えるけれど、我が家の『影』と同じ練習を組み込んでくるサランは鬼畜だと心底思う。
異世界だからかは分からないが、毎日筋トレ、素振り、ストレッチ、朝の稽古と色々やっているのにも関わらず、腕に筋肉があるようには見えない。むしろ細すぎて折れそうなぐらいなのだが。
いつもどおり朝練の後は図書室にて本を読んだ。その後、ピアノの練習をする為別棟に向かった。
基礎練習でハノンとツェルニーの練習曲を弾いていた。そしたら、光の粒のようなものが降ってきた。
すると、
「こんにちは」と話しかけてきた。
端から見れば不可思議な現象だと思う。実態のない光の粒が私に挨拶してきたのだから。
だが、挨拶されたら返すのが礼儀というものだろう。こんにちはと返すと光の粒が人の形に変わった。
幻想的な様子に見惚れていると色とりどりの光を放ち小さな掌サイズになった。
「「「「愛し子だー」」」」
私は困惑で固まっていた。本の挿絵で見たことがある、妖精と思しき光が私の周りを舞っていた。
「なまえなんていうの??」
「ユナです。」
世間一般では知らない人に名前を教えるのはよくないとされるが妖精の場合はどうなのだろう。
「私たちも自己紹介しますね。」
そう言って金色の光を纏った妖精が仕切り始めた。順番が決まり一列に並んでいるところが可愛くって頬が緩んでしまった。
「わたしはマリンだよ〜」
「水属性なの〜」
いやー可愛いわ。そういえばお兄様が水属性だと言っていたっけ。
「おれはサンスだ!火属性だぞ!」
元気な男の子みたいで萌える。小さいフォルムに前のめりな姿勢が最高!!
「僕はラピス。か、風属性です。。。」
こんな可愛い生物がいていいのか?何故こんなにも犯罪的に可愛いの〜
「僕はルチル。土属性!」
「私はメラル。木属性!」
「私はレナ。緑属性!」
「「「私(僕)たち三つ子なの」」」
自分の顔がどこまで緩んでいるのか想像もしたくない。この可愛さ!萌悶える!
「オパルでしゅ。かみなりぞくせいでしゅ。」
「オパルは一番年下なのです。」
妖精たちのリーダーと思われる金色の妖精が捕捉してくれた。
「チャロっす。毒属性っす。」
すると、その後
「オニキス。」
「闇属性。」
目も合わせずただ耳がほんのり赤く可愛かった。ツンデレ最高!
すると進行役をしていた金色の光を纏った妖精が最後に
「シトリンです。光属性です。」
ん?なんとなく変だなーと思っていたけど10属性の妖精が集まっているのか。。。?
「よろしくね。だけど何故10属性全ての妖精が私に?」
「というかまだ自分の属性も知らないのだけど。」
「女神様が妖精と精霊の愛し子になる子がいるとお聞きしたんです。」
「心惹かれるまま来てみたらここにたどり着きました。」
余計分からんわ。何故?
「なので私たちとお友達になって欲しいんです。」
友達?妖精と?こちらからすればこんな可愛い子たちとお友達になれるのなら超絶嬉しいんだけど、
「あの、私は構わないけどいいの?私普通よ?何か特別ってわけでもないし」
「はい!ユナさんがいいんです!」
あれよあれよという間に話が進んで、妖精と友達になるには魔力交換をしなければいけないらしい。友達とは?って感じだけどまぁいっか。妖精たちがいうように手に魔力を集め、妖精10体がその魔力の塊に入っていった。すると眩しくて目も開けられないほど多色の光が放たれた。
「これでユナさんと私たちとの契約が完了しました。」
今聴き間違えでなければ契約って言わなかった?
「はい。言いました。」
「ん?」
今声に出てたっけ?
「いいえ、契約を交わしたので遮断しない限り心の声が聞こえるようになります。」
「ちょっと待って。私お友達になる事は同意したけどこれは聞いてないよ。?」
「なんかすみません。私たち本当にユナさんとお友達になりたかったんです。」
「ちなみにですけど私たち妖精王なのでメリットはいっぱいありますし、むしろ今契約しておく事で私たちの部下から契約をお願いされることもなくなります。」
絆された感半端ないけれどまぁ仕方ないかと考えるのを辞めた。
「それと、私たちユナさんに魔法を教えられます!」
「魔法!?」
「9歳からじゃないの?」
「普通魔力の量が魔法を使えるくらいになるのが9歳なのですが、ユナさんはもうすでに私たちを引き寄せるくらいの魔力を持っているので大丈夫だと思います!」
「わかった。騙し討ちみたいになったのは水に流すから、私ができうる限りの魔法を教えて!」
「もちろんです。」
そんなこんなで魔法を使える機会を得た。なんか詐欺に会った気持ちだったけどそんな事は忘れ、ただただまだ見ぬ魔法を体現できることに胸のときめきが治らなかった。