別棟散策
今日は誕生日に両親からもらった別棟に行ってみようと思う。いつもは図書室に行くんだけど、もうすぐ本を読み切りそうだし1日くらい行かなくても自分の気持ち的にも大丈夫な気がする。
「サラン〜」
「今日は別棟に行ってみようと思うんだけど」
「分かりました。私は仕事がありますので、何かあればお呼びください。」
「うん。分かった〜」
「お嬢様。こちらを。」
サランはダガーナイフを渡してきた。何故。確かにこの前サランとダガーナイフでの試合をしたけど、模擬剣でもなく本物を渡してくる意味がさっぱり分からない。
「こちらは私個人からお嬢様へのお誕生日プレゼントです。」
「え、うん。ありがと〜」
「これって護身用?」
「はい。もしもの時のために持ち歩いてくださいね。」
わかったとは言ったものの、私は一応公爵令嬢だから我が家の護衛や『影』が危険から守ってくれている。もしもの時がこないほうがいいし、もらったダガーナイフの出番がこないほうがいい。なんかもったいないなぁ。
「ありがとね。”もしも”の時は使わせてもらうね。」
「はい。」
ーーーーーーーーーー
別棟って響きからなんとなく前世の部室等みたいなのイメージしていたけど、別棟って言うより別宅の方が適切な気がする。屋敷と比べると小さいけど平家の一軒家みたいな一人が使用するには広すぎるスペースが用意されていた。
早速中に入ってみようと鍵を鍵穴に差し込みドアを開けた。
エントランスはオープンスペースで塵一つ落ちていなく石造りで高級感が出ていた。両親のことは好きだが、正直これはやりすぎだなと呆れてしまった。エントランスですでに疲れ果て廊下に沿って歩いていくと、大きな木造の扉が立っており嫌な予感がしながらも好奇心が勝ってしまい扉を開けた。
するとそこは書斎だった。ただ本棚は空でだたっ広い部屋の真ん中には机があった。使い勝手が良さそうで勉強し放題な環境にさっきまでの疲労はいつの間にか吹き飛んだ。そして本棚が空なのにも心の底から感謝した。自分でカスタマイズできるなんて夢のようだと。図書室の本は読み切りそうだしまだ見ぬ本たちに心躍らせていた。
一人で来て正解だったなと思った。その時の私は引くほど笑顔だったに違いない。この別棟は湖を挟んだ屋敷とは反対に位置するので恐らく来る人はほぼいないに等しい。私も初めて来たのでワクワクし、自分の隠れ家を持った気分だ。
別棟に来て最初こそ呆れたが内装や部屋数、どれも理想的で使用するのが楽しみになった。
そして一番心踊ったのは防音室だ。グランドピアノが部屋の中心置いてあり、弦楽器や管楽器も収納庫に入っていた。恐らくお母様がお稽古をそのうち入れてくるのだろう。ピアノとチェロは前世でやったことがある為、基礎は自分で始めようと思う。手慣らしにハノンを弾いてみたが、やはり指の筋肉がまだ発達していないので思ったように弾けなかった。できることをやるよりできないことをする方が燃えるので良かったと思う。もしもここでできていたら多分だが一生ピアノに触らなかったと思う。
別棟は思いの外快適でこれからが楽しみになるのであった。
ーーーーーーーーーー
夕食の席で両親に相談をしてみた。
「お父様、お母様、私に家庭教師をつけてください。」
「そうか。」
「できればバイオリンと勉学を」
「わかった。二週間ほどかかるがいいかい?」
「ええ。分かりました。ありがとうございます、お父様!」
二週間もあればあと30冊ほど残っている本たちを読めるし、立太子の記念パーティーの準備とかであっという間だろうし。ワクワクしてきた。
「そういえばなのですが、魔法っていつ頃から習い始めるのですか?」
「ああ、言ってなかったね。9歳になったら教会で魔力測定と属性を教えてもらうんだ。」
「リオンも今年の誕生日に教会で測ったんだよ。」
お兄様はそういえば最近お茶会デビューしましたね。
「へ〜。そうなのですか。」
「お兄様の属性はなんだったのですか?」
「水属性だったよ。魔力量も多い方で最近は家庭教師に魔法の基礎を習い始めたんだ。」
「私はあと2年ですか、楽しみです!」
私は何属性になるのかな〜
今からウキウキしちゃいます。正直なところ魔法があるということだけでも嬉しいのに、自分も使えるということがより一層楽しみになります。
ーーーーーーーーーー
翌日別棟でピアノの練習をしていたら、小さな訪問者がやってきた。




