誕生日パーティーにて
「お嬢様。皆様大広間のほうでお待ちですよ。」
「準備はよろしいですか?」
今日のサランはいつもの制服ではなく私服でとても可愛い。落ち着いたオフホワイトのワンピースに私のドレスとお揃いのリボンを腰に巻いていて、仕事感が出ていなくてすごく可愛い。サランは無表情ではあるけれど容姿はとても整っている。スタイルはいいし、顔もキリッとした美人さんで前世のモデルさんみたいな。
「準備できてるよー」
「楽しみだね、サラン!私服姿は初めてだけどすっごく似合ってて可愛い」
「ありがとうございます。お嬢様。」
「お嬢様もやはり私の見立て通り天使のように可憐でお綺麗です。」
サランはとにかく私のモチベーションを上げてくれる。毎日何かしら褒めてくれる。
ほんの些細なことでも見逃さないし、良かったことを褒めて伸ばしてくるタイプだと思う。
朝練の時は全くだが。
「お嬢様。大広間に到着いたしました。」
「お入りください。」
「「「「ユナ(お姉ちゃん)!お誕生日おめでとう!!」」」」
「「「お嬢様!お誕生日おめでとうございます!!」」」
「ありがとうございます。」
そう言ってマナーの練習でマスターしたお辞儀をした。家族と使用人一同、皆盛大な拍手を送ってくれた。屋敷のみんなもお父様たちのように過保護で甘やかしてくるようになった。前まではそこまで関わり合いがなかったのだけれど、厨房でおつまみ作りにハマった時にお裾分けとして屋敷中に配ったり、ガーデニングにハマって屋敷中の花瓶に挿してみたり。自然とお話ししたり関わることが増えて、今に至るんだけど。
「今日は身分の壁も壊してユナの誕生日を楽しんでくれ」
お父様が今日の醍醐味であるみんなでワイワイというコンセプトを再確認してくれた。さすがに雇い主にフランクに行くのは無理でも、上司と部下の飲み会みたいなテンションになればいいな。この世界はお酒の席が社交界ぐらいしか貴族はないそうでお父様達も楽しめたら良いのだけど。
「乾杯!」
「「「かんぱ〜い!!」」」
誕生日といえど私はまだ7歳なのでお酒を飲むわけもなく葡萄ジュースをワインの代わりに受け取った。前世と違って社交界デビューと同時に16歳から飲酒できるらしい。だが、成人は学業が終わる18歳なのでややこしい。
「お嬢様、プレゼントをお渡ししても良いですか?」
「使用人皆で制作しました。」
サランがかなり大きめの箱を持ってきた。みんなで作ったって、何をだろう?
「開けてみてもいい??」
「もちろんです。」
そう言って大きな箱を開けてみた。すると中にはシアーズ邸の模型が入っていた。
しかも中の装飾品まで同じで一言で言うとすごいなと感動すらしてしまった。
「これ、みんなで作ったの?」
「はい。」
「皆で細かな装飾品の確認や寸法を測ったりしまして、納得のいく作品になったかと。」
「へ〜」
感動と感心で間抜けなため息が出ちゃった。
「すごいね。みんなありがとうね」
そう笑顔で言うと皆緊張していたのか、ほっとため息をこぼしていた。
「これ誰が思いついたの?」
すると、お父様の執事のベンが答えてくれた。
「ドールハウスがいいと提案したのですが、アレンが屋敷の設計図を書いたからそれで模型を作ってプレゼントしようと言うことになりました。」
「お嬢様は日頃からお屋敷の散策や屋敷の骨董品を見ていらしたので」
「なるほどね〜」
「その設計図ってまだある?」
「はい。いろいろな建物の図面を見たり書いているので良かったら今度見学してください」
「そうなんだ〜!今度お邪魔しようかな。」
(新しい趣味が発見できそう。模型作りは初体験だし・・・挑戦する価値はありそう。)
アレンは庭師で公爵家の広大な庭の管理をしてくれている。ガーデニングを始めた時も最初こそ距離を置かれていたものの毎日通っていたらアドバイスをくれるようになった。気難しいおじいちゃんみたいな見た目だけど、仲良くなってからは孫を可愛がるおじいちゃんみたくおやつをくれたり、人生の思い出話を懐かしそうに話したりしてくれてとても楽しい。
その後家族からのプレゼントを受け取ることになった。
「ユナ。お誕生日おめでとう〜」
「はいこれ」
鍵を渡され困惑していると別棟の鍵だと言われた。別棟を建てたらしい。
予想外すぎるプレゼントで開いた口が塞がらない。
「ありがとうございます。が、お父様、お母様、何故別棟を?」
「もう少ししたら勉強や習い事を始めるだろう?」
「そのためには新しい部屋が必要かと思って」
「ユナ、内装はお母様が考えたの。誕生日プレゼントとして、受け取ってくれないかしら?」
「分かりました。有意義に使います。ありがとうございます。」
別棟は規格外だけど、書斎も防音室もあるらしいので好きなことができそう。7歳のプレゼントとして適切かは分からないが私はワクワクしていた。