↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/30

5. 動き出すものたち



 それは、ある日突然やって来た。


 厄災。


 魔物の大移動。大襲撃ではない。何かに追われるように、何かから逃げるように、何かに操られるように。


 数え切れないほどの魔物が町を横切り、建物、人を蹂躙して行った。


 小さいとはいえ、当然壁や柵は造られ、簡単には魔物の侵入を許さない備えはされていたのだが、あの数の前ではどうする事も出来ず、一旦侵入を許してまった門など最早なんの役にも立っていなかった。




 一冊の書物が風に吹かれていた。


【フレデリック・イーレースの日記帳】そう書かれた書物の紙が捲れ、少年の書いた日記を晒してした。


【寒の月 5日 晴れ】


 今日から日記を付けることになりました。お世話になっている教会への活動報告にもなるので頑張って書いて行こうと思います。


 時間もあるし、こんな立派な日記帳とペンをもらってしまったのだから、しっかり書いて行きます。



 今日、僕は神様からスキルを授かりました。言われていた通りに突然でした。驚きましたが、それよりも驚いたのがスキル名でした。


『ゴミ処理』。誰も聞いた事がないそうです。これからしっかり確認して、しっかり記録に残して行きたいと思います。


 少しでも教会の為に役に立てるスキルだと嬉しいです。


 

 今日の確認。


 頭の中に響いて来たのは、


『ゴミ箱設置』でゴミ箱を設置

『ゴミ処理』で中に入れたゴミを処理

『ゴミ箱回収』で設置したゴミ箱を回収


 できるという事だけでした。色々試してみないと何が出来るのか分かりません。


 設置したゴミ箱に入れた後に、処理できる物とそうでない物がありました。それと、1度に入れられる量と、処理する回数にも限度があるようです。


 何回か試していたら、なにも入らなくなってしまいました。明日からは数を数えながら色々と試して行こうと思います。




 ひゅ~~


 ぱらぱらぱら~


 風で日記帳が捲れて行く。



【暖の月 20日 晴れ】


 今日は、クリーンの魔法をしっかり使えと怒られてしまいました。


 ぼっ ぼっ めらめら めらめら ぼわっ



 教会の中の元は豪華だった一室。今ではその跡形すらも失くなりつつあるのだが。


 何処からか飛んできた火の粉が少年の日記に移り、容赦なく燃やして行った。燃え盛る建物の中、書物は赤から黄色へ、やがて黒くなり、ぼろぼろになって崩れ落ちた。


 主人を見付けられなかった日記の灰は、やがてやって来た風に運ばれて散って行った。ばらばらと、ぱらぱらと。




「……。う、ううん。……」


 がばっ きょろ きょろ きょろ


「僕は、……生きている……」



 その場で生きているのは少年只1人。


 少年が寝泊まりしていたぼろ小屋が教会の隅にあったのも良かったのだろうか。少年が確認の為に、隙間風を防ぐ為にゴミ箱を設置したままにしていたのが良かったのだろう。


 ゴミスキルのお陰だったのだ。おっと、失礼しました。ゴミ処理スキルでした。


 その中の1つの、ゴミ箱設置。


 今では5つまで設置できるゴミ箱を、小屋の大きさに合わせて展開させていたのだ。前後左右と。


 1つは便利収納保管箱として使っていたから設置できる数は4つだった。だから天と地には設置できなかっただけなのだが、それが結果としてフレッドの命を救ったのだ。



 天井は空いていたとはいえ、それなりの高さのある垂直の壁を上る能力のある魔物も、この壁を叩き壊す力も無かったのだろう。


 実際に後ろから来た魔物に挟まれて圧死した魔物もいたくらいなのだから、この壁の強度は計り知れない。


 ゴミ箱が設置されている間は動かない。動かせない。フレッドの意思によってでしか回収できないゴミ箱の壁。


 実際には神が作りし『絶対障壁』にもなってしまうゴミ箱なのだが、この段階でもフレッドには確信はなかった。ただ、やはりもの凄く頑丈でびくともしない壁のゴミ箱だと。そう思っただけだった。そのお陰で助かったというのに。



 元々ぼろ小屋だった建物など、誰も気にもしなかったのだろう。魔物すら。例え少年が居ると分かっていたとしても、あの魔物の大群の中、他者に気を使う余裕のある者など居なかっただろう。


 それも、ゴミ少年の事など気に留める余裕のある者など居なかったはずだ。家族さえ、我が子でさえも見付けられなかった者が多かったのかもしれない。


 そんな状態の中、1人ぼろ小屋があったであろう場所で佇むフレッドが居た。壁はぼろぼろぼろになって崩れ、小屋が建っていたと分かるのは、床と天井が残っていたからだ。


 それも、フレッドがゴミ箱回収をする事で崩れてしまうのだが。なんとか冷静にゴミ箱の1つだけを回収して外に出る。



 そこには変わり果ててしまった教会の、町の姿があった。


 不思議と涙は出てこなかった。


 フレッドは暫く何も考えれられなかった。現実を受け入れられずに佇んでいた。


 魔物がやって来たのが、まだフレッドが目を覚ます少し前の事だった。それがフレッドの生死を分けた要因だろう。


 果たしてこれは不幸だったのか、それとも幸だったのか。あのまま眠っているうちに死ねていれば、これからの苦労はなかったのかもしれない。


 したしフレッドは動き出す。自分は生かされたのかもしれない。そんな事を思うでもなく動き出す。


 まだ12歳のフレッドにとって、この状況は酷過ぎる。例え人と接するのが得意でなくとも、それとこれは話が違い過ぎる。


 他に人が居ないか、町の様子はどうなっているのか。


 警戒はしつつも、ゆっくりと歩き出す。どうせ魔物が出ても逃げる事くらいしか出来ないのかもしれないが、自分を守ってくれたゴミスキルがある。ゴミ処理スキルなのだが、もういいだろう。



 いざとなったら、最大処理容量の3m×3m×3m(縦×横×高さ)のゴミ箱を逆さにして設置してやろう。それくらいの覚悟は持って町を徘徊した。



 

 フレッドは、くる日もくる日も町を処理して行った。


 結局、生きた人は見付けられなかった。残されていたのは、無惨に壊された建物の残骸、火の手もそれなりに上がっていたせいか、ぼろぼろに崩れた建物も多かった。


 フレッドだけが無事だったのが信じられないくらいの光景だったのだが、不思議と人の死体は少なかった。


 それもそのはずで、魔物の大移動には兆候のある場合もあるし、それなりに町に近付いてこれば気付くだろう。その為の警備や組織もあったのだから、当然と言えば当然だったのだが。


 当然のように、その事はフレッドの耳には届かない。届いていたのかもしれないが、本人にその気がないのだから、当然対策を立てたり、町を捨てて逃げるという選択肢は無かった。それだけの事だった。



 1度魔物の大移動の進路に入ってしまうと、また移動が起こった際には進路になってしまう。だからこの町で暮らして居た人達は、この町を捨て、新たな定住地を求めて旅立って行ったのだが。


 当然、中には信じられずに留まって居た者も、この地を離れたくないとしがみつこうとしていた者も居たのだが。


 只でさえ大きくない町で、殆どの人達は出て行ってしまっているのだ。そんな状況で魔物の大移動に対処できるはずもなく現在に至るという事だ。



 フレッドにしても、当然人が少なくなっている事には気付いていたのだが、町の外で何かをやっているとか、何かの準備の為に荷物を持って町を出て行く人達だと思っていたくらいだ。


 理由を聞ける人も、心配してくれる人も居なかった。それ程深く考えていなかった。それだけの事だった。


 実際には心配して声を掛けてくれた大人達も居たのだが、フレッド当人にその気がなかったのだから仕方ない。


 親切な大人達も、自分達の事で精一杯なのだ。最後まで面倒を見ようとも思っていなかったし、フレッドが事の真相を聞いていたとしても、結果は変わらなかっただろう。




 小さな町とはいえ、町は町。それなりの人も住んでいたのだから、それなりに建物もあったのだが。家主を失くして崩されたり燃えたりしたせいだろうか、元の町の姿が想像できない程の荒れっぷりだった。


 だからフレッドも遠慮せずに処理できたのだが。もし仮に、これが一時的な避難で、程なくして住人達が帰って来たならば。


 それはそれで凄い修羅場となっていただろう。フレッドがやったとは信じられないかもしれないが、現行犯で処理している現場を抑えられたらお仕舞いだっただろう。


 それは幸だったのか?



読んで頂きありがとうございます。

4日目にして、『33』PV。

思ったよりも伸びてしまいましたね。

予想外です。

話数が増えればそういう事もありますよね。

私は油断しませんよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。