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16. 事後処理と確認と



 込み入ったヤバそうなお話に入る前に、フレッドのステータス確認の準備が整った。副所長と名乗る男がそれを持って来た。


 考える人の体勢を続け、まだ私に話し掛けるんじゃないよ!


 そんな気迫に満ち溢れんばかりの所長に何か言える者が居るはずがなく、ほんの軽くではあるが、遠くから所長に断りは入れ、フレッドに挨拶を交わし、口早に説明し出した。以下、副所長の言葉。



『ステータスプレート』


 これに手を乗せて魔力を流しますと、その人のステータスが表示されます。見ようと思えば誰でも見えてしまう仕様となっておりますので、ご利用の際には前後左右上下と、しっかり確認してから魔力を流して下さい。


 ステータス確認時のトラブルに関しましては、当方は一切の責任を負いかねますので予めご了承下さい。



 冒険者組合事務所の受付けで、1回銅貨5枚で確認できるようになっておりますので、冒険者の皆様は、気になる時、パーティを組む時、大物を倒した時、遠征から帰った時等、何かにつけて確認しておいでです。


 職員であれば月に1度は無料で確認して頂けますが、これも相応の魔力を消費してしまいますので、それ以上の利用に関しましては、冒険者の皆様と同様、銅貨5枚を頂戴しております。


 ちなみに、この『ステータスプレート』は、本人確認の為の機能も持っておりますので、違う使い道もある大変便利なプレートになっております。大変高価な物ですので、取り扱いの際には細心のご注意をお願い致します。



 ステータスに関しましては、何事もなくとも定期的に確認している方は多いのですが、毎回お金を払うのが勿体ないとか、他者にステータスを絶対に見られたくないという方には、こんな便利な魔道具を用意しております。


 こちらです。


 コト コト コトリ


 ステータスを確認する為の本人専用のアイテム。その名も。『アビリティリング』と『スキルリング』。また、その2つの性能を合わせ持つ『ステータスリング』の3つがございます。


 効果は名前通りのもので、


『アビリティリング』は現在のレベルと各種能力値を。

『スキルリング』は現在取得しているスキルと、そのレベル値を。

『ステータスリング』は、その全てを表示してくれる魔道具となっております。



 これは専用装備となりますので、自身のスキルのみを確認できる魔道具です。装備して最初に魔力を流した方だけの物になります。自動調整機能も備わっておりますので、一生物の魔道具にもなります。素晴らしいでしょう?



 勿論、任意で外す事も出来ますが、他の者が着けたとしても何ら効果を発揮しないリングとなります。あくまでも機能するのは最初に魔力を流した人だけになります。


 ですから、誰にもステータスを見られずに安心していつでも確認できます。朝でも昼でも寝る前にでも。食事中でもトイレの中でも。素晴らしいでしょう?



 自分は今レベル幾つなのか。能力値は幾つなのか。取得しているスキルは何があってレベルは幾つになっているのか。それが何時でも確認できてしまうのです。


 ああ、何て素晴らしい魔道具なのでしょうか。凄いでしょう?



 なんと! そんな夢のような各種リングが! 今なら特別価格でご提供っん、ゴッ! がっはあーっ!



「っ!」


「おらっ! 何を今日入ったばかりの特別職員に売り付けようとしてんだい。バカ者が! 私が考え事をしてると思って勝手な事をしてんじゃないよ! まったく」


 副所長がぶっ飛んだ。物理的に。軽く血飛沫(しぶき)を上げて。のりのりだったのに。もう少しで最後まで説明できたのに。肝腎の値段を告げずに息絶えた。


 事はなかったが、それなりのダメージは入ったようだ。ぎりぎりで全治初級聖魔法クラスの。


 副所長は聖魔法使いなので問題ない。即死でもない限りは。



 正直、確認好きのフレッドには喉から手が出そうな程に欲しいアイテムだった。こんなに物を欲しいと思ったのは、食料以外では初めての事だった。営業トークにやられたのではない。


 1日1回確認すれば、何日で元が取れるのだろうかとか計算したりはしていない。値段も分からないのだから。純粋に便利で更にやる気を継続させてくれそうな魔道具だから。幾らするのか普通に気になった。


 なぜもっと早く言ってくれなかったのか。その方が残念だと思っていた。それが営業トークなのだから仕方がないのだが。散々煽って期待させておいて最後に提示するものだ。しかも値引きやおまけも入る事もあるのだが。


 そんな事をフレッドが知っているはずがない。これも初めて聞いた売り込み手法だったのだから。


 クロージングトークまで行かずとも、今のフレッドなら定価で。いや、言い値で買ってしまったかもしれない。それなりに金はあるし、魔石の換金もまだだったからだ。


 しかも、直ぐに上納する相手も居ない。それまでにまた貯めればいいかな。くらいに考えているのかもしれないが。何も考えてなかったかもしれない。



「す、すみばぜん」


 副所長が立ち上がった。フレッドは心の中で叫んだ。頑張ってと。もう少しです。と。


「あ、あのお。……。だ、大丈夫ですか?」


 それでも次の言葉が続かないので確認してしまったのだ。さっきの続きは。の前に体の心配をする所がフレッドらしいのか。



「はんっ。そんなバカに気を使う必要はないよ。お前も物好きだねえ。まさか、さっきの話の続きが聞きたいとかじゃないだろうね」


「うっ、……」


 図星だった。やはり所長の洞察力は凄まじい。これだけの短い期間でもフレッドと過ごした事で分かってしまったのだ。フレッドが興味を示したであろう事が。


 基本的には何も喋らない。いや、なかなか喋らないだけに、ここぞと言う時くらいにしか前に出て来ないのだ。自分から話し出すなんて、今までに何回あっただろうか。


 いや。ほぼ所長が話していただけに、それに答える形がほとんどだった。別にフレッドに限った事ではないのだが。



 それでも、フレッドが目を輝かせて話していたのは、自身のスキルの事くらいだったはず。


 あと、嬉しそうにしていたのは、解体所のゴミを皆の期待に応えて綺麗さっぱり片付けてしまった時、仕事が決まった時、3食付き、個室、家賃は要らないと聞いた時。くらいだっただろうか。


 分かり易いのか微妙なのか。それでも自ら話し掛けるなんてよっぽどの事なのだ。ならば、やはりそういう事なのだろう。所長の読みは間違っていなかった。


 今の言動で確実にそう判断されてしまったのだが。挙動不審に頭を振りつつ目を泳がせているのだから、誰でも分かるだろう。



『アビリティリング』『スキルリング』は1つ金貨3枚。

『ステータスリング』は金貨5枚。


 即決だった。


 1回銅貨5枚。10回で銀貨5枚。100回で大銀貨5枚。1000回で金貨5枚。これがあれば最低1日1回は確認するだろうから。数年で元が取れちゃうね。もしかしたら1年以内かも。


 これくらいは自分へのこれまでのご褒美という事にして。死んでしまったらお仕舞いなのだから。あんな思いをしたのだから。なんて事は全く思わずに。即決で。



 こんな凄い物があって、そんな面白いものが毎日確認できるなら、買っておく方がお得だと判断したからだ。決して、金貨1枚分もお得じゃないか。なんて興奮もしていない。



 魔角 ×2 は別として、


 ゴブリン ×46 大銀貨1、銀貨3、銅貨8

 ネイズミーマウス ×27  銀貨5、銅貨4

 オウンカミンウルフ ×15 銀貨7、銅貨8

 クウマンベアー ×3   金貨1、大銀貨5


 合計金貨1枚、大銀貨7枚、銀貨7枚。


 これと、今日の臨時のゴミ処理代金、今の売り込み迷惑料。これで相殺するという所長の粋な計らいで、めでたくステータスリングを手に入れる事が出来た。


 出来てしまった。臨時のゴミ処理代金が幾らなのか知らないが、迷惑料が幾らで誰に請求が行くのかも知らないが。只1人、副所長だけが青ざめた顔をしていた。


 いつの間にかさっきの傷は完治されていたようなのに。違う所にダメージが入ってしまったようだ。精神的に。懐具合的に。



 実際のところはどうか分からないが、所長の厚意が多大に含まれている事は明白だった。勿論、今後に期待してという意味もあるのだろうが、これから質問する事に少しくらいの罪悪感があるのかもしれないが。



 フレッドにしてみれば、そんな事はもうどうでもいい様子でリングを手にして喜びの表情を満開にしていた。


 早く着ければいいのにと、所長も副所長も思ってはいるのだろうが口には出さなかった。大人だから。


 副所長は別の意味でも出せなかったのだが。これ以上の失態をしない為に。次の給金までの生活を気にしながら過ごしていただけなのだが。



読んで頂きありがとうございます。

14日目にして、『83』PV。

2話更新の結果がこれです。

ふっ。

まあ、私は負けませんけどね。

だからという事でもありませんが、

本日はもう2話更新予定です。

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