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第四章 召喚獣のざんねんな帰還。〈7〉

挿絵(By みてみん)


(それくらいにしておけ)


 脳内にひびいた声におどろいてアレストリーナ姫とまりるが顔を上げた。奈落の底でマリモコウの光もなしにオレを視認できていた原因を目のあたりにしてふたりは絶句した。


(われはかつてグラスゴルレリウス帝の双竜として名を()せた神獣グラコロアリスドラゴン。そこのたわけ同様グラコロさんとよんでよい)


「ええええっ!? 神獣ってなんだっちゃ!? グラスゴルレリウス帝の双竜ってなんだっちゃ!? 急展開すぎてウチも読者もついていけないっちゃ!」


 いや、読者はついてきてる。ついてこられないのはあんただけだ。


「姫、グラコロさん、命の恩人るる。感謝するるる」


 そう云ってまりるが深々と頭を下げると、神獣グラコロさんがうれしそうに目を細めた。おなじ召喚人獣(フェアビースト)同士、言外に通じあうなにかがあるのかもしれない。


 神獣グラコロアリスドラゴンの威容(いよう)にあらためてアレストリーナ姫が息を呑んだ。アレストリーナ姫ですらアルマイリス皇国の神獣を見たことはない。


 神獣グラコロさんは言葉足らずのオレやまりるにかわってアレストリーナ姫にこれまでのあらすじを説明した。数千年惰眠(だみん)をむさぼっていたわりには弁が立つ。アドリブも利く。


「……グラスゴルレリウス帝の双竜の1体が魔女グラコロアリス? 残酷な天使のテーゼで少女が神話になったようだっちゃ」


 オレは惑星アルマーレの歴史に精通しているわけではないので知らなかったが、アレストリーナ姫の口ぶりから察するに、神獣グラコロさんの前身も観月ありさ、もとい伝説の少女だったらしい。


 アレストリーナ姫が困惑するのもムリはない。神話・伝説が顕現(けんげん)しているのだ。オレらの感覚で云えば、桃太郎が目の前にあらわれて「おまえもどう? キビダンゴ食べる?」と云われているようなものだ。


 想像するのもバカバカしいが、アレストリーナ姫はそう云う現実と対峙(たいじ)している。しばし沈思黙考していたアレストリーナ姫が意を決したように口を開いた。


「グラコロアリスさま。ウチに力を貸してほしいっちゃ」


(力を貸せだと?)


「……グラゴードリス建国の(いしずえ)となったグラコロアリスさまにこんなことをおねがいするのはどうかと思うっちゃけども、グラゴダダンやアルキメヒトを野放しにすれば、キルリーク大陸は、世界はふたたび混沌と化すっちゃ。無辜(むこ)の人々が苦しむ世界になるっちゃ。ウチはそんなのイヤだっちゃ!」


 神獣グラコロさんがアレストリーナ姫へたずねた。


(神獣と契約すると云うことは一国を(にな)うと云うことだ。きさまにその覚悟はあるか?)


アレストリーナ姫は決然としてこたえた。


「もちろんだっちゃ。ウチはみんながつましやかでも幸せに暮らせる皇国をつくってみせるっちゃ」


アレストリーナ姫の決意を耳にした神獣グラコロさんが云った。


(きさまの心意気はわかった。ただし、ひとつ条件がある)


「なんだっちゃ?」


(そこなトンカプーをわれへゆずれ)


「よいっちゃ」


 ええええっ!? ちょっと待て、なにその即断即決!? オレの意思は!? て云うか、神獣に召喚獣(フェアモン)をリリースってそんなことできるの!?


(われをだれだと思うておる。かつてはキルリーク大陸中にその名をとどろかせた戦慄(せんりつ)の魔女グラコロアリスだぞ。召喚牌(カルタ)の書きかえなぞ雑作もないわ)


 いやいや、百歩ゆずって召喚牌(カルタ)の書きかえができたとして、オレは神獣グラコロさんの召喚獣(フェアモン)としてなにをすればよいわけ?


(ヒマつぶしの相手)


 ……ヒマしかないやつのヒマつぶしの相手ってハードル超高くね?


(われが数千年まどろんでいる間に世界がどうかわったかも知りたいし、異世界とやらの話も聞いてみたい)


 そんなんでよければ問題はない。オレも魔女グラコロアリスの冒険(たん)とか聞いてみたいし。


 ただ、今後アレストリーナ姫の召喚獣戦闘(フェアモン・バトル)に参戦できないのは、ジャッキー映画のおわりのNGシーンを観ないで席を立つみたいなもやもや感がのこる。結末は最後まできちんと見とどけたい。


 神獣グラコロさんはそんなオレの想いをくみとっていたらしい。


(……とは云え、アレストリーナにはまだそのたわけが必要だ。しばらくは共用としよう。トンカプー、きさまの呪印(じゅいん)を見せろ)


 オレが神獣グラコロさんへ右尻の呪印(じゅいん)を見せると、神獣グラコロさんがしゃがんで3本指の左手(左前足?)の大きな爪の甲を呪印(じゅいん)に押しつけた。神獣グラコロさんの爪の甲にオレの呪印(じゅいん)転写(コピペ)されて消える。


 神獣グラコロさんが身体を起こして云った。


(これでよい。ゆくぞ、召喚(コーリン)!)


 一瞬にしてオレの身体が地面から神獣グラコロさんの爪の上へ移っていた。召喚成功である。神獣グラコロさんが指を下ろしたので、オレもそのまま滑空して地面へ舞いもどる。


 惑星アルマーレへ召喚中の人間(アース)召喚獣(フェアモン)を別の場所へ移動させる二重召喚なぞ人間には不可能だが、神獣グラコロさんのもつ魔力は人間を凌駕(りょうが)しているため、こんな芸当も可能になるらしい。


 ただし、オレが神獣グラコロさんに召喚されると、アレストリーナ姫の金色(ゴールド)召喚牌(カルタ)は1枚使用中の状態となる。

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