第三章 召喚獣のさんざんな冒険。〈7〉
「と、ところで瑞希ちゃん、これからまりるちゃんをどうしたらよいと思う?」
これ以上〈鏖殺のハッピーセブン〉について詮索されたくない菜々美ちゃんが話題をかえた。ただし、こっちが本題である。
「グラゴダダンがまりるをねらっている以上、地球でかくまうよりアレストリーナ姫にあずけた方がよくないか?」
オレの言葉に瑞希がうなづいた。
「アレストリーナ姫と連絡をとる。カオル、PCを借りるぞ」
そう云ってオレの部屋へ向かう瑞希にオレたちも席を立った。
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「……一体なんの用だっちゃ!?」
開口一番ケンカ腰で啖呵を切ったアレストリーナ姫が、画面中央に映った瑞希の姿に虚を突かれた。
「って、あれ? ミズキ? ごめんなさいだっちゃ。どっかのバカとかんちがいしたっちゃ」
「どっかのバカって云うのはオレのことかな?」
瑞希のうしろからPC画面へ映りこんだオレを見て、アレストリーナ姫が困惑した。
「カオル? あれ? やっぱこのアクセス名ってカオルっちゃよね? どうしてそこにミズキがいるっちゃ?」
「へっへ~、私たちもいるよ~っ!」
オレ同様、瑞希のうしろへひかえた朱音さんと菜々美ちゃん、ついでにまりるもPCのカメラに向かって手をふった。
「アカネ、ナナミ!? ……って、あともうひとりはだれだっちゃ!? ちゃはっ!? ひょっとして、それが世に聞くオフ会だっちゃ!? ウチをのけ者にみんなでオフ会を満喫しているっちゃね!? ずるいっちゃ、いけずだっちゃ、今すぐウチもまぜるっちゃ!」
困惑しながら的確なツッコミを入れるアレストリーナ姫が見当外れのやっかみをした。
「アホか。ついさっきまでオレたちはみんなあんたの人間召喚獣やってることすら知らんかったわい。あんただってオレたちにたがいのアドレスとか教えたことないだろ?」
「ん? 云われてみればそうだっちゃね。……じゃあ、なんであんたたちみんなそこにいるっちゃ!?」
「アレストリーナ姫、質問がある」
「なんだっちゃ?」
オレとアレストリーナ姫の会話をさえぎってたずねる瑞希にアレストリーナ姫も真顔でかえした。
「アレストリーナ姫は私たちがみなおなじ高校の生徒だと云うことを知っていたのか?」
「そうなのけ!? そんなの初耳だっちゃ。ウチはみんなの国も住所も知らないっちゃ。わかるはずないっちゃ」
「先の地下迷宮で保護したモッケイモンキーはカオルと一緒に帰還したのだな?」
いきなり質問がとんだもののアレストリーナ姫は瞠目してこたえた。
「よくわかるっちゃね。そのとおりだっちゃ。帰還しかけたカオルの背中へとびついてどこかへ消えてしまったっちゃ」
「そのモッケイモンキーがこのまりるだ」
「ほらマリルン、あそこ見てにっこり笑って手をふって」
朱音さん指導のもと、まりるが意味もわからずPCのカメラに向かって云われたとおりにした。
「そのコがまりるちゃんだっちゃね? カワイイ女のコだっちゃ。……って、モッケイモンキー!? あのちんまいモッケイモンキーがどうして女のコの姿をしているっちゃ!?」
「そして、ついさっき私たちは地球でグラゴダダンひきいる召喚獣の襲撃をうけた。おそらく目的はまりるの捕獲だ」
瑞希がアレストリーナ姫の疑問にこたえず端的に説明した。眉間にしわをよせて瑞希の発言を吟味するアレストリーナ姫が数秒フリーズした。回線トラブルではないらしい。
「……なに云ってるっちゃ、そんなのありえないっちゃ! ウチらが地球へいけるなんて聞いたこともないっちゃし、まして地球で召喚獣を使役するなんて……」
「ありえない。しかし、これは事実だ」
瑞希の言葉をうけて地球側のオレたちが全員うなづいた。
「まりるちゃんが人の姿のまま、モッケイモンキーの能力をつかってグラゴダダンの召喚獣をやっつけちゃったんです」
「いやいやナナミ、冗談ポイのすけだっちゃ。……さてはミズキもナナミもカオルにヘンな病気を感染されたっちゃね?」
「どんな病気だ? 失礼なことをぬかすな」
オレのツッコミに思考回路パンク寸前のアレストリーナ姫がキレた。
「ワケわからんのはウチの方だっちゃ! みんなどうかしてるっちゃ!」
「ワケがわからないのはこちらもおなじだ。しかし、グラゴダダンとグラゴードリス皇国はなにかよからぬことをたくらんでいるらしい。アレストリーナ姫にはそれを調べてほしい」
どこまでも冷静な瑞希にアレストリーナ姫も落ちつきをとりもどした。アレストリーナ姫とてただの小娘ではない。あくまでも皇女だ。アホでも皇女だ。
「もうひとつ。モッケイモンキーまりるをそちらで保護してほしい。おそらく、まりるこそ陰謀のカギとなる特別な存在だ。呪印でまりるをアレストリーナ姫の召喚獣にしておくだけでもグラゴダダンは手がだしにくくなるはずだ」
「モッケイモンキーの保護はお安いご用だっちゃ。でも問題はグラゴダダンとグラゴードリス皇国の探偵だっちゃね……」
豊満な胸の前で腕組みしてアレストリーナ姫が沈思した。最低でも国家間、ヘタすりゃ惑星(異世界)間問題にも発展しかねないデリケートな案件だ。おおっぴらに調査することはできない。




