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V-203 戦闘開始

 中継点を出発してから、すでに8日が経っている。後2日の距離らしいのだが、小惑星がどこにあるのかも分からない。

 リバイアサンは現在逆方向に加速を継続している。本来ならば進行方向に足が向くんだろうけど、俺達の足はしっかりと床についているな。

 今のところ何処にも問題が見られない。重要なシステムについては何重にも冗長化を行っているが、今のところ故障したという話さえ効かない。

 リバイアサンの減速中に外に出掛けた連中は、戻る時の速度制御に苦労しているみたいだな。操縦に慣れる間は、リバイアサンの加減速は行わない方が良いのかも知れない。


「管理局の巡洋艦がリバイアサンの目的地に先行しているようです」

「見るだけなら良いが、邪魔をするなら脅かしてやろう。こちらの目的地は事前に知らせているんだ。それを利用してるならアリスで出掛けて来るよ」


 たぶん、偵察って事だろう。小型の無人機位は近づけても良いが、邪魔なら破壊するだけだ。それ位のリスク管理が行えるようなら良いんだが、文句を付けてくるようなら管理局は必要ない組織となるだろうな。


「ドローンを先行させようかしら?」

「探査用ですか?」

 

 俺の問いにカテリナさんが仮想スクリーンを開いて説明を始めた代物は、ドローンって感じじゃないな。

 ゼロの無人機タイプそのものだ。パイロットが必要ない代わりに燃料電池スペースを増やして3軸の反重力システムを搭載している。

 多脚駆動装置はより大型で太い構造にして左右10本程にしてるから、カブトガニみたいだな。武装が40mm機関砲と100kgノイマン効果弾とはね。


「小型の分析装置を搭載してるし、カメラとレーダーも付いてるから、ドローンよ」

 最後にカテリナさんが弁明してるけど、展望ブリッジに集まってる連中は誰も、その言葉を信じていないようだ。

 数機あれば、管理局の航宙巡洋艦を沈められるんじゃないか?


「……で、何機搭載してるんです?」

「広範囲に探ろうとしてたから、6機搭載してるわ。スペック上は12機搭載出来るわ」


 リバイアサンが超大型艦だから、そんな事も出来るんだろうな。ドローンというよりは、無人攻撃機に近いんじゃないか? それなら、脱出用の小型艦を搭載して欲しかったぞ。


「せっかくですから使ってみましょう。2機先行させて、我々の目的地と航宙巡洋艦の中間点約5万kmに展開しておけば十分です。

 レイドラは管理局に『条約違反行為が起きそうだ』と連絡してくれ。リバイアサンは88mm砲を持っていることをちゃんと告げてくれよ」


カテリナさん達がにこりと微笑むとソファーから腰を上げる。後は連中の武装が問題になるが……。


「アリス、管理局所属の航宙巡洋艦の武装は分かるか?」

『管理局の巡洋艦は2種類です。船団護衛用の巡洋艦に、攻撃型の巡洋艦がありますが、現在リバイアサンの目的地に急行しているのは攻撃型です。

 武装は105mmレールガン1機に、炸薬量3tの大型ミサイル発射口2機、軌道爆雷投射機1機です。艦載機はありませんが、戦姫を2機搭載可能です』

 

「ドロシー、物理兵器の防衛は可能なのか?」

「反重力システムを運用して高速物体を減速して偏向させることができるよ」

 

 要するに直撃は避けられるって事だな。

 遠距離からの攻撃ならそれでいいだろうが、戦姫が接近した場合は問題だろう。

 やはり、迎撃って事になりそうな気がするぞ。


「ドローン2機の射出終了。リバイアサン目的地から5万kmで待機予定」

 スピーカーからドロシーのアナウンスが聞こえてきた。

「これで、準備OKなの?」

「いや、カテリナさんの事だから、もう1つ仕事が増えそうな気がするな」

 


 しばらくすると、笑みを浮かべたカテリナさんとレイドラが展望ブリッジに帰ってきた。

「何となく理解は出来るんですが、どんな通信を巡洋艦に送ったんですか?」

「再度目的座標を送ったわ。10万km以内への接近はリバイアサンへの敵対行動とみなし攻撃の対象となることと、条約番号も送り付けといたわ」

「管理局からは、所属する巡洋艦にそのような場所にいる艦はいないとのことです」

 

 攻撃部隊の暴走ってやつかな? 管理官と同行してきた補佐官のような連中がいるのだろう。まあ、確かに上手く拿捕出来れば、昇進は思いのままなんだろう。


「アリス。場合によっては出動になるぞ」

『了解です。ドローンへの攻撃、または戦姫の出撃が攻撃型巡洋艦の最後になるでしょうね』

 

 アリスの言葉に皆が頷いてるけど、それってある意味宇宙戦争の始まりになるんじゃないか? 管理局との約定を盾に申し開きは出来そうだけど、あの巡洋艦にどれだけの人員が乗船してるんだろう。攻撃は被害を最小限に叩く事になりそうだな。


仮想スクリーンを拡大して、戦況図を作成する。

展望ブリッジでも指揮が可能なんだから、ドロシーの能力は絶大だな。

俺達の目的地とリバイアサン、ドローンそれに攻撃型巡洋艦の位置が表示される。

操船ブリッジにはドミニクとフレイヤが当直に立っているようだ。残った俺達が緊張した時を過ごす。


『巡洋艦より戦姫が出撃。リバイアサンの目的地付近で待機するようです』

 赤で表示された巡洋艦から小さな赤の輝点が2個分離すると、ドローンの展開方向へ急激に距離を狭めている。


「操船ブリッジに連絡。ドローン1機を巡洋艦方向に移動。新たに4機のドローンを射出。後方からの攻撃コースに乗せろ!」

「ドローンを襲わせるのね?」

「先手を取らせた方が、後々の事を考えると……」

 皆の顔は、納得しかねるという感じだな。だけど、それでも十分に間に合う話だ。


「ドローン破壊は宣戦布告と巡洋艦に伝えてくれ! 俺はアリスで待機する。破壊と同時に巡洋艦を攻撃するつもりだ」

 動力炉にダメージを与えれば、漂流艦になるだろう。助かるかどうかは管理局の問題だな。

 席を立って、ブリッジを出ようとしたら、カテリナさんが付いてきた。俺の手を取って向かった先は、後方にある円柱じゃないか。


「この端から2番目が駐機エリアよ。カンザスと似たシステムを採用したわ」

 にこにこしながら説明してくれたけど、ちょっと不安だな。ちゃんとテストしてるんだろうか?

 円柱に付いたスイッチを押すと、円柱の一部が半分に開かれ、中にある透明なカプセルの開口部が現れる。

 カプセルに入って、足元のスイッチを踏むとカプセルと柱の開口部が閉じると同時に足先に向かって落ち始めた。

 エレベーターの下降状態と似た感覚を味わうと、直ぐに停止する。一気に頭に血が上ったぞ。もう少し減速はゆっくりにして貰いたいな。

 カプセルの開口部が開くと、駐機エリアが広がっている。ハンガーに固定されているのはアリスとムサシだが、他に2機を収納出来そうだ。

 ベレッド爺さんが、俺を見つけて近寄ってきた。


「出撃するのか? 相手は戦姫じゃぞ!」

「分かってます。性能の差を一度は見せ付けないと、何度でもやってきますよ」

 

 ポンポンと俺の腰を叩いて去っていく。俺を心配してくれたんだろう。黙って、後姿に頭を下げる。

「アリス。搭乗するぞ!」

『装甲板を開きます。続いてコクピットを開きます』


 このエリアはかなり重力が軽減されている。足が床にどうにかついてる感じだ。アイスに向かってジャンプすると装甲板にたどり着く。

 コクピットに収まり、シートベルトをすれば、後は連中の行動を待つだけになる。


『高機動を実行するかもしれません。あらかじめ擬態を解除します』

 目で見ていたスクリーンが頭の中に再現される。周囲数万kmの空間情報がくっきりと脳裏に浮かんできた。

 あまり擬態を解く機会はないが、これが解除した状態なのか……。まるで、アリスと一体になったようだ。


『敵戦姫ドローンを確認。現在、距離2万km』

「次元の歪みを使って巡洋艦の側面500mに出る。巡洋艦の動力炉を停止できるか?」

『動力炉の冷却装置を破壊します。数分以内に動力炉を停止しなければ暴走するでしょう。照準点は私が、トリガーはマスターに任せます』


 ドローンの大きさは10m程なんだが、まだまだ攻撃には移らないようだ。ドローンが武装しているとは思っていないのだろうか?


『ローザ様の駆る3型と4型の相違を確認しました。基本性能は同じですが、空間機動能力が初期クライン機関の搭載で向上しているだけのようですね』

「それだけの性能差でかつての戦に勝利を収めたってことなのか?」


 一撃離脱なら同性能、巴戦で有利になったぐらいらしいが、そんな事で地上の戦姫を3機残して太陽に放り込んだというのか!

 それで、あんな上から目線の会見になったわけだな。少なくとも管理官は俺達の戦力が普通じゃない事を知っているはずだ。やはり、過激派はどこにでもいるようだな。


『距離2千kmでレールガンを発射した模様です。ドローン、レールガンの3斉射を回避しました』

「リオ君聞こえる! 始まったわ」

「確認しました。破壊と同時に行動に移ります。あまり性能の良い戦姫では無さそうですね」


 カテリナ博士の通信に答えたけれど、それほど当たらないものなんだろうか?


『ピンポイントに近い狙撃ですし、持っているレールガンもデイジー達と類似したものです。操縦系統も似ているなら、狙撃は100km以下でなければ当たらないでしょう』

「1機を固定してやれ。でないといつまでもあたらないんじゃないか?」

『了解です』


 苦笑いしそうな声でアリスが伝えてきた。よくそんな戦姫を先行させてきたな。

 数分後にやっと、ドローンの破壊が出来たようだ。距離は50kmと言うから、相当ひどい腕なんじゃないか?

 破壊と同時に1機が巡洋艦後方に回り込んでいるドローン群に向かって移動し始めた。

 もう1機はリバイアサンの目的地に急行しているようだ。

 

「アリス、予定通り巡洋艦の側面に移動だ。姿を相手に見せてやれ。後は予定通り動力炉を破壊する」


 俺の言葉が終わると同時に視界がひずむ。

 突然俺の視野一杯に巡洋艦の姿が広がった。全長は200m程だが、舷側の窓に俺達を見るために慌てて駆け寄って来る兵士の姿が良く見える。


「動力炉を破壊する!」

 次元断層に伸ばした腕が、ライフル型レールガンを引き出した。視野にターゲットスコープが表示され、巡洋艦の映像の一部が赤く表示される。

 目標とターゲットスコープが重なった時、躊躇わずにトリガーを引いた。

 ズン! と言う反動が反って来る。姿勢制御はアリスが行っているからほとんど地上と変わりなく撃てたようだ。


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