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V-196 中継点への報告


 パレスの会議室に、20人を超える男女が集まっている。騎士団領の宰相となったザクレムさんはラズリーとマリアンの他に2人を連れているし、商会の連中も8人が来てる。ガレオンさんは妻の1人と部下1人の3人だな。それに工廟の代表者が5人だ。いつの間にか増えているような気がするラボの連中も代表者を2人ずつ送ってきている。

 騎士団としては、ドミニクとドロシー、それに俺の3人だ。これ以上増えると専用の会議室が欲しくなるな。

 

 楕円状に並んだ席は俺の正面がザクレムさんだ。

 俺達が席に着いたことを確認して、その場で話を始めた。


 「我らヴィオラ騎士団領は、年を重ねるごとに施設が整い、また経営についても人的資源が大きく伸びていますから、現時点では大きな問題は発生しておりません。横の連絡についてはノンノの働きで全て行われております」

 

 集まった連中も、その話に異議はないようだ。頷きながら聞いている。弑さな問題なら各部署で解決できるだろう。この場で報告するような課題が無ければ十分だ。

 ザクレムさんの報告に俺も大きく頷いた。了承と受け取っておけば良い。


 「今回集まってもらったのは、他の王国と騎士団の動きについて知ってほしいからだ。中継点が新たに3か所出来そうだ。ドロシー、スクリーンを開いてくれ」

 

 大陸の地図が俺の後ろに投影される。後ろを振り返りながらレーザーポインターを使いながら話を進める。


 「現在、ウエリントン王国の西には4つの中継点がある。その内の1つが俺達の騎士団領になる。ローザ達が防衛している小さな中継点が最も西だったが、その北西に新たな中継点が作られる。この中継点はバルゴ騎士団が作るそうだ。バルゴ騎士団はエルトニア王国に所属するから、当然王国の協力は得られるだろう。かなり大きな中継点になるはずだ。

 次に、海岸地帯にあるテンペル騎士団が経営している中継点の西に新たな中継点を作る計画がある。これは計画段階だから具体化するのは少し先になるだろう。

 最後に、現在もっとも西に位置するこの中継点の先に新たな中継点が作られる。この中継点は3つの王国が共同で管理するらしい。少なくとも3隻の巡洋艦がこの中継点を守護するはずだ。

 これら中継点の建設資材等の発注が今後予想される。商会にはそろそろ打診があると思う。これらの位置関係と流通ネットワークを良く理解しないと商会の運命を左右しかねないぞ」


 俺が席に着いたところで、ドロシーが各自の端末に関連情報を送信している。皆手元の資料を読みだしたところで、バニイさん達がコーヒーを運んでくる。タイミング的には丁度良いな。タバコを取り出して一服を始めたところで、工廟の代表者が口を開いた。


 「これによると、動力炉はあれを使うのか? それにあの反重力装置がこれほど必要だということは……。中継点を動かすつもりか!」

 

 予想される依頼基数を見て驚いてるな。ドロシーを見て俺が頷くと、俺の後ろに投影されたスクリーンに変わったラウンドクルーザーが映し出された。


 「形は白鯨に似ているが、大きさ的にはリバイアサンに近い。これが新たに作る最も西に位置する中継点の姿だ」

 

 ドロシーが中継点の概要を簡単に紹介する。その最大の特徴は移動することだ。移動速度は通常のラウンドクルーザー並みの速度を保つ。この特徴がどれほどの影響を持つか、この場の連中に理解できるかな?


 「移動要塞……」

 誰かの呟きが聞こえる。


 「その認識で構わない。だが、軍用ではないぞ。これならカンザスで容易に落す事が可能だ。だが、巨獣に対しては十分に移動要塞としての機能を持てるだろう。最終形態は少し変わるかも知れないが、この中継点の持つ影響は計り知れないところがある」

 

 一同、声も出ないか……。まあ、その気持ちは分からなくはない。カテリナさんだって思わず俺の首を絞めたほどだからな。

 

 「特需じゃな。カテリナ博士の援助は期待して良いのじゃろうか?」

 「でないと無理でしょう? それにガネーシャのラボも強力出来るはずよ」


 いち早く、現実に戻ってきた隠匿工場のドワーフ達の代表の疑問にカテリナさん達が答えてくれた。

 

 「そうするとウエリントン王国から西に合計7つの中継点が出来るという事になります。物流が加速しますし、東の中緯度付近を探索している騎士団の探索場所を西に切り替えるかも知れません」

 「西への探索は3王国が条件を出す可能性が高くなっています。騎士団そのものには制約を加えることはないでしょうが、使用するラウンドクルーザーに対して、定期点検の義務を負わせるようです。でないと、いつ壊れても良いような老朽艦までもが西を目指します。これは避けるべきでしょう」


 「そうなると、ラウンドクルーザーの点検もこの領地で行う事になりそうじゃな。専用の部隊を作ることも考えねばなるまい」

 

 西の桟橋1つを、そのような用途にしないといけないかも知れない。

 商人達も、通常の補給やコンテナの受け渡しではなく、10日以上の騎士団員の滞在が期待できるし、交換部品の調達や王都への人員輸送等を請け負えることになる。今までとは違った商売が出てくる可能性に期待感が高まっているようだ。


 「俺からの話は以上だ。いよいよ3王国の本格的な大陸西部への進出が時間の問題となってきた。俺達の領土維持も大事だが、バルゴ騎士団の中継点建設には便宜を図ってやりたい。エルトニア王国の工兵隊が進出してくるだろうが、大隊規模なら1千人を超える。建設資材と共に食料輸送については協力を打診されている。輸送はデンドロビウムを使えるだろう。それ程頻繁には輸送を行わないはずだ。それに、新たな輸送専用飛行船が作られつつある。それを投入する可能性も高い」


 「正しく、我ら商会の資材調達能力が試されそうですな。ですが、我らもこの中継点の開業に深く係わった実績を持っております。資材リストを事前に作って先方に届ける位の事はしませんと……」

 

 それによって、バルゴ騎士団の中継点に事務所を出すぐらいのことは出来そうだな。

 こいつ等もかなりしたたかな連中らしい。

 

 王族達の今後の行動を教えたところで、俺達の会見は終了する。後は聡明な連中のことだから、これだけの情報でも十分に彼らは動いてくれるだろう。

 午後は、宝石ギルドに連中がやってくるんだったな。

 宝石の競売が済んでしばらく動きは無かったのだが、やはり俺達の原石コレクションが気になったのだろうか?


 簡単な昼食を終えて、アリスと移動要塞の概念設計を進めていると、ライムさんが来客を告げてきた。

 スクリーンを閉じて、ソファーに座って来客を待つ。


 「これは、公爵様。我らの願いをお聞き入れ下さりありがとうございます」

 

 俺の前に立って、丁寧に頭を下げると先ずは俺への礼を言い始めた。


 「前にも言ったと思いますが、騎士団の騎士と思って頂ければ結構です。肩書は領地を賜った上に付いてきたもの。俺はいつでも騎士としてこうっどうしているつもりですから」


 そう言って、彼らに着席を促す。

 再度、俺に頭を下げて3人が席に着いた。この前の3人だな。


 「自己紹介が出来ませんでしたね。我らもあの原石には唖然としていたものですから……。改めて、私はグラムス、宝石ギルドのギルド長をしております。隣がマゼンダ、次のギルド長になりうるものです。最後にフェブナン、ギルドの筆頭鑑定士になります」

 「リオです。以後お見知りおきください。それで、俺達の原石を見せてほしいとのことでしたが……」


 「差支えなければ、是非ともお願いいたします」

 「一応、この部屋の棚に飾っています。存分に見てください。更に、アタッシュケース数個分があります。ケースにイニシャルがありますので、混ぜないように気を付けてください。もうしばらくすれば運んできます。原石だとは分かっていますが、何分その価値が俺達には分かりません。出来れば鑑定結果をリスト化してきただければ幸いです」


 「それは願ってもないこと、出来れば世に出すときはそれを参照願いたいと思います」


 ある意味、符牒として使えそうだな。俺の頷く姿を見て相手も頷いてくれた。

 ライムさんが飲み物を運んでくれた。俺にはコーヒー、来客には紅茶と言うところが微妙だけど、俺が紅茶をあまり飲まないのを知っているんだろうな。

 マグカップに、砂糖3倍をシュガーポットから入れてかき混ぜている姿を、マゼンダさんが面白そうに見ている。彼らも紅茶にミルクを入れて飲み始めた。


 「甘党なんですね。私が今回同行を希望したのは、リオ様に興味がありましたので……。何でも、見つけた原石の半分以上はリオ様が見つけたとか?」

 「ちょっと変わった透き通るような石で少し重いもの……。そんな感じで探したんですが、拾ったもののほとんどが原石だと知って、俺も驚いていたのを覚えてますよ。ある意味、ビギナーズラックの典型だと思っています」


 そんなところに、ライムさん達がアタッシュケースを運んできてくれた。8個もあったのか。俺のイニシャルまであるぞ。


 「このケースの中身とこの部屋にあるものが全てです。ごゆっくり鑑定してください」

 

 俺の言葉に、最初のアタッシュケースを開く。原石は透明な小袋に入って、袋には番号が打ってある。直ぐにマゼンダさんがタブレットを取り出した。鑑定士が卓上スタンドをバッグから取り出して、3種類の拡大鏡と小型のレーザー分析装置までもテーブルに並べだした。白い手袋を3人が着けると、最初の原石を袋から取り出して鑑定作業を開始する。


 「サファイヤ原石です。かなりの大きさが取れますね。30カラットと言うところでしょう。それを取った後にも少し取れそうです。3,200万L以上でしょう」

 「ふむ……。1カラットが2個取れそうだな。3,300万でいいだろう」


 そんな感じで、次々と鑑定が行われる。

 いったいいくら位になるんだろう? 金額を聞いている内に俺の顔が青ざめてきているのが自分でも分かる。普段使わないお金の単位を延々と聞いているのだ。

 十何億かで、次のケースに鑑定が移った。

 しばらく掛かりそうだから、タバコを取り出して火を点ける。ギルドの3人は俺がいるのを忘れているのだろうか? ひたすら機械的に鑑定作業を続けている。


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