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V-186 後は売るだけ


 『特定の波長の紫外線を当てると直ぐに原石を確認できますよ。宝石ごとに異なりますから、高価な宝石を対象に3つほど波長を合成したものを作れば良いと思います』


 一攫千金作戦が立案された。

 他の連中の課題の解決もそれなりの資金が必要らしい。宝石の原石採掘の話をすると、途端に食いついてきたからな。何故か、ローザ達も名乗りを上げたんだが、情報のリークは誰なんだ?


 そんな事で、一月ほどの準備期間を取ってカンザスに乗り込むと、東に横たわる大河に俺達はやってきた。

 久し振りのカンザスのリビングはそのままだが、右側の個室は客室に改造されていた。左側に俺達の部屋が出来ていたのだが俺の執務室は消えていたぞ。まあ、殆ど使わなかったけどちょっと残念な気がしないでもない。


 「それにしても、宝探しとは良いですね。半分は自分の物にしていいって言うのもありがたい話です」

 そんな事を言って、隣のジェリルと頷きながらワインを飲んでいるのはベラスコだ。アレク達もウイスキーを飲みながら頷いてるな。


 「でも、採れないとダメなのよ。騎士団領の改革にはとにかく資金が掛かるんだから!」

 「まあまあ、そんなに熱くならずとも初めて採取する場所じゃ。たんまり取れる違いないぞ」

 ローザ達はヴィオランテで着た探検隊の衣装を着ている。そういえば俺も持ってたな。

 ローザ達も部隊の改造費用を自分達で工面したいようだな。3人でやってきたけどリンダ達はだいじょうぶだろうか?

 

 俺達以外ではカテリナさんとガネーシャの一味だ。まあ、色々と模索してるから彼女達も予算不足に違いない。


 「戦機は近くに置いて頂戴。何があるか分からないからね。それと、これが原石を判別する簡易装置よ。カンザスに戻ったらカテリナさんに再度鑑定して貰うからね。有望な原石は自分達のコンテナに入れておけば良いわ。個人認証キーが付いているから、安心できるわよ」

 ドミニクとレイドラが俺達に懐中電灯のような器具を1個ずつ渡してくれる。これで有効なのは、ダイヤにルビーそしてエメラルドらしい。その他にこれはと思うものがあればカテリナさんが鑑定してくれる事になっている。


 「ところで、宝石の原石とはどんな物なんじゃ?」

 素朴な疑問をローザが出したけど、それは全員の思っている事ではないのかな?

 宝石という言葉だけに舞い上がって、何を探すかを知らないのは問題がありすぎるぞ。ドロシーのバケツに熊手に麦藁帽子というのもちょっと問題だけどね。


 「そうね。ドロシー、ちょっとライブラリーで検索して頂戴!」

 カテリナさんの言葉に、ドロシーが仮想スクリーンで原石をいくつも展開している。どうやら、石英のような透明感があって、少し色がついてるのが良いみたいだな。だけど、ダイヤとガラスは俺には区別が出来ん……。周囲を見ても似たような顔をしてるところを見ると、この企画は失敗だったかな? 上手く1個でも見付かれば良いんだけどね。


 そんな事があったけど、次の日の朝食後には全員が河原に下りて原石を探し始める。

 そんな俺達をかわいそうな目で見ていたトラ族の男達が周囲を円盤機で警戒してるから危険はないに違いない。


 透明な石を探しては、簡易宝石判定機で確認する。そんな俺達の川上ではベレッド爺さん達ドワーフの一段が砂金を探している。

 「まあ、宝石が無くとも砂金ぐらいは取れるじゃろう!」

 そんな事を言いながら始めたんだけど、取れた物の半分は自分の物ってのが効いたのかもしれないな。

 何度か嬌声が上がったところを見ると、それなりに採れてるのかも知れない。


 ん? これは、ひょっとして……。

 宝石鑑定機の特殊な光線に輝いてるぞ。握り拳にも満たない小石なんだけど、見つけたって事なのかな?

 そんな小石を数個拾ったところで、コツが分かってきた。大きな岩ではなく、角張った小石で透明感があるものを探せば良いらしい。

 肩から掛けたバッグに次々と小石を入れていく。


 疲れたところで、タバコに火を点ける。

 ドミニク達は大きな石を丹念に探しているし、ローザ達はくるぶしまで水に入って探しているようだ。

 少し離れた場所で、ガリガリと小石を熊手で掘っているドロシーのバケツには三分の一ほど小石が入っている。あれが全部宝石だったら、俺達が大金持ちだな。


 そんな感じで集めた原石? と思われる石ころをカンザスにあるカテリナさんのラボに持ち込んだ。

 1人ずつ、高性能の鑑定機に集めた物を放り込むんだが、何せ鑑定機の機械的制限でハンドボール程の大きさ以下でなければ鑑定出来ないようだ。その上、重さが3kg以下に制限される。

 過去にそれを越えるような原石は無かったという事だから、それでいいのかもしれないけど、ドミニク達はドッジボールほどの大きさの物まで持ち込んでるぞ。ラボの端で半分に割ってるような音が聞こえてきた。


 「最初は、ドロシーなのね。あらあら、たくさん集めたわね」

 バケツの中身をガラガラと鑑定機に入れるのを微笑みながらカテリナさんが見ているぞ。

 そんな鑑定機は自動化されていて、高品位の原石だけを自動的に選び出し、その外の小石はバケットに落とされるようになっている。

 俺達が固唾を飲んで鑑定機を眺めていると、ころころと数個の小石が木製の箱に転がり落ちた。残りの小石はドカドカと鑑定機の下にあるバケットに落ちている。自動フルイみたいな感じだな。


 「あらら、こんなにあったの? どれどれ……」

 俺達が、カテリナさんに視線を移すと、ドミニクをラボの端から呼び寄せた。


 「至急、商会に連絡して宝石の専門家を呼びなさい。傷があるけど紛れも無く宝石の原石よ!」

 「それなら、逆にこっちから運んではどうです。まだ1人ですよ。これからどれだけ手に入れられるか分からないですからね。それに出所を探られるのも……」

 「そうね。確かにリオ君に言うとおりだわ。10日後にヴィオラ騎士団がこれまでに手に入れた宝石の原石を競売に掛けるという事で関係者に連絡すれば良いわね。だいじょうぶ、私に任せておきなさい」


 ドロシーだけでも結構な額になるみたいだ。

 次ぎはローザだな。大きな袋から小石を鑑定機に入れてるぞ。

 直ぐに、下からバラバラと小石が落ち始めた。それでも、原石が4個、木箱に転がり落ちたぞ。

 フレイヤ、エミーと次々に小石を艦定機に掛けては少なからずの原石を手に入れている。

 レイドラが11個の原石を手に入れて喜んでいるところで、最後が俺の番だな。

 皆の半分ぐらいの小石を艦定機に入れたんだけど、しばらく経っても下に小石が落ちて来ない。最後にバラバラと木箱に小石が山になった時、2個の小石がポトンと下のバケットに落っこちた。


 「壊れてるんじゃないの!」

 「リオが探してきたのは、2個を除いて全て宝石の原石って事ですか?」


 「どうやら、そのようね。リオ君がその気になったらこの惑星一番のお金持ちになりそうだわ。間違いなく全て本物よ」

 カテリナさんが原石を再度良く見ているが、それ以上は呆れてものも言えないって感じだな。


 「さすがは兄様じゃ。明日は我等も頑張らなくてはならん。どんな感じで探すのじゃ?」

 ローザの問いに、周りの全員が俺の言葉を待ってる感じだな。これは早く言っといた方が良さそうだ。


 「拳より小さくて、角張った感じの透明な石を探すって感じかな。それに持ってみると少し重いような感じもしたぞ」

 角張った透明の小さな石で、重く感じる物じゃな! 明日はたっぷり集めるのじゃ!」


 原石だからって、綺麗なわけじゃなかったぞ。艦定機から弾かれた小石は綺麗な色が付いていた。せっかく簡易艦定機を貰ったんだから、それで調べなかったのだろうか?

 自分の鑑定眼で選んでるような気がしないでもないな。

 後は、これの売値がどれ位かが気になるぞ。


 そんな感じで始まった宝探しは5日程続いて、俺達は領地に戻ってきた。一番少なかったのはドロシーだけど、原石の半分は4つに分けて小さな宝石箱に入れて3人の妹達と仲良く分けたみたいだ。

 それに引換え、フレイヤ達は大きな原石を記念に1つだけ手元に置いて全て処分するようだけど、値崩れを防止するために各自が1年に2個だけ処分する事になったようだ。俺はパレスの棚に飾る事にした。単なる石ではあるが、台座を作って飾ると何となく工芸品に見えるから不思議だな。それだけでちょっとした財産になるようだから、次に予算が必要になったときに処分すれば良いだろう。

 皆から半分供出された宝石の原石だが、重さだけで100kgは越えている。3日後に開催される競売にはどれ位出すかをドミニク達は協議中だ。1度に全て放出できればどれだけ良いか。


 「ヒルダが興味深々よ。王妃だけでも7人がやってくるわよ」

 「でも、競売をヴィオランテで開いて良かったのですか? 確かにここよりは王都に近いですけど」

 「ここよりはガードがしやすいわ。トリスタンのところから数人出張ってくるわよ」


 大金が動くという事が、ここでは問題あるらしい。競売は全て現金になるらしいからな。教会からも、現金輸送の特別艇を用意してくると言うから、一大イベントになってきたぞ。

 ローザ達も匿名で俺達に原石の競売を依頼してきた。数は10個だからローザも長く資金源として使うつもりのようだ。


 「でも競売だけじゃないですよね」

 「ああ、せっかくだから皆で休養しよう。ローザやアレク、ベラスコ達も後半には合流できそうだ。その間はガリナム艦隊に守りを固めて貰わないといけないけど、それなりの見返りを渡すつもりだ」


 メイデンさん達に特別ボーナスを支給すると言ったら、動力炉の換装要求をされてしまった。確かに通常の核融合炉よりは、重力アシスト核融合炉の方が小型で出力が出る。話を良く聞いてみると、この間、ローザ達が全て倒したイグナスの群れに間に合わなかったのが悔しいらしい。動力炉の出力を上げて更にガリナムの速度を上げるつもりのようだ。

 アリスの試算では、反重力装置を含めた換装で速度は3割り増しになるらしい。現在でも巡航は時速60kmだから、巡航速度が時速80km近くなる。それは最早、駆逐艦と呼べないんじゃないか?

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