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Vー185 資金難の解決方法


 数機のゼロが並んだ駐機場の地下に、ヴィオラ騎士団領の防衛隊本部があった。

 部屋の入口にそう書いてあるんだから、ここが防衛隊の本部に違いない。どう見てもタダの事務所に見えるんだけどね。

 扉を開けるとカウンターがあって、若いネコ族のお姉さんが受付をしていた。


 「リオと言う者だ。ガレオンさんに会いたいんだけど」

 「ちょっと待ってにゃ。……ああ、ガレオンさんにゃ。レイナムにゃ、リオ様が会いたいそうにゃ……にゃにゃ!!」

 

 どこかにレトロな電話を使って話をしていたが最後は驚いて俺を見てるぞ?

 「領主様とは知らなかったにゃ、失礼したにゃ。すぐに案内するにゃ」

 

 ペコリと俺に頭を下げるとカウンターから出てきて、俺達をカウンター前から奥に伸びる通路を案内してくれた。

 とある扉の前に止まると、コンコンと扉を叩いて開くと俺達を中に入れてくれた。


 「リオ公爵を案内してきたにゃ」

 「ご苦労、下がって良いぞ」

 

 ガレオンさんが鷹揚に机から声を出すと、ネコ族のお姉さんが綺麗な敬礼を返して出て行った。


 「まあ、そこに坐ってくれ。直ぐに俺の副官達がやってくる」

 椅子から立ち上がると、傍らの応接セットに俺達を座らせた。2人で向かいあい簡単な挨拶などしていると、扉が開いて2人の妙齢の女性が入ってきた。


 「俺の副官をして貰ってる妻達だ。マイザにラスティナという。元はヴィオラの騎士だったのだが、後をアレク達に譲った身だ」

 「中継点のタグボートに乗ってたのよ。ガレオンが忙しそうだからこっちに変更したわ」

 「色々と噂は聞いてるわよ。大変でしょうけど、頑張って頂戴ね」


 どんな噂なんだか知りたい気もするけど、俺を見て微笑んでるところを見ると、まともな噂じゃなさそうだな。


 「まあ、飲めるんだったな。ラディ、とりあえずグラスを持ってこい。ところで、何の話なんだ?」

 「ガレオンさんから、周辺警備の要望書が届いたんで、その辺のお話を聞きたいとやってきました」


 ああ、あれかという感じで俺を見つめる。

 渡されたグラスの酒を一口飲んでガレオンさんが話を始めた。


 どうやら、直径100kmの範囲となる俺達の領土の周辺監視を充実したいらしい。今までは、地下を拠点としていたが地上施設を作り始めるとなると、周囲を堅固な壁で固めていない俺達の領土は巨獣に対して極めて脆弱になる。早期発見、早期撃退を信条にしなければならないが、監視は円盤機と上空の科学衛星だけが頼りだ。ちょっとガレオンさんには心許ないという気がしてならないのだろう。


 「王都のような堅固な長城を作るには、俺達の国の財政が不足するだろう。だから東西南北に砦を作って、そこで監視をしようと思うのだが……」

 「言わんとすることは理解できます。南には駆逐艦、北にはゼロを考えていたのですが、やはり即応に課題がありますか……」

 

 「これは何処までやれば安全という事がない。ある意味、俺達が自信を持てる範囲にする事になるのだろうが、この地の冬の吹雪は殆ど見通しがつかなくなるのだ。円盤機も飛ばせず、科学衛星の頼りない映像だけでは、地上施設に責任が持てぬ」


 確かに吹雪に潜む巨獣の話を聞いた事があるな。

 だが、4箇所に監視所を置くだけでは、現状より少し向上するだけだ。ここはきちんとした監視システムを構築しておく必要があるだろう。

 カテリナさんに相談してみようかな? 見通しの利かない場所での監視システムならばきっと興味を持ってくれるに違いない。

 

 「分かりました。白鯨が使っている地上探査用のギガントを改造してみますか? 設計段階でエミーが周辺監視用の機種なのかと言ってたぐらいですから、大きな改造をせずとも周辺監視は出来ると思います。移動できますし、武装は40mm長砲身砲で砲弾は水素爆轟ですから、数台あれば北部の監視は十分でしょう。南については、ヴィオラ騎士団領の存在を示すために少し大きな砦を作っても良さそうですね」


 「あのギガントを使うのか? デモは北部の尾根で見せて貰った。あれにセンサーを付けるのであれば固定式の砦よりも遥かにマシだ。値段は張るかも知れんが安全の為だ。その辺りはドミニク良く言っといてくれよ」


 問題は予算だな。まあ、何とかなるだろう。

 ガレオンさんに頷いたところで、近頃の騎士団領の話に話題が変わった。課題についてはこれで終わりになる。


 1時間ほど雑談をして、パレスに戻って来ると、リビングには誰もいないぞ。

 皆、自分達の課題でまだ困っているのかな?

 簡単に課題の対応策を纏めて、ドミニクにメール文にして送っておく。


 『ギガントの索敵バージョンですが、以外に簡単ですね。鉱石探査システムをレーダーシステムや音響、感熱センサーのパッケージに交換するだけで十分です。頭部にレドーム用のタンコブが付きますが、それ程違和感は無いでしょう。これが外形図になります。走行性能はそのままですから、白鯨用の予備としてもシステム換装で対応できます』


 一段落したところで、俺の前に仮想スクリーンが展開されて、アリスが提言してきた。

 

 「ありがとう。エミーの洞察力に感謝だな。ところで値段は?」

 『1隻当たり、10億Lと言うところでしょうか。設計変更が無い事と既に2隻を作っていますから、その分お得になります』


 これを少なくとも3隻、そして南の砦に学園か……。

 海賊でもしたくなってきたな。


 「ちょっと面倒だけど、短期間でお金を稼ぐ方法を探さないと大変だな。王国は長い年月で現在の形を作ったんだろうけど、俺達は短期間でそれをやろうとするからには、どこかで無理が出てくる。そもそも予算があまり無かったこともあるけどね」

 『宝石の鉱脈でもあれば良いのですが、現在の宝石の原石は殆どが鉱脈ではく、原石の形で大河周辺で見付かったと文献にあります。宝石の原石だけを狙う騎士団もあるみたいですよ』


 大河周辺部で宝石の原石を捜す騎士団というのもおもしろそうだな。

 仮想スクリーンを広げてそんな騎士団を探してみる。そんな騎士団の狙い目は、ウエリントン王国の西の大河だろうから、河口から少しずつ上流に移動してみると、中流付近の数箇所に小型の駆逐艦が止まっていた。

 10機にも満たない獣機が河川敷を探し回っているようだ。

 場所的には河の急流屈曲部になるのか……。そこならたまに発生する激流で土地が削られて岩石が露出するようだ。要するに狙い目ってことだな。

 そんな中、1機の獣機が何かを見つけたようだ。仲間が集まって岩をどかして何かを掘り出している。


 『どうやら、エメラルドの原石のようです。品位が高いようですから、かなりの報酬を得る事が出来そうですよ』

 「彼らの通信を聞いてたのか? まあ、それはどうでもいいが、俺達でも可能だろうか?」

 『更に上流で探すなら誰も文句は言わないでしょうね。彼らは戦機を持ちません。あのような採掘では北緯40度を越えるのはかなりのリスクが伴います』

 

 北緯50度以上で探すなら誰も文句は言わないって事か?

 たまに皆で探すのもおもしろそうだな。

 だけど、あれほど小さな駆逐艦を使って鉱石採掘をするのも、騎士団の仕組みを理解するには丁度良いんじゃないか?

 騎士団養成所というか、ヴィオラ騎士団の将来の団員を養成するための練習艦を作るのもおもしろそうだ。そんな選科を学園に作ればどうだろう?


 『あれは少し小さ過ぎます。100tコンテナを2つは牽引したいですね。少し考えておきます』

 アリスとしても直ぐには思いつかないって事かな。騎士段を養成するという事自体が初めての事だ。そんな養成課程に必要な機材、装備と色々考えなければならないのかも知れないな。


 最後の課題は、他の騎士団との同盟に関することだ。

 ベラドンナ騎士団、ガリナム騎士団と同盟を結んでいたが、ベラドンナ騎士団とは同盟を解除したし、ガリナム騎士団はヴィオラ騎士団に吸収してしまった。

 ドミニクが俺に丸投げしたという事は、ドミニクとはまったく面識の無い騎士団なのだろう。今では12騎士団に次ぐ位置を持っている俺達だから、中小騎士団が同盟を持ちたがるのも理解出来ることではあるのだが……。


 「ドロシー、同盟を望んでいる騎士団は何処の騎士団だか分かるかい?」

 「リストを見てみる?」


 ドロシーが自分の端末を使って俺達の前に仮想スクリーンを展開した。

 そこにはずらりと騎士団の名前、ラウンドクルーザーの大きさ、団員の構成と規模、主な活動地域、今までの賞罰が並んでいる。

 こんなに同盟の要請が来てたのか! 30以上もあるぞ。

 これは下手に同盟関係など結んだら、結ばなかった騎士団から苦情が出そうだな。同盟関係とまでは行かないが、南のテンペル騎士団やタイラム騎士団とは同盟とまでは行かないがそれなりの友好関係を結んでいる。

 そんな関係が何時までも続いてくれると、俺達の突飛な行動を上手く隠してくれるんだが、それ以上の関係にはなれそうも無いな。となれば、どの騎士団とも同盟を考えずにいたほうが良いんじゃないか?

 騎士団の人員不足については他の騎士団と同盟を結んで充足を図るのではなく、俺達の活動に合った騎士団要員を育て上げる方が、将来的ではある。そういう意味では、この課題は学園構想ともリンクしそうだな。


 そんな俺の構想をアリスがトレースしているのが分かる。きっと学園構想が形を取った時に提言の形で組み込まれるのだろう。


 「あら? 2人だけなの」

 俺の隣に腰を下ろして、膝にドロシーを抱き上げたのは、カテリナさんだった。

 2人になったからか、ライムさんが、ビールのジョッキを持ってテーブルの前に置いてくれた。

 

 「ありがとう。気が利くわね」

 「この間、運んで貰ったにゃ。人気があればこの酒蔵と契約するにゃ」


 新たな、酒造って事か? それならと、冷えたビールを喉に流し込む。

 中々の味じゃないか! 俺は契約に賛成するぞ。

 

 「ドミニクが皆に課題を出したらしいけど、リオ君はどうなったの?」

 「一応、答えはあるんですが問題は資金ですね。ここに戻った時は海賊を始めようかと思ったぐらいです」


 そんな俺の言葉を聞いて、大きな声で笑い出した。ツボにはまったのかな?

 「昔、主人が同じような事を言った事があるわ。やはり資金難に苦しんだ時よ。それで、その時に考えた手段と言うのが……」

 「宝石の原石採掘……、じゃないんですか?」


 カテリナさんの笑い声がピタリと止まった。ゆっくりと俺の方に顔を向ける。

 「その通りよ。驚いたわね」

 

 先程仮想スクリーンで見た採取光景を元に、北緯50度以北で探す事を提案してみた。

 かつて、同様の事をやったみたいだから、カテリナさんの昔の話は参考になる。

 まあ、宝石の原石だって鉱石には違いがない筈だ。手っ取り早く資金を稼ぐ為に、俺達でやってみてもおもしろそうだしね。

 

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