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V-181 多角経営?


 最初の高緯度地方の鉱石採掘は数日で終了した。

 やはり、鉱石の量が半端じゃない。至る所に鉱石の露頭を見ることが出来るほどだ。


 「一箇所で200tと言うのも凄いわね。デンドロビウムは正解だったわ!」

 「先ずは無事に帰った事を祝おうよ。この世界初の快挙だからな」


 先達が失敗したのは、移動速度だったんだと思う。

 荒地用のラウンドクルーザーでは、斜面の移動は困難だ。巨獣に襲われればそれまでになる。

 ガネーシャの考えたトリケラ型の高緯度地帯用ラウンドクルーザーでも、クレパスの少ない地方ならそこそこ行けるんじゃないかな?

 設計を完成させるように言ったカテリナさんの言葉はやはり見るものがあったという事だろう。


 「それ程高緯度地方に行かずに、近場で鉱石を探しても十分な対価が得られそうだ。やはり、高緯度地方は今まで誰も成功させた事が無いだけに、宝の山になるな」

 「高々500kmほど進んだだけです。山脈方向の北には200kmも近付いていませんよ。まだまだ高緯度地方とは言えません」

 

 俺の言葉に、アレク達が頷いている。

 彼等なりに分かっているんだろうな。嬉しいことではあるが、こんなに簡単な採掘ではない事を知っている筈だ。それでも、北に向かって無事に帰ってきた事には変わらないという事なんだろう。


 「まあ、そう硬くなるな。とりあえずは北に向かって無事に鉱石採掘を済ませたのだ。これは祝杯を挙げるだけのことはあると俺は思ってるんだがな?」

 「ということで、これは俺のおごりです」


 紙包みを取り出すと、サンドラの前に置く。

 何はともあれ、最初の採掘が無事に終ったことは確かなんだから、祝杯はアレクの言うとおりだろう。俺達のグラスに酒を注ぐと、残りの酒を持って、ゼロと獣機の機士達のところに行くと同じように酒を注いでいる。


 「とりあえずは、乾杯だ。高緯度地方の新たな幕開けを記念して……。乾杯!」

 オォォ!っと休憩所中に声が上がる。

 戻れば彼らで別に祝うのだろうが、ちょっとした祝杯を挙げるのは士気保つのにも都合がいい。


 「色々と見えてきたわね」

 「やはり、1度は出掛けないと、見えないものはたくさんあります。今回、55mm砲を改造する事が急務である事が分かりましたし、デンドロビウムの簡易版の製作も色々と用途がありそうです。緊急事態対応の船はカンザスから白鯨のような形にすべきではないでしょうか?」

 

 カテリナさんが端末を取り出して仮想キーボードを叩きながら俺の意見をメモにしている。

 まだまだ宇宙に出掛けるには、色々とそろえる物が必要だから、ガネーシャに考えさせるんだろうか? ちょっと気の毒に思えるな。今は機動桟橋の設計とデンドロビウムの普及型を設計してる筈だからな。


 拠点に戻ると、白鯨の乗員は2週間の休暇を過ごしにビオランテに向かった。その間に、出て来た問題点をベレッドじいさんとカテリナさんが手分けして対処するらしい。カンザスは拠点から西に2千kmほど離れて鉱石採掘の最中のようだ。

 この間に俺達は拠点の雑務をこなさなければならない。もっとも、カンザスが帰って来たら、一緒に休暇を過ごす事になってはいるようだ。


 「私達が、状況を見てくるからリオはのんびり構えていなさい。一応、一国の主なんだから、ホイホイその辺に出歩くのは問題よ!」

 「自覚はないんだけどなぁ。それなら騎士団長のドミニクの方が出歩くのが問題じゃないのか? ここは騎士団領だぞ」

 「騎士団領でも、領土はリオの所領よ。だから、私は庶民になるのよね~」

 

 それって、俺を陥れていないか? テロの目標になるように周りが動いているように思えるぞ。

 まあ、パレスでジッとしてれば良いんだろうけど……。

 ドミニク達が視察と調査の担当をパレスのリビングで始めたので、少し離れたソファーに移動して、コーヒーを飲む。

 のんびりしていろと言われても、根が貧乏人だから何かすることを探さないとな。

 

 何の気なしに、端末を使って同盟を解消して拠点を去ったベラドンナ騎士団の様子を見てみる。アリスに位置を探って貰うと直ぐに2隻のラウンドクルーザーがゆっくりと荒地を進んでいるのが見えた。曳いているバージの半分以上に鉱石を満載したコンテナが搭載されていた。中緯度地方を巡航しながら鉱石採掘をしているようだな。戦機が3機あれば心強いに違いない。


 『ローザ様はちょっと忙しそうですよ!』

 アリスの言葉と共にスクリーンが切り替わると、3機の戦姫がチラノの群れを包囲しながら殲滅している様子が映し出された。チラノ10頭ぐらいだから、殲滅は時間の問題だろう。少し離れてアンゴルモアの姿が見えた。


 『ガリナムが全速で救援に向かっているようですが……、到着する前に決着が付きそうです』

 それは、メイデンさんが残念がるだろうな。数匹残してくれれば良いんだけど、ローザ達は全力で立ち向かってるから、残すようなことはないだろうな。


 「ローザお姉さんが頑張ってる!」

 「ああ、頑張ってるな。デイジーも今夜連絡を入れてあげれば、喜ぶと思うよ」

 

 俺の言葉を聞いて嬉しそうに頷いてる。あまり頭を振ると、ギガントが落ちないか心配だけど、ジッとしがみ付いていえるみたいだ。初めての人が見たら、少し大きなアクセサリーと思うかも知れないな。

 ある程度の精神感応を持つという事だが、デイジーと共感する事が可能なのだろうか?


 『出来るという事でしょうね。私とマスター程の共感は出来ませんが、ギガントとデイジーの間で弱い電磁波の相互通信が行なわれています。ローザ様達であれば脳波という事になるのでしょう』

 「有機生命体と無機生命体との共感がこんな近場で行なわれているとはね。世の中何が起こっても不思議じゃないってことだな」

 『その内、3人娘が欲しがりますよ』

 「そうだね」


 まだ人格がそれ程固まっていないようだが、彼女達を取り巻く人間達が個性的だからな。それぞれ違った人格に育つと思うぞ。

 「アリスとお話ですか?」

 新しいコーヒーをエミーが俺の前に置くと、隣に腰を下ろした。


 「ああ、デイジー達とギガントについて話してたんだ。その内ノンノ達が欲しがるんじゃないかってね」

 「その時は、与えてあげましょう。彼女達の働きは私達と比べてかなり高い給与でないと引き合わないはずです。仕事以外は、普通の娘達のように暮せればと思っています」


 仲間だからな。俺もそれで良いと思う。どんな娘に育つか楽しみだな。


 「ローザがチラノを狩っていたよ。ガリナムが駆けつけていたけど、あれは間に合わないな。メイデンさんの機嫌が悪くなりそうだ」

 スクリーンにはアンゴルモアに悠々と引き上げる3機の戦姫が映し出されている。


 「まだ、自分本位のところがありますからね。2、3頭チラノをガリナムに任せられるような心くばりは出来無いようです」

 そう言いながらも、エミーの顔は微笑んでいる。時分には無い妹の行動力を少しうらやんでいるのかな? それに、最西の中継点をキチンと防衛しているローザを誇りにも思っているのだろう。


 どうやら、エミーを残してフレイヤ達は中継点の各所に散って行ったようだ。それぞれ状況を確認するらしいのだが、結局誰も誘ってくれなかったな。

 まあ、言われたとおりのんびりしてるか……。


 「カテリナ博士とガネーシャ博士がやって来たにゃ!」

 ライムさんが2人を案内してきた。ライムさんはエミーの護衛が任務だから、カンザスから下りて俺達と常に同行してくれるみたいだ。

 パレスには妹達がいるんだけど、どんな感じに役割分担してるんだろうな?


 「あら? 3人なの」

 「ええ、中継点の様子を見に出掛けたようです」


 そんな話をしながらテーブル越しのソファーに腰を下ろした。

 改めて、ライムさん達がコーヒーと紅茶を運んでくる。3杯目になるけど、ここはありがたく礼を言ってマグカップを手に取る。


 「それで?」

 俺の言葉にカテリナさんが微笑む。


 「リバイアサンの製作を始めたわ。リオ君のメールで、その外に必要な宇宙服や簡易スラスターも目途が付いて来たわ。まあ、そっちは私が進めているんだけど……」

 「デンドロビウムの注文が殺到しています。多目的搬送機ですから、従来の高速バージ搬送船よりも遥かに多くのコンテナ輸送が出来ますし、空を飛びますから巨獣を心配する必要もありませんが……」


 話を聞く限りにおいて、特に問題はないと思うんだけどね。

 話を最後まで聞いて、どうにかその問題が見えてきた。従来の搬送業者の領分を侵食することになれば、その業者達が廃業する事になるということだな。

 かといって、量産型デンドロビウムのコストはかなり高いものになる。搬送業者が購入するには予算が足りないって事になるのか……。

 

 「いっその事、俺達で搬送業を初めても良いんじゃないか? 別に従来の搬送業者を廃業に追い込もうなんて考えは無いんだし、彼らと共同で事業を展開するのもおもしろそうだ。量産型デンドロビウムを数台作って、彼らに運用して貰う。利益の分配は量産型のレンタル費用を差し引いて平等に配分すれば彼らに不平は出ないと思うんだが?」


 「おもしろそうなアイデアね。彼らに運用させるとなると、操縦系にかなりの改造が必要だけど、それは何とかなるわ」

 「それでしたら、1度彼らの代表者と調整して貰えませんか? 私の所に何度も営業妨害の訴えを寄こしてくるんです」


 そっちの方が問題だな。少し法律が分かる者を同席させた方が良いかも知れないぞ。


 「私も同席させてください。王立学府では法学を学んでいました。少しは協力できると思います」

 「ありがとう。先ずは先方の意見を聞いてみよう。既得権益とは言わないまでも、彼等なりに物流を今まで制御してきたんだからね。それは、賞賛すべき事だと思うよ」


 「そうね。リオ君の考えは正解だと思うわ。でも、ガネーシャのようにラボの主には荷が重い話になるから、私からもお願いしたいわ。量産型1隻は2ヶ月先に出来る状況よ。レンタル費用は儲けを考えずに製造コストのみで計算してあげる。3隻で十分でしょう? それ以上に欲しい場合は、儲けを含みたいわ」

 かなりの譲歩だな。それで、交渉が決裂した場合は俺達で搬送業を始める事になりそうだ。最終的な量産型のスペックを送ってもらい、早々に搬送業者と交渉をお膳立てして貰う事にした。


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