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V-168 ナイトの候補生


 その日の夕食時に国王達が連れて来た3人は、エミーと同じ年頃に見える。ということは、あの時国王が俺に紹介した王女達の2人なんだろうか?

 青年は俺とそれ程違わないように見える。少なくともベラスコよりは年上に思えるな。


 「右から、ヒズラディ、サハネイ。それにバンターだ。よろしく頼むぞ」

 「確かにお預かりします。ですが、高緯度地方の採掘を成功させた騎士団はまだおりません。国王に戻せない事態もありえると思いますが、それで良いのでしょうか?」


 「無論じゃ。その覚悟は持っておる。だが、この者達は騎士ではない。それでも活躍できるだろうか?」

 「ナイトに搭乗していただきます。獣機の操縦が出来ればそれ程違和感があるとは思えません」


 「あれか! ならば十分に使ってくれ。もし、万が一の時あらば、王族らしい最後であったと報告してくれれば良い」

 

 そうは言っても気を使わねばなるまい。でも言葉質は取ったから、責任は回避できそうだな。

 ジッと3人の新規参加者を見つめる。

 2人の王女はそれなりに美人だけど、ヴィオラ騎士団は美人揃いだからな。ちょっと気の毒になる。バンターは親父殿の訓練をずっと受けていたのだろう。筋肉質の美男子だ。さぞや女の子達が騒ぎ出すに違いない。

 腕時計形の多機能端末を使ってレイドラを呼び出すと、直ぐに来るように伝えた。


 「現在、ヴィオラ騎士団は休暇中だ。来春には高緯度地方に偵察を行なう事になるだろう。それまでにナイトを乗りこなす事が出来るようにしてほしい。まあ、それは俺達の領土に帰ってからだ。それまではこの地でのんびり出来るぞ」

 「ナイトは映像で見ただけですが、ヴィオラ騎士団領には既に何機か用意されているのですか?」


 「現在の生産数は6機だ。王国用のナイトを平行製作しているから、製作に時間が掛かっている。騎士団用と王国用の違いは装飾が大きく違うと思えば良い。実戦用とパレード用の違いかな」

 「それ程、異なるのか?」

 

 国王がおもしろそうな顔をして聞いてきた。

 そういえば、まだ王国に納入するナイトを見せていなかったな。

 腕時計型多機能端末を使って仮想スクリーンをテーブルの上に展開する。

 既に食事は終って、ワインを飲んでいたから丁度良い。


 「これが、王国用です」


 スクリーンに映し出されたナイトは、全体が銀色だ。

 縦長の盾を左手に持ち、その盾には王国の紋章が描かれている。

 右手には長い槍のように見える40mm爆轟滑腔砲を持ち、上半身と馬体の前面にはプレートアーマーのようなヨロイを着せている。顔はあるのだがヘルメットで分からないな。馬体にも軽甲冑を着せてその背中に真紅の布が掛けられている。当然王国紋章が布の左右、馬の胴にくるように描かれており、鞍に見える部分には短砲身の55mm連装砲が取り付けられている。

 

 「これか! 予想以上だ。小隊規模で欲しいぞ」

 「あまり、リオ殿にムチャを言ってもダメでしょう。パテントと特別な部品を購入して王都で作らせれば良いでしょう」

 

 「そうだな。たぶん各国の王族もそう望むだろう。リオ、その辺りを検討してくれぬか?」

 「製作はカテリナ博士のラボで行なっていますから、それも製作がはかどらない理由でしょう。カテリナ博士と相談してみます」


 「で、戦闘用はどうなるんだ?」

 「あまり、お見せしたくはないんですが、値段が付けられあせんので他に売る事は出来ませんよ」


 そう念を押して次ぎの画像を映し出した。

 王国用は銀色だが、戦闘用は黒く見える。ヨロイ部分を全て重ゲルナマル鋼だ。盾を持たずに短砲身の55mm砲を両手で持っている。大きく異なるのは鞍状の砲等から徐半身の左右に突き出した砲身だ。50mm爆轟カートリッジを使うAPDS弾は中型巨獣なら1発で仕留められるだろう。


 「威圧感が半端じゃないな。さすがは戦闘用だ。だが、高緯度地方に行かぬならば、王国用でも十分対処出来るのではないか?」

 「機動は戦機を凌ぎます。ですが……」


 「戦機あっての騎士団でしたわね」


 獣機のみが実用化されていた時代が長かったせいもあるのだろう。

 戦機が騎士団のステータスと言う考えはまだまだ続くに違いない。だが、騎士の戦機を動かせる年齢に制限がある以上、緩やかに変わっていくんじゃないかな。それでも、まだまだ大陸には戦機が眠っている。それが掘り尽された時に大きく変化が起きるんだろうな。


 俺達のテーブルにレイドラがやってきた。

 レイドラに3人の居住場所への案内と騎士団内の取り決め事の説明を依頼する。

 直ぐに3人を連れて出て行ったから、あらかじめ準備は整っていたようだ。

 タバコに火を点けながらそんな彼らを見送る。

 国王達に新にワインをトリスタンさんが注ぐと最後に俺のカップにも注いでくれた。


 「バンターは騎士団を作りたがっている。その辺りを教えておいてくれるとありがたいのだが」

 「良いのですか? ギルドの仕事もあるんでしょうに?」


 「あっちは長男がいる。それにリオの話を聞いているとな。俺も若ければと思うぞ」

 「確かに、だが、ワシの義理の息子でもある。たまには王宮に遊びに来てくれても良いと思うのだがな」


 グチっぽくなってきたぞ。

 ここで何か言おうものなら、何倍にもなって戻ってくるのは俺にだって分かる。

 黙って聞くしか無さそうだ。


 「まあ、それぐらいでよろしいのでは? 離宮には何度も足を運んでくれますし。リオ殿が儀礼で彩られた王宮を嫌うのは理解できます」

 「俺も、似たようなものだ。国王と会うのは離宮が多いな」


 「ワシだって、王宮にいたいわけではないのだがそうも行かぬ。たまには遊びに来い。離宮の庭を見ながら酒を酌むのも良いものだ」

 「それ位なら、お邪魔させて頂きます」


 後はたわいも無い話だ。少し気になったのは、中継点の建設が予想以上に早い事だ。

 ローザ達との別れは意外と早く訪れそうだな。

                  ・

                  ・

                  ・


 「まあ、どうにかなるだろう」

 「お気楽ね。でも、そうなると……」


 他の国王達が動き出しそうだな。それはウエリントンの国王に任せておこう。新しい中継点で活躍するのも良いかもしれない。

 

 「そうなると、ローザとドロシーが分かれなくちゃならないのよね」

 「寂しいでしょうけど、ローザなら納得してくれるわ。問題はドロシーの方になりそうよ。ローザにべったりだから」


 しょうがないわね。カテリナさんの顔に書いてあるぞ。

 だけど、9割方カテリナさんのしわざなんだから、何とかしてほしいな。でないとカンザスが動かなくなりそうだ。

 明日からは残りの休暇を楽しむ事にしよう。

 確か、フレイヤ達は真珠を狙って、アレクとベラスコは魚を追い掛けているんだよな。

 そういえば、ローザ達は何をしてるんだろう?


 「で、明日はどうするの?」

 「そうだな。ところでローザ達は?」


 「そういえば、しばらく見てないわね」

 

 また探検にでも出掛けたのかな?

 皆も同じ事を考えていたんだろう。笑みを浮かべてワインを飲んでいる。

 そんな所にドカドカと足音を立てて2人がやってきた。

 あの探検隊の衣装を着て、ローザがエアガンのライフルを背負ってるし、ドロシーは虫取り網を持っている。

 また、何か見つけたんだろうか?

 だが、2人の表情は暗いな……。


 「トカゲもいないし、新たな獲物もいないのじゃ!」

 

 そんなローザの訴えにドロシーもうんうんと頷いている。

 要するに退屈を凌げる何かを考えろって事か?

 

 「それじゃあ、明日はベラスコ達と魚を取るか? 入り江でダイビングしてるようだから、運が良ければ真珠が手に入るぞ!」

 「そうじゃのう。この服はこの場所では暑いし……。明日は我等も一緒じゃ!」


 「新しい仲間も誘ってくれ。朝食後に出掛けよう!」


 俺の提案を聞いて嬉しそうに、部屋を飛び出して行ったぞ。

 

 「明日は入り江が賑やかになるわね」

 「まあ、休暇ですから良いんじゃないですか。皆で楽しむのが休暇だと思いますよ」


 カテリナさんの言葉にそう答えたんだけど、アレクの事を思い出した。

 釣りを楽しんでるんだよな。皆でワイワイやってたら釣れなくなるかもしれないが、それ位は我慢して貰おう。あまり釣れない時は一緒に遊べば良い筈だ。


 翌日、朝食時に現れたのは水着に着替えた連中だった。サーフパンツを俺もはいてるけど、やはり目のやり場に困るよな。

 朝食を終えると、ぞろぞろとカンザスから入り江を目指して歩いて行く。

 

 途中で、ベラスコやアレクと合流して入り江の岩礁地帯に着いたところで、運んで来たパラソルを広げ、シートを広げる。

 

 さて、何を始めるかな? と皆を眺めると……。

 アレクは釣竿の準備を始めた。サンドラ達も竿を担いでるけど、ビキニに釣竿は似合わないな。その上、麦藁帽子を頭に載せてるぞ。

 フレイヤ達はマスクとフィンを付けてバールと網カゴを持ってぞろぞろと海に入って行く。

 残ったのは……。水中銃と銛それに虫取り網を持った連中だ。

 ドロシーから虫取り網を取り上げて、パラソルの傍にぶすりと刺しておく。

 残念そうにドロシーが虫取り網を見てるけど、海中では振り回せないぞ。


 「目標は今夜のバーベキューの食材だ。アレク達に負けるなよ!」

 「「「オゥ!!」」」


 俺の檄に皆が答えてくれる。

 さて、ベラスコから水中銃を受け取ると、俺もマスクとフィンを身に付けて皆と一緒に海に入って行った。


 水中銃の射程は3mほどだ。発射する銛にワイヤーが付いているから、遠くに飛ばない。大勢いるから少しは安心出来るな。

 大きな魚を2匹獲ったところで、岸辺に向かう。いつの間にか、お妃様達がpら反るの下でのんびりと冷たい飲み物を飲んでいるぞ。

 岸辺まで一緒に来たらしいネコ族の侍女が魚を取りに来てくれた。

 渡したら、走って行ってパラソルの後ろに何時の間に運んで来た大型クーラーに放り込んでいる。

 

 「随分楽しそうですね」

 「まあ、何とか。国王達は戻ったんですか?」


 「色々と忙しい身であることは確かよ。リオ殿もそうならないように気を付けた方がいいわ」


 真摯な忠告として受け取っておこう。確かに騎士時代に比べて野暮用が多くなった気がする。

 今日はおとなしくカテリナさんも一緒にいるところが、明日の天気の心配の種だ。


 渡された飲み物を受け取りながら、防水ケースを取り出してタバコに火を点ける。

 のんびり出来るな。見慣れない連中も少しいるのは一般の観光客なんだろうか。

 遠くにカタマランのヨットが見える。たぶんあれに乗ってやってきたんだろう。来客は制限してるらしいから、これ以上人が増える事は無いだろう。とは言っても、砂浜もあるから、そっちにもかなり人が出ているかも知れないな。


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