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V-150 独立


 ヴィオラ騎士団の休暇に合わせて、俺とカテリナさん、それにエミー姉妹とドロシーはウエリントン王宮の第2離宮に向かった。他の連中はドリナムランドに直行している。なんでも、新しいアトラクションが出来たらしいので早速出かけたようだが、そもそもあの遊園地を完全制覇するには10日は掛かると言われてるくらいだから、前に行ってなかったアトラクションも楽しむつもりだな。

 

 俺には第2離宮の静かな庭園を見ながらのんびりコーヒーを飲んでるほうが良いんだけど、ローザが嫌がるだろうな……。


 その第2離宮の応接室で、俺達は10人程の来訪者を前にワインを傾けている。

 3カ国の国王と軍の指揮官それに王妃達だ。

 良くもこんなに集まったものだと感心してしまう。王族って暇なんじゃないかな?


 「カテリナ博士が是非とも見せたいものがあるとのヒルダの言葉だ。他の王族としても見たいに違いない。それで、何を?」


 その言葉はカテリナさんに掛けて欲しいものだが、国王は俺を見詰めてそう言った。俺が絡んでいると見抜いてるのかな?


 「3つ持って来ました。簡単に2つを片付けて3つ目を判断願います」


 例の中継点の話を始める。


 「1つ目はコンテナターミナルとして、荷役に特化した中継点です。3つの巨大な桟橋から構成します。防壁は作らず、機動艦隊を防衛任務に付かせます。余分な建築物を作りませんから、コンテナの取扱量に応じて桟橋を増やしていくことが可能です。

 2つ目はコンテナターミナルの西方2、3千km地点に作る中継点になります。1辺を2km程の盛土の上に3本の桟橋を作ります。当然巨獣の来襲も懸念されるので、角に塔を建て、88mm連装砲の砲塔を設置します。新型獣機とゼロを中継点に常駐させ、周辺500km程の範囲を機動艦隊で哨戒すれば中継点の守りは鉄壁でしょう。

 更に、この中継点に各国の戦姫を常駐させれば、騎士団による鉱石採掘はウエリントン王国の西方1万km程度に進出が可能です」


 端末を使って仮想スクリーンを展開したプレゼンテーションを、そう言いながら終了した。

 3カ国の国王達がジッと画像を見ていたが、俺がのんびりとタバコを吸うのを見て、互いの顔を見合わせている。


 「中々でしょう? ヴィオラ騎士団のカンザスと、機動艦隊それに3カ国の戦姫を有効に使ってるでしょう」

 「それは分かる。分かるのだが……。コンテナを作った目的がこのような形で実現できるのだと思うとな。直ぐには納得できんのだ。だが、戦姫3機があればかなりの戦力となる。確かに出来るであろうな」


 「我等の王国も機動艦隊を作る事は予想済みでしたか……。ウエリントンには先を越されましたが、来年には完成しますぞ。その3つの艦隊を使って中継点を守りながら訓練を積ませるのは賛成出来ます」

 「一番実戦経験を持つ部隊になるでしょうな。これは軍としても歓迎するところです」


 「もっと大事なことがある。リオ公爵はこれを我々の利権として提供してくれると言っているのだぞ。当然ロイヤリティーは支払う事になろうが、投資先としては最適に思える。御用商人に利権の一部を与えれば彼らの資金も建設に使えるだろう。建設資金など直ぐに回収できそうだ」


 「それで、いいの?」


 ヒルダさんが念を押すように聞いて来た。


 「はい。問題ありません。俺達は自分達の中継点に手一杯です。他の騎士団に頼もうとしても少しリスクがありすぎます。軍備の一部を回せる王族ならこの計画が可能です」


 「全くあきれ返る話だ。だが、このロイヤリティ決して安くはない筈だ」

 「ヴィオラ騎士団領の独立権。3カ国からの独立が条件です!」


 俺の言葉に半ばあきれ返ってるな。まあ、そんな要求をかつて言った者はいない筈だ。


 「ここには丁度3カ国の国王がいる。ロイヤリティとは言えぬと我は思うが、1つだけ教えて欲しい。何故に独立をするのだ?」

 「宇宙への進出です。その頚木は3カ国からの独立で外れます」

 

 今度こそ俺達以外が驚きで声も出ない様だ。

 だが、大きな溜息を1つつくと、ヒルダさんに書状をしたためさせる。


 「あまりにも軽すぎる。実質は今まで通りの付き合いになるのだから、あくまで名目が目的だと思う。島を1つやろう。リオの領地は休養には適さぬ。保養地として利用するがいい」

 「ならば、我等はそこに保養所と高速艇の発着場それに、高速艇を1つ進呈しよう。それ位容易いものだ」


 王達の言葉にお妃様達も頷いている。サイフはお妃様達が握ってるようだから、ここはありがたく貰っておこう。


 「ありがとうございます。最後に、少し変わった獣機を作りましたので、皆さんにお見せします」


 中継点でアレクの操るケンタウルスのデモが始まると、国王に随行してきた軍の指揮官達が食入るように見ている。

 厚さ200mmの標準装甲板を突撃状態で滑腔砲で射抜くと、溜息が聞こえてきた。


 10分ほどのデモが終っても誰も口を開こうとしない。やはり、この獣機は変わりすぎてたかな?


 「カテリナ博士、あの獣機は戦機を超えていないか?」

 「腕力以外は全て戦機を超えているわ。それに美しいわよね。いつかは騎士団の戦機が使えなくなるわ。その時に騎士団の持つ護衛機はこの機体になるんじゃないかと思ってるわ」


 戦機は発掘されているものが全て。いつかは全て掘り尽くされるだろう。それに毎年何機かは巨獣に破壊されているのだ。騎士団の喜びと悲しみがそこで繰り広げられている。


 「これは獣機なのか?」

 「獣機よ。少し改造はしているけど基本技術は今までの科学技術の応用みたいなものね」


 「もし、これを10機作ってくれと頼んだら、費用と納期はどれ程になるのだ?」

 「手持ちの材料で作ったから、10億は掛かっていない筈よ。でも、新に作るなら材料や部品も買わないといけないから……。ドロシー、いくらになるかな?」


 自分で考えるのをやめたようだ。そんな話を振られたドロシーが一生懸命考えてるけど、自律電脳なんだよな? なんか小さい子供がお使いのお釣を計算してるように考え込んでるぞ。

 そんなドロシーを微笑みながら御后様達が見ている。


 「えぇ~とね。16億3千Lで出来るよ。利益は含んでいない。それと、今の体制で作ると年間の生産数は20機程度だけど……他の製作が出来なくなるよ」

 「1機、20億だそう。10機を揃えてくれ!」


 「待て待て! これを一国で持つのは問題だ。供給量は各国同一数でお願いしたい」

 「ワシもそう思う。戦機は厳しいが、この獣機は優雅さがある。王国の守りとして、広く国民にも見せる機会を与えようと思う」


 アレク達も気に入っていたからな。戦鬼とは違って優美さがあると言っていた。性能については文句はないそうだ。

 確かに、ケンタウルスが隊列を組んで行進したら、ちょっとした見物になるに違いない。だが、ケンタウルスは攻撃型の獣機だぞ。ちょっともったいない気がするな。


 「元々は高緯度地方で鉱石探索をする上での兵器です。低緯度地方であれば、ここまで武装を強化する必要はないでしょう。その辺りを加味して王国軍用のケンタウルスを作りましょう。ですが、供給量は3カ国に一度に4機ずつ、各国に20機でよろしいですね」

 「5年ほど掛かるという事か……。まあ、それは仕方あるまい。ゼロもある。工房の人員が足りなければ斡旋するが?」

 

 「出来れば各国とも10人程出していただけるとありがたいですわ。それ以外に作らねばならないものも沢山ありますし……」

 

 カテリナさんの言葉に国王達が頷いているから、その内やってくるんだろうな。

 工場を大きくしておいて良かったぞ。


 そんな話が終ると、今度は和やかな歓談が始まる。

 良く考えると、独立国となった場合の元首って俺になるのか?

 政治をどうするかなんて考えていなかったけど、これは代官にまる投げしよう。マリアン達と相談して良い国を作ってもらえばいい。

 

 「それにしても、ローザの妹はローザに似ているな。ワシも初めて見るぞ」

 「この間、出来た妹じゃ。我よりも頭は良いのじゃが、少し人見知りをするところがあってのう。いつも我と一緒なのじゃ」

 

 ローザが嬉しそうに報告している。

 確かに隣同士に坐ってると本当の姉妹のようだ。

 

 「あとで、ドロシーちゃんにお土産があるわ。私の事も母様で良いわよ」

 「これこれ、1人で先走りは良くないぞ。我も父様でかまわぬぞ」


 完全に親バカ状態だ。確かにドロシーはかわいいけど、自分の子供達も多いんだから一番小さい子をかわいがりすぎるのもどうかと思うぞ。

 

 「ところで、リオ殿はこれからどうするのだ? このまま行けば西に多くの騎士団が移動するだろう。鉱石採掘は競争になるぞ」

 「先ほどお話したように、俺達は高緯度地方を目指そうと思っています。ケンタウルス、正式名は『ナイト』ですが、そんな状況でのラウンドクルーザー防衛用です。新型獣機で歯が立たないような相手でもゼロとナイトのコンビで何とかしたいと思っています」


 戦機もあるが、どこまで役に立つかは判らない。50mm滑腔砲の反動はかなりのものだ。支えるには戦鬼でなければ無理なんじゃないかな。

 

 「単に西を目指すわけではないということか。高緯度地方の鉱脈は確かに未知ではあるからな。将来的には宇宙の小惑星を探索するつもりだな……」

 「小惑星帯の鉱石は魅力です。我々は一足先にそれを探索したいと思っています」


 3人の国王がジッと俺を見る。

 

 「リオ、何故我等が宇宙に上がれぬかを考えた事があるか?」

 「たぶん、戦で負けたのではないか……。そう考えています」

 

 「そうだ。遥か昔の事だ。我等の祖先がこの惑星に降り立って1千年後らしい。その原因も判っている。宇宙船の世代が違っていたのだ。その戦は戦機に獣機が挑むようなものだったらしい。

 それ以後、我等はこの惑星から離れないでいる。機動エレベーターも破壊されて、現在残っているのはマスドライバーによる鉱石船の運航だ。他の惑星からは反重力船がおりてくるが、その原理は、我等の知っているものでしかない。万が一、宇宙で運航管理局と敵対した場合は勝ち目は無いぞ!」


 植民地的な扱いになっているのだろうか?

 そうだとしたら、なんとかしてその扱いを正したいものだ。



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