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V-148 コンテナターミナル


 「そういえば今日はエミー達が見えませんね?」

 「もうすぐ、やって来ると思います。『この地で取れた果物をご馳走する』と言って温室に行ってしまいました」


 俺の言葉を聞いて3人のお妃様達が大きく目を開いた。

 この地で果物が取れる事に驚いているらしい。


 「やはり、カテリナ博士の……」

 「ウエリントンよ。地質学者の癖に学府の奥に引っ込んでいたから、連れて来たわ」


 そんなカテリナさんの言葉に、『まあ!』なんて言ってるから、それなりに知られた人らしい。

 だけど、俺達にはいまや無くてはならない人になっている。戦鬼だって見つけてくれたし、大きな温室だって作ってくれたからな。温室は今ではマリアン達に任せているけど、その利益の2割を貰っているらしい。あまり欲はない人のようだ。それに学校の先生までこなせる人だ。カテリナサンとは反対の部類にいるような気がするな。いくらなんでもカテリナさんに学校の先生は無理だろう。


 「こんなに取れたのじゃ!」


 そんな言葉とともに3人が入ってきた。

 俺達のテーブルの真中に果物の大皿を置くと、小皿をローザとドロシーが配り始める。カッティングはエミーがしている。

 目が見えずともナイフの使い方は覚えたのだろう。殆ど手元を見ずに皮を剥いている。


 「あら。ローザのお友達かしら? 初めましてローザのママよ」


 その挨拶はどうかと思うけど、ローザの年齢に見合ってはいるな。カテリナさんは噴出す寸前だ。下を向いて笑いを堪えている。


 「我の妹のドロシーじゃ。……ドロシー、こっちが我の母上じゃ。挨拶するが良い」


 「初めてお目にかかります。ローザ姉様の妹のドロシーです!」


 そう言って、ローザの後ろに隠れようとしたところを、ヒルダさんが素早い動きで捕まえてしまった。

 屈みこんでドロシーの視線にあわせると、にこにこしながら頭を撫でている。


 「そうなの? ローザに妹が出来たなんて、私もうっかりしてたわ。王都にもいらっしゃいな。父王様も喜ぶわよ」

 「腹違いの姉妹なの? 確かに良く似てるわね」


 2人の御后様もそんな事を言いながら頷いてるぞ。早く教えておかないとウエリントン王国の危機にならないか?


 ドロシーをそのまま抱えてヒルダさんが膝に乗せている。初めて見る人なら親子に思えなくも無いな。

 隣のお妃様達も「かわいいわね」なんて言いながら頭を撫でてるぞ。


 「ヒルダ、まるで親子に見えるわよ」

 「それで、本当なの?」


 本当ならばこのまま王都に連れて行くつもりなんだろうか?

 

 「そんなわけ無いじゃない。カンザスの電脳を形にしたの。でも人格があるからローザが姉になって指導してくれてるのよ」

 

 人間じゃないと聞いて、3人のお妃様達が改めてドロシーを眺めている。

 

 「でも、この子は人間に思えるわ!」

 「人間よ。少なくとも私達はそう思ってるわ。同じように暮らして喜怒哀楽を持つんだから変わりがないでしょう。この子はね、おもしろいという感情をこのあいだ覚えたのよ。これからも色々と覚えていくんでしょうね」


 「なら、私が王都で教えましょうか? 皆大きくなってしまいましたから……」

 「それは無理。ドロシーがいないとカンザスが動かないわ!」


 ガックリと肩を落としてドロシーを撫でている。 お持ち帰りをしたかったのかな?

 だけど、ローザが許さないと思うな。

 

 「次に王都に向かう時には、一緒に連れて行くのじゃ!」

 

 そんな慰めとも取れる言葉をローザが母親に言っているのも、微笑ましく思える。エミーと顔を見合あわせて俺達は頷いた。


 「絶対ですよ。父王も楽しみに待つと思います」

 

 ヒルダさんがローザに念を押して確認してる。

 エミーが剥いてくれた果物をフォークで刺しながら皆で頂く。

 ドロシーも、ヒルダさんの膝の上で食べているけど、問題ないのだろうか?


 「それで、次ぎの中継点の青写真は出来たのでしょうか?」

 「もう少し、待ってください。物流を考えてコンテナのみの中継点を考えているのですが、全体の形が中々で……」


 「先行してゼロを守備に付かせる事も考えてください。各国の王達も楽しみにしているようです」

 

 現在、ウエリントン王国の西に2つの中継点がある。その中継点を利用した騎士団の行動範囲はウエリントン王国よりも西に6、7千kmというところだろう。もう1つ中継点を南西に作れば西に1万kmは進出出来る。

 確かに王族が待ち望む筈だ。だが、そうなるともう1つの物流システムが課題となるな。200tバージを5台以上曳ける大型高速輸送艦が必要だ。中継点間を結ぶそれより小型の輸送艦と合わせれば、多品種の鉱石を迅速に大量に輸送できるぞ。

 

 待てよ、大規模なターミナル基地も作る必要があるんじゃないか?

 輸送艦が荷を積み変える専用桟橋とコンテナヤード、それを作らないとコンテナシステムの本来の便利さが失われてしまうな。


 「どうしたの?」

 「いや、ちょっと考え事を……。西に作る中継点ですが、2つ作る必要がありそうです」

 

 端末を立ち上げ、簡単にコンテナのネットワークシステムの説明を始めた。


 「問題は、騎士団が集める鉱石の種別が一種類出ないという事です。このため、集めたコンテナを選別して一時貯え、王都の工廟の要求に応じて迅速に運ばねばなりません……」


 俺達の中継点とテンペル騎士団の運用する中継点。その中間付近にコンテナターミナルを作る。そのターミナルの西に新たな中継点を作るのだ。


 「コンテナターミナルに鉱石が集中するのね。そこで同一種類のコンテナを要請に合わせて運ぶということ?」

 「そうです。荷を受け取るのではなく、荷を分配する拠点と言う感じになりますね」


 コンテナターミナルは3つの中継点の中間にある。ある意味防衛は容易になるはずだ。それ程防備も必要としないで済むんじゃないか。ゼロの廉価版を偵察機代わりに1分隊も置けば十分だろう。

 一番西の中継点にはローザ達を常駐させれば十分だ。現在哨戒航行中の小型機動部隊の母港にすれば周囲2千kmは対応出来るだろう。


 「ナイトの後ろにクイーンを置くようなものですね。3人の王族を辺境に送るのはと考える者もおりましたが、そこまで考えておられたのですね」

 

 とりあえず頷くとタバコに手を伸ばす。

 そんな俺を見てカテリナさんが微笑んでいた。見透かされたか?


 「そうなりますと、コンテナターミナルが先になりますね。後々を考えますと、騎士団に頼らずとも良いように思えるのですが……」

 「ですね。3王国の共同事業とすべきでしょう。安全性と大量の鉱石の商いが出来ますから各国の御用商人が協力を惜しまないと思いますが?」


 「私達はその間に中継点を工兵を使って造成出来ますわ。規模的にはターミナルよりも小さく出来るでしょうから、営業は先になりますね。でも、輸送は南の中継点をりようすれば可能ですわね」


 これは早めに案を纏めておいた方が良さそうだ。

 少なくとも概念は纏めておくべきだろう。工兵部隊は優秀だし、中継点の拡張工事をしている建築業者も俺の考えをきちんと形にしてくれるからな。


 「それにしても大きくなりましたね」

 「中継点を中心に50km四方です。何とか独立したいと考えていますが、まだまだお力をたのむことになりそうです」


 「地底湖を見つけたので、水を運ぶ事はなくなったとか? その上、このような園芸を軌道に乗せたのであれば、独立は難しくないでしょう。国王達反応が楽しみね」

 

 ヒルダさんは俺にそう告げると、カテリナさんを見る。その視線に笑顔を見せる事で何かを伝えたようだ。

 

 「最後の頚木が外れそうね」

 「早いかもよ。10年は必要ないわ」


 夢を話せる相手がいることは良いものだな。

 ただ1つの夢を追い掛けている。そんな友人が羨ましいのかも知れないな。

 だが、10年で出来るのか?

 宇宙船となると陸上を走るラウンドクルーザーとはだいぶ構造が違うような気がするんだけどね。


 女性達のお喋りが始まったところで、俺は失礼する事にした。

 カンザスに戻って、ライムさんの入れてくれたコーヒーを飲む。

 さて、新たな中継点を纏めなくちゃならないな。

 タバコに火を点けると、ゆっくりと煙りを吐きだした。


 「あら? リオ1人なの」


 フレイヤがリビングに入ってきた。俺のところに駆け寄ると首に手を回す。

 長い口付けが終ったところでジャグジーに向かった。


 「……そうなんだ。隠匿工場はそれが目的なのね」

 「まあ、おもしろそうな話だと思うよ。俺も行ってみたいと思ってる」


 ベッドに寝転びながらそんな話を始めた。

 何れ分かるなら早い内に関係する者達に教えておかねばなるまい。

 それに、そこでどんな暮らしが始まるかはまるで分からない。この中継点を維持するのも生活を維持する為に必要な事だろう。さらにまだ探査の手が入らない高緯度地方の鉱石採掘は何が出てくるか分からないからな。そっちもやりがいがありそうだと思う。


 「選択肢が沢山あるわね。でも、私はリオと一緒よ」

 「何があるか分からないぞ?」


 「兄もいるし、次男は兄よりもたくましそうだからね。ソフィーだって事務所でちゃんと働いてるわ。私は大丈夫よ」

 

 ひょっとして全員付いて来るのかな?

 数人を想定してたけど、かなり大型の宇宙船になりそうだ。


 一眠りしたところで、リビングのソファーで中継点の考えを纏め始める。

 フレイヤは紅茶のカップを片手に俺の描き出す仮想スクリーンの中継点を眺めている。


 先ずはターミナルだな。

 ターミナルの特徴は、コンテナの保管場所と荷卸の容易性だ。たぶん騎士団が直接利用することは少ないだろう。となると、大きな休養施設は必要ないはずだ。

 桟橋をコンテナ保管庫と一体となった桟橋を3つ作ってコンテナの集約に合わせて増築すればいいか。

 俺達の中継点の桟橋でさえ横幅は100mあるのだ。それを2倍にして左右にガントリークレーンを設置する。桟橋内のコンテナヤードからの運び出しは自動化できそうだな。桟橋の長さを1km程にして3つの大型エレベータを使えば迅速にコンテナの出し入れが出来そうだ。

 防衛は……、小規模の機動艦隊を使えば良い。拠点防衛だからある意味艦隊員の休息にもなる。3カ国の機動艦隊をコンテナターミナルと新たな中継点それに休養とサイクルさせれば問題も生じないに違いない。


 問題はその西に作る中継点だ。

 緊急避難をする騎士団も出てきそうだ。ある程度防衛を考えた中継点にしないといけないだろうな。

 



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