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V-140 宝探しツアー


 蒼い海原は広大な珊瑚礁らしい。

 喫水の浅い双胴船タクマランに俺達はいるんだけど、戦姫の3人組みと護衛の騎士以外にライムさん達まで参加してるぞ。ひょっとして全員分のツアー料金を俺が出しているのか? ドロシーめ、拡大解釈したな。次ぎはちゃんとその辺りを教えて置かねばなるまい。


 俺と、カテリナさんが到着したのはツアー開始後の2日目の午後だったが、夕食時にそれぞれの獲物を見せてくれた。

 全員が1個以上見つけたようだ。トップはローザの2個だが、全員血眼になって探してたんじゃないか?

 確かに、宝探しツアーと言うだけのことはある。普段の人間性なんてお宝の前には脆くも崩れさるのだろう。

 そう言う意味では、人間の本性をさらけ出すというか、獲り戻すツアーと言う訳だ。


 「明日は私も頑張らなくちゃ!」


 そんな事を言いながら、フレイヤの獲物である黒真珠を眺めている。

 

 夕食が終わり、ラウンジの片隅にあるボックスシートで関係者に王都での成果を報告する。

 数組のパーティがいるけど、席同士は離れているからそんな話をしても問題は無いだろう。

 優雅にカクテルを飲みながらだから、やはり休暇に来てるんだなと張り詰めた気持ちも和らぐ感じだ。


 「国王が戦艦の建造ではなくて、大型母艦の建造に食指を動かしたのはさすがだわ」

 「やはり、西への影響力という事でしょうね。他国もゼロの機動は引かれていますけど、軍艦の補完を成すものと見ているようです。俺達の作っている小型母艦に士官を派遣する事も視野に入れているようです」


 「そうすると、交渉は上手く行ったという事かしら?」

 「一応ですね。交渉は向こうが上手です」


 それでも工兵隊の派遣は何とかして貰えそうだ。優秀な連中だろうから、西の開発よりも先んじるんじゃないかな。

 一応の目的も達成出来たんだし、ここは成功だと思い込もう。


 船室はツインだった。ちょっとしたホテルのような感じだな。風呂は無いけどシャワーがある。

 エミーを連れてシャワーを浴びる。すっかり日焼けして水着の後が残っているぞ。明日は俺も頑張らねばなるまい。


 次ぎの日。

 朝食を終えて一服していると、30分後に探索を始めるとの艦内アナウンスがあった。

 という事だが、なにを準備すれば良いんだ?


 「リオ様、これを着けて潜れば大丈夫ですよ」

 

 部屋に入ってサーフパンツにはき変えてたところに小さな網袋を持ったエミーが現れた。

 中に入っているのは……。メガネにシュノーケルそれとマリンブーツに小さな足ヒレだ。綿の手袋も入っているぞ。それと、このバールみたいなものは、貝を剥がす道具らしい。獲物はこの網袋に入れるんだな。

 バッグから、ベレッドじいさんに作ってもらった耐塩性金属のナイフをプラスチックケースごと、足に取付ける。小さいけれどちょっと安心感があるな。

 後は、防水袋にタバコとライター、それにコインホルダーを入れてウエイト用のベルトに取り付けておく。これで準備完了だな。

 

 エミーの後を付いて甲板に出ると、沢山人が集まっている。

 目が輝いているのは気のせいだろうか? 俺は少し後ろに下がって灰皿のあるテーブルに腰を下ろすと早速タバコに火を点けた。


 「あら、真っ先に潜るかと思ってたんだけど?」

 

 そう言って、カテリナさんが俺のタバコに手を伸ばす。カテリナさんは紐ビキニだ。ウエイトベルトには防水ケースがないみたいだから仕方が無いな。

 ライターで火を点けてあげると、カテリナさんがテーブルを指差した。


 これが狙う獲物と言うわけだな。ハマグリみたいな貝ではなくて、ちょっと岩場に張付くと分らないぞ。砂地にもいるようだが、両方とも保護色だな。

 バールみたいな道具は、岩場から引き剥がす時に使うものらしい。


 「私達は漁師じゃないからシュノーケルまでになるわ。結構キツイらしいわよ」

 「ところで、皆泳げるんですか?」


 「それすら忘れてるかも知れないわ。一応、船員がマストの上と船上、それに小船を出しているから救助体制は万全よ。あのイカダに上がれば冷たいジュースも飲めるって言ってたわよ」


 まぁ、サービスの一環だろうな。どれ、そろそろ俺も潜ってみるか……。

 船べりまで行くと、皆が頑張っているのが見える。水深5m程の浅瀬だ。これなら素もぐりで十分だろう。

 軽く体を動かして、一気に海に飛び込んだ。

 そのまま、海中を進んで船から遠ざかる。水中は結構起伏が多い。なるほど、これなら沢山いるに違いない。進んでいるだけで数箇所の真珠貝を見つける事が出来た。

 50m程進んだ所で一旦海上に出て息継ぎをする。殆ど波がないから遠くまで良く見通せた。

 息を整えて、一気に潜る。岩陰に潜んだ真珠貝をバールで引き剥がして、袋に詰める。3個取ったところで海上に戻り、また海中での作業を再開する。

 

 1時間も経たぬ内に網が一杯になったのでイカダを目指して泳いでいく。

 イカダにある海中からの階段を上ると、ローザ達が休憩していた。俺の網を見て目を丸くしている。


 「兄様、どこでそんなに獲って来たのじゃ!」

 「少し離れたところさ。この辺りは皆がいるから邪魔になるだろうと思ってね。ほら、皆で分けると良い」


 網を広げて、ローザ達の網に入れてあげる。必ずしも入っているとは限らないからね。

 半分以下になった網を受け取って、ついでにジュースも受け取った。やはり、甘い飲み物は最高だな。

 軽くなった網を持って海に入ろうとした時、船員がもう1つの網を渡してくれた。

網1つだと思っていたけど、取れるだけ取らしてくれるらしい。

 再度、海に潜ってひたすら真珠貝を取る。昼前に船に戻った時は、大きく膨らんだ2つの網を下げていた。

 

 甲板でターフの日陰に入って軽い食事を取る。

 皆、無言で船員の作業を見ている。真珠貝の殻を開くには熟練した技術がいるようだ。

 俺達の取ってきた貝をなるべく傷つけないで真珠を見つけて、貝の本体は海に放流する。それなら資源が枯渇する事はない。数年すれば、また真珠が作られるのだろう。

 取り出された真珠は小さな黒い小皿に入れられる。真珠があった事が全員に分かるから色の着いた皿を用意しているのだろう。皿は白と黒の2つが用意されている。

 中々白い皿には真珠が乗せられなかった。

 だいたい、網1つの真珠貝に1つの真珠と言うところだ。全くゼロというのは無い様だな。


 ローザの網がタライのような器に移され台の上で貝が開かれる。ローザがその作業を食入るように見ているのもおもしろいな。

 食事が終わり俺は皆でテーブルを囲んでコーヒーを飲みながらそんな作業を見守っている。


 「終了だ。真珠は2個!」

 

 その声にローザが嬉しそうな顔をして真珠を受け取りに出掛けた。

 最後が俺の番だったけど、網2つ分だけあって、獲れた真珠は5個。その内、1つは今日初めての黒真珠だった。ちょっとした嫉妬の目に晒されたけど、これは運がいいからだぞ!


 そんな日々が2日過ぎて、明日は王都に帰る予定だ。俺の手に入れた真珠は都合14個。その内、4個が黒真珠というとんでもない幸運に恵まれてしまった。

 一番少なかったレイムさんでも6個だったから、皆満足したんじゃないかな。それでも1回のツアーで黒真珠が4個は初めてらしく、黒真珠を持った俺を船員がカメラに収めていた。次ぎのツアー募集にでも使うんじゃないかな。

 

 「それで、その黒真珠をどうするの?」

 「これかい? ライズとマリアンにあげようと思ってる。ずっと休みを上げてなかったからせめてもの償いだ。イヤリングに丁度良いんじゃないかな。残ったのは皆で分けて良いよ」


 フレイヤの質問にそう答えたら、納得してくれた。変に渡したら後が怖いからな。

 どうやら、皆も中継点の仲間に分けてあげようとしていたらしい。

 でも、一番良いのは自分用に考えてるんだからね。まあ、それは仕方が無いだろう。

 

 最後の夜に、ラウンジで皆とカクテルを飲んで過ごす。

 ローザ達もジュースで参加している。

 良い具合に日に焼けているから、宮殿に帰ったら別人に思われないかな?

 でも、本来は真っ黒に日焼けして遊んでいる年頃なのだ。母親達は少し安心するんじゃないかな。


 「カテリナさん……」

 「リオ君も気が着いたの?」

 

 俺とカテリナさんの話に皆が興味を示す。


 「何の話?」

 「そうね。リオ君説明できる?」


 俺に回ってきた。そんな訳で、カクテルを飲みながら話を始めた。

 それは、ちょっとした違和感。何時もの違和感と違って、危険性はまるでない。だが、違和感がある事は間違いない。

 なぜ、ここに浅瀬があるのだという、単純で説明が出来ないものだ。


 「これが全体の画像よ。海図を見るとこう変るわ。でもね、科学衛星で更に詳細な起伏図を作ると、このように変化するの。どう? どこかで見た事が無くて」

 「これって、この間のメテオインパクトで出来たクレーターみたいですけど……」


 「ピンポン、ピンポン! 正解よ。何かの落下した後のようね。でも、リオ君の違和感は少し違う。たぶんクレーターであればリオ君は違和感を持たなかった筈だわ。『ああ、クレーターがある』ぐらいなところね。でも、そうではなくて何故ここに浅瀬があるというところに着目すると、これは単純なクレーターではない事になるわ。アカデミーで調べさせようと思ってるけど、場合によってはリオ君を借りるわよ」


 嬉しそうに話しているから、しばらくは俺達が犠牲になることは無いだろう。

 それに俺も興味がある。これは絶対に隕石の落下ではない。もっと別な何かだ。

 ならば、それは何なんだ?

 まさかとは思うが、考えられるのは過去の遺物だ。場合によってはこの世界にかつてやってきた移民船の残骸なのかも知れない。

 カテリナさんは、それを知って探索しようと考えているのか?

 

 長い休暇が終わり、中継点に戻る高速艇に乗っても、考える事は同じだった。

 ひょっとして、カテリナさんの夢って宇宙への進出ってことか?

 この世界の住人は宇宙に上がる事はない。宇宙には宇宙を版図とする宇宙船の運航管理局が全てを取り仕切っている。王国には宇宙船は無いが宇宙船を使って大量の鉱物資源を他の惑星の産物と交換貿易を行なっている。

 ある意味、中間搾取が行なわれているのだが、確実に荷は届いているようだ。

 このシステムを是正しようと言うのだろうか?



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